2011 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児(者)の自律神経系活動からみた適切な日常生活ケアの検討
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23500829
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Research Institution | Hiroshima Cosmopolitan University |
Principal Investigator |
今村 美幸 広島都市学園大学, 健康科学部, 准教授 (60461323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ストレス / 重症心身障害児(者) / 日常生活ケア |
Research Abstract |
本研究は,意思表示の困難な重症心身障害児(者)(以下重症児(者)という)がケアを受ける際の快・不快反応や,介入の違いによる快・不快反応を,生理的指標(自律神経系活動)を通して客観的に評価し,重症児(者)にとって不快反応の少ないケア・すなわちストレス負荷の少ないケアの方法を探索し検証することを目的とする。そのために次の研究を行う。(1)日常生活ケアの種類による重症児(者)の自律神経系活動の違いを評価する。(2)環境の変化(場所・介助者)や介入の違いによる重症児(者)の自律神経系活動を評価する。(3)二つの結果をもとに適切な日常生活ケアを提案し,その効果を評価する。用いる整理指標は,自律神経系指標(心電図)と,内分泌系指標(唾液アミラーゼ)である。心電図には4chの無拘束型筋電測定装置を用い,胸部誘導により測定する。唾液アミラーゼは,アミラーゼチップを用いて唾液を採取し酵素分析装置唾液アミラーゼモニターで測定する。行動観察のためにビデオ撮影を行う。心電図は解析ソフト(BIOMAS)を使用して周波数解析を行い,交感神経系指標(LF/HF)と副交感神経系指標(HF)の推移を検討する。 平成23年度は,日常生活ケア時のおける重症児(者)の快・不快を評価を目的とする研究から開始した。重症児施設へ入所中の重症児(者)5名(いずれも大島分類1)を対象に口腔ケア・洗面場面と更衣・体位変換場面での測定を行った。測定時間は日内変動を考慮して一定にし,施設の生活時間に合わせて7時30分から行った。 一人の重症児(者)への測定はケアごとに複数回行っているが,筋緊張亢進によって分析不可能となるデータが多いことや,対象者の体調不良による測定中止などのために,現在,分析対象者は3人に減少している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担当科目の増加や施設実習の開始,委員会活動における委員長役割などが加わり業務が多忙となった。そのため,研究活動が遅れ,測定開始が1月からになってしまったことが原因である。 研究開始後も,研究開始までに健康状態悪化のために中止となった者,研究途中で健康状態悪化により中止した者,筋緊張亢進によりデータとして不適とみなした者などがあり,対象者数は予定より少なくなった。さらに,一人の対象者に対してケアごとに複数回測定を行っているが,筋緊張亢進等による分析不可能となるデータが多いことや,対象者の体調不良による測定中止などの要因により,分析対象となるデータが少ない。そのため,一人当たりの測定回数を増やす必要があり,現在も測定している。したがって,まだ分析・評価には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,データを周波数解析し,ビデオ撮影と合わせてケアの内容と自律神経系指標の推移との対応をみながら分析し検討する。そして,研究(2)環境の変化(場所・介助者)や介入の違いによる重症児(者)の自律神経系活動を評価するために,新人看護師による日常生活ケア時(口腔ケア・洗面,更衣・体位変換)における重症児(者)の自律神経系指標(心電図)と,内分泌系指標(唾液アミラーゼ)を測定する。他に,味覚刺激,嗅覚刺激,聴覚刺激に伴う反応についても検討する。 当初の計画では,環境の変化として部屋の移動を計画していた。しかし,対象者に装着している医療機器が多いため,部屋の移動は困難であると判断し,本研究では部屋の移動による環境変化は行わないよう計画を変更した。 研究を遂行する上で,対象者が少ないことが課題としてあげられる。今後は,他の重症児(者)の研究協力を得るために,家族に対して研究説明を行い,同意が得られるよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も測定時の補助として施設職員や学生を予定しており,その謝品や謝金が必要となる。また,研究を進めるうえでの資料収集および打ち合わせ,成果発表のための旅費も必要である。 測定に必要な唾液アミラーゼチップや酵素分析装置唾液アミラーゼモニター,心電図電極などの消耗品も購入する予定である。さらに,各刺激(嗅覚・味覚・聴覚)に使用する薬剤などの購入予定である。
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