2012 Fiscal Year Research-status Report
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23500831
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Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
岩船 昌起 志學館大学, 人間関係学部, 准教授 (00299702)
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Keywords | BLS環境 / BLS Map / AED / 体力 / 救急 / 防災 / 霧島市 / Google Map |
Research Abstract |
医学的なエビデンスの蓄積や医療機器の改良等によって、近年、市民による自動体外式除細動器(AED)を使用した一次救命処置(BLS)が世界標準で整備されてきた。わが国でも、2004年7月から非医療従事者によるAEDの使用が認められ、BLSにかかわる知識と技術・手技が消防関係機関や日本赤十字社による講習等を通じて市民へ普及されるとともに、市街地等では公共施設を中心にAEDが設置されてきた。そして、行政やNPO法人によって市街地でのAEDの位置等を示したAEDマップが作成され、ウェブサイトでも情報が公開されている。しかし、日本では高価なAEDの分布には地域的な疎密があり,かつ比較的数が多い市街地でも複雑な建築構造や人々の意識の低さからAEDへのアクセスに手間取ることが予想される。心停止等の重篤な傷病者の救命率や生存退院率を高めるためには,傷病者発生(卒倒)から5分以内でAEDによる除細動が実行されることが望ましく,地域医療体制に速やかに連携できる「市民が協力し合えるBLS体制」の強化が必要である。そのためには、ソフト面の強化が必須であり、AEDへのアクセスをAED運搬者の体力を含めて予め考察するなど、緊急時のBLSの実施方法やBLS環境を市民が事前に検討できる「BLSマップ」を作成しておくことも解決手段として大きな可能性を秘めている。 そこで,本研究では,BLS環境を定量的に把握するため,AED運搬者の走力レベルやアクセス方法等に応じた走行実験を霧島市中央運動公園等で行う。そして,上記の成果に基づき,霧島市全域の「BLSマップ」を作成し,霧島市消防局の講習等でAED設置場所周辺の地域住民が有事に連携できる情報を提示したい。これは,安全教育のための基礎資料を作成・公開することでもあり,1台のAEDを中心に住民間での連携が強まることでBLS以外でも地域の防災や安全を大幅に推進させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
霧島市のAED情報については、霧島市消防局の全面的な協力で2010年12月までに全体調査を行い、AED設置事業者の名称、施設内での具体的な設置場所、電話番号、住所、使用可能な時間帯を把握した。そして、掲載を許可した事業者の情報を活用して「霧島市AEDマップ1) 」を作成し、2011年4月から霧島市ホームページで閲覧が可能になった。これは、消防局職員による情報の更新が円滑にできることを念頭に置いて、フリーソフトのGoogle Mapで制作されている。 「AEDマップ」とは別に、霧島市消防局による講習会や住民同士のワークショップ等で使用可能な「BLSマップ」を作成中である。その経過については、2012年日本地理学会秋季学術大会の「ポスター発表2) 」で報告した。建物内でのAEDの正確な位置を調査し、現行のAEDマップ上でのAEDマークの位置のずれを2012年10月までに調整した。そして、施設内での玄関等の位置も記し、AEDにアクセスできる経路を明示したところ、1枚のGoogle Mapで表示できる情報量を超え、ソフトとしての限界があることが分かった。そのため、5分以内で除細動(AEDによる電気ショック)が可能な空間(≒安全域)や、特に道路上でのその目安となる距離を明記する表現方法を取り決めているものの、平成24年(2012年)度の残った予算では、電子地図等を急遽購入することができず、作業を止めることとなった。 1)鹿児島県霧島市公式ホームページ/くらしの窓/霧島市AEDマップ < http://www.city-kirishima.jp/modules/page038/index.php?id=118 > 2)岩船昌起・山口史枝・霧島市消防局(2012):霧島市におけるBLSマップの作成―市民による「AEDへのアプローチ」の改善のために.日本地理学会発表要旨集,82巻,146p.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに、①「5分以内で除細動(AEDによる電気ショック)が可能な空間(≒安全域)」を検証するための走行実験と、②BLSマップの作成にかかわる「BLS環境についての簡易的な現地調査(霧島市内のAED設置地点229地点全て)」を行った。また③BLSマップの作図作業は、基盤となる地図ソフトとの関連で一時的に停止させたものの、その方法やデザイン等を検討した。 最終年度の平成25年度には、霧島市消防局が講習時等に地域住民に配布する「地区別マップ(PDF形式)」を意識して、③BLSマップの作図に力を入れたい。ゼンリンの「電子住宅地図」を基盤地図として活用して、例えば、A) 片道300m(体力レベルが高い男性が走った場合)、B) 片道150m(一般的な体力の人の小走り)、C) 片道60m(一般的高齢者の歩行)の3つの体力レベルに応じて、AEDを中心に道路沿いに距離が分かる3線(1セット)を描き、主要道路沿いに数セット配置することによって「5分以内で除細動(AEDによる電気ショック)が可能な空間(≒安全域)」を明示したい。また、霧島市消防局とも連携しながら、「普通救命講習(≒BLS講習)」等を申請した受講者や受講団体にかかわる地区での「BLSマップ」の制作を優先し、「地元のBLS環境にかかわる資料」として配布できるようにする。さらに、地域住民への啓発活動で必要な情報を整理したリーフレットも作成し、「霧島市AEDマップ」のホームページ等で閲覧でき、ダウンロードできる仕組みを構築する。一方、BLS講習とは別に、報告者が顧問を務める霧島市防災協会とも連携して地域住民対象の「防災セミナー」を企画し、その中で被災地の宮古市で実施している「体力等」の調査も行うことによって「救急・避難」時の「地域住民の行動能力」も具体的に把握し、「BLSマップ」や「リーフレット」の改善に反映させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の予算は、物品費45万円と旅費5万円の計50万円で計上していた。 物品費45万円で購入する大事なものとして、ゼンリンの電子地図がある。これは、霧島市1(国分・福山)24,150円、霧島市2(隼人・溝辺)23,100円(ただし、2013年5月29日現在在庫切れ)、霧島市3(横川・牧園・霧島)19,950円で、計67,200円の支出で購入することができる。しかし、ホームページへの掲載と資料化して配布する場合の「利用料金」について問い合わせ中であり、プラスαでかなりの支出が予想される。従って、「電子地図」の使用が計上した予算内で収まらない場合等についても想定しておく必要がある。まず「収まった」場合には、電子地図を購入し、AED周辺に居住し実際にBLS行動を行う可能性がある人々の「体力等」調査での補助者の人件費に残金を充てたい。「収まらなかった」場合には、基盤の地図にゼンリンの電子地図を使用せずにGoogle Mapを活用し、掲載範囲を地区ごとに細分化しつつ、簡易的な「BLSマップ」に留める。ただし、簡易的な地図となっても「BLS環境」の理解が十分可能になるような補助的資料としてのリーフレット等の内容を充実させる。リーフレットの作成については、既存のイラストレーターやフォトショップ等のソフトがあり、印刷費も地域防災教育研究センターのコピー機を活用するので、特に支出することはない。従って、残金については、「体力等」の調査での人件費や成果発表のための学会発表時の旅費に充てる。 なお、前もって計上していた旅費5万円については、予定通り、霧島市への調査等での出張旅費とする。
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Research Products
(3 results)