2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500831
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Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
岩船 昌起 志學館大学, 人間関係学部, 准教授 (00299702)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 救急救命 / BLS環境 / BLSマップ / AED / 体力 / 健康地理学 / 霧島市 |
Research Abstract |
心停止等の重篤な傷病者の救命率や生存退院率を高めるためには,傷病者発生(卒倒)から5分以内で自動体外式除細動器(AED)による除細動が実行されることが望ましく,地域医療体制に速やかに連携できる「市民が協力し合える一次救命処置(BLS)の体制」の強化が必要である。わが国では高価なAEDを十二分な数だけ配備した施設や地域は極めて少なく,敷地内等で密にAEDが配置された例は稀であることから,1台のAEDを有効活用するためには,複雑に入り組んだ建物や敷地等の BLSを取り巻く環境(BLS環境)を認識し,かつ施設関係者や地域住民等が緊急時に連携をとれる体制が構築されるべきである。しかしながら,BLS環境の定量的評価に関する研究は進展の途上にあり,坂道,階段,道の曲がりや屈曲等の環境構成要素がBLS行動に及ぼす影響は明確に把握されていない。また,BLSの実施に限らず,地域住民の防災や安全等に対する行動・連携が環境に応じて十分にシミュレーションされているコミュニティーは少ない。 本研究の実施において,平成23年度には,まず,BLS環境を定量的に把握するため,AED運搬者の走力レベルやアクセス方法等に応じた走行実験を霧島市国分運動公園で行った。そして,これに関して,2011年10月に日本救急医学会総会で口頭発表形式で報告した。また,霧島市全域の「BLSマップ」の作成に先立つ,AED設置場所にかかわる調査を霧島市消防局と共同で実施した。・岩船昌起(2011):BLS環境の定量的評価に基づくAED運搬方法の検証‐K市K運動公園でのBLSマニュアルへの助言.日本救急医学会雑誌第39回日本救急医学会総会号 22-8.514p
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は,岩手県宮古市出身であり,東日本大震災発災後,エフォートを取られることとなった。自宅が全壊し,両親が仮設住宅に入居する等,私的にも時間を費やし,かつ日本地理学会で「東日本大震災被災地再建研究グループ」の世話人を行い,現地での共同研究のコーディネートなどを行った。しかしながら,研究助成を頂いている本研究に関しては,前年度までの蓄積や霧島市消防局の全面的な協力によって,概ね予定通りに実施できた。 研究助成を頂く3年間の初年度では,(1)AEDの運搬に関するBLS安全域等を解明するための走行実験と(2)「BLSマップ」の作成に関わる現地調査を同時並行で実施し,(3) BLSマップの作図作業を表現方法も含めて試験的に行う予定であった。 まず,(1)「走行実験」については,申請者がこれまで実施してきた研究方法(岩船,2008)を基本的に踏襲した実験を霧島市国分運動公園で実施し,その成果を,前述の通り,日本救急医学会総会で報告した。また(2)については,霧島市消防局の全面的な協力を得ながら,霧島市内に設置されておりかつ霧島市消防局が報告を受けているAEDの建物内での位置に関する空間情報についての調査を完了した。一方(3)については,霧島市ホームページ上で2011年4月から正式運用されている「霧島市AEDマップ」を基に検討を行っている。霧島市消防局とAEDの分布と設置位置に関する調査を実施し,新たな設置機関の情報を加える等の修正を適宜行いながら,AEDマップの更新を随時実施する。そして,BLSマップを利用する第三者の視点に立って一般市民が分かりやすい表現方法などの細部に関しても検討している。また,霧島市国分運動公園で行った走行実験の成果を,BLSマップの修正・調整に役立てたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして(3) BLSマップの作図作業を本格的に実施するとともに,引き続き(1)AEDの運搬に関するBLS安全域等を解明するための走行実験と(2)「BLSマップ」の作成に関わる現地調査を実施したい。 (1)走行実験については,多様なBLS環境構成要素を把握するために国分運動公園以外の場所での実施も考えたい。そして,前年度と同様に被験者の走力レベルやアクセス方法等に応じた実験を行い,被験者数を増やしていきたい。 また(2)BLSマップの作成に関わる現地調査では,霧島市内のAED設置地点でのBLS環境についての簡易的な補足調査を行う。 そして(3)BLSマップの作図作業では,(2)での現地調査の進展に応じて,ArcGISあるいはイラストレーターあるいはGoogleマップ等で入力を随時実施する。2011年に一般公開した「霧島市AEDマップ」に関する地域住民の評価に応じて,Web公開は既存のGoogleマップを用い,地域住民に配布する地区別マップの作製に重点を移すことも念頭に置いている。霧島市消防局とも調整しながら,これらの方向性を見極めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には,100,000円の研究助成を頂くこととなっている。このうち,50,000円については,鹿児島市から霧島市への車で移動にかかわるガソリン代やデータ処理のためのアルバイト代等で使用したい。また残りの50,000円については,学会で本研究の成果を発表する時の旅費に充てさせて頂きたい。 平成25年度の助成最終年度には,平成24年度まで得られた結果に基づき(3) BLSマップの作図作業を完成させるが,(1)AEDの運搬に関するBLS安全域等を解明するための走行実験と(2)「BLSマップ」の作成に関わる現地調査に関しても補完的に実施したい。 (3)BLSマップの作図作業では,Web公開のBLSマップの完成度を上げるだけでなく,地域住民に配布する地区別マップを作成する予定である。これは,霧島市消防局のホームページからダウンロードが可能なPDFファイルで公開する予定であり,データ整理等にかかわるアルバイト代50,000円程度を除いて,大きな出費は見込んでいない。一方,地域住民への啓発活動で必要な情報を整理したリーフレットも作成・公開には,印刷費として300,000円程を使用したい。また,(1)AEDの運搬に関するBLS安全域等を解明するための走行実験と(2)「BLSマップ」の作成に関わる現地調査に50,000円を見込んでいる。 そして,成果に関しての学会発表は,日本救急医学会,日本地理学会,日本体育学会等で予定しており,100,000円程を充てたい。
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Research Products
(2 results)