2011 Fiscal Year Research-status Report
一般住民における身体組成が心血管病発症および死亡に与える影響:久山町研究
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23500842
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岸本 裕歩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (00596827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 利治 九州大学, 大学病院, 助教 (30571765)
熊谷 秋三 九州大学, 健康科学センター, 教授 (80145193)
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 疫学 / 久山町研究 / コホート研究 / 身体組成 / 心血管病発症 / 死亡 |
Research Abstract |
平成23年度は全身の筋肉割合と心血管病およびその危険因子との関連を横断的に検討した。平成19年の久山町の生活習慣病予防健診を受診した40歳以上の3271人(受診率76.0%)のうち、身体組成が評価できた2937人(男性1274人、女性1663人)を対象とした。全身の筋肉割合の平均値±標準偏差は男性75.5±5.3%、女性65.6±7.0%であり、いずれも正規分布を示した。また、男女それぞれの年齢を10歳ごとに5区分(40-49歳、50-59歳、60-69歳、70-79歳、80歳以上)した場合、男女の筋肉割合は年齢が上昇するとともに有意に減少した。 次に、筋肉割合を男女別に4分位し、筋肉割合のレベル別に年齢調整した心血管病有病率および心血管病危険因子を比較した。その結果、筋肉割合のレベルが上昇するほど男性の心血管病の有病率は有意に減少した(傾向性p<0.001)。加えて、男女の筋肉割合のレベル上昇に伴い、収縮期血圧、拡張期血圧、降圧薬服用、糖尿病、総コレステロール、肥満は有意に減少し、HDLコレステロールは有意に増加した(全ての傾向性p<0.01)。一方、筋肉割合は心電図異常、現在の喫煙、現在の飲酒、および定期的な運動習慣と関連しなかった。以上の結果から、全身の筋肉割合は、年齢とは独立して男性の心血管病有病率と男女の心血管病危険因子、特に血液生化学所見と関連することが示唆された。 本年度は横断的な検討であるため、全身の筋肉割合と心血管病およびその危険因子の因果関係は明らかにできない。そのため、平成19年に設定された追跡調査を本年度も継続した。この追跡調査では、生活習慣病予防健診の未受診者および転出者に対するアンケート調査を実施し、久山町周辺の病院における診療記録や画像診断等の臨床情報を収集し、剖検による死因の同定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、久山町の生活習慣予防健診にて身体組成の計測を行い、心血管病発症例および死亡例の情報収集、データ整備が行えている。しかし、身体組成と心血管病発症および死亡の詳細な検討を行うにはこれらの症例数が不十分であるため、引き続き追跡調査が必要である。 平成24年度は40歳以上の全住民の約80%以上に生活習慣病予防健診を実施するため、体組成計やその関連機器を追加購入した。また、既存の体組成計と新たに購入した体組成計との計測値の妥当性を確認した。 身体組成の研究に関する情報収集を行うため、第66回日本体力医学会大会に参加し、様々な研究者と意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
身体組成の他の測定データ(四肢別の筋肉量や体脂肪率など)と心血管病危険因子の横断的な解析を継続する。また、追跡調査を継続し追跡データセットの整備を行う。さらに、得られた研究成果を研究分担者・統計専門家と協議し、その後、国内外の学会で発表するとともに、身体組成に関する最新情報を収集する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)心血管病発症および死亡の情報収集のため、引き続き追跡調査を実施する。その一環として、平成24年度も生活習慣病予防健診を実施し、臨床検査の情報を収集する。生活習慣病予防健診では、医師や訓練されたスタッフによる問診や測定(脳・心血管病、悪性腫瘍を含めた生活習慣病の発症に関する情報やその他の疾患の既往歴、家族歴、飲酒・喫煙・運動・食習慣などの生活習慣)、医師による診察身体計測(身長、体重、身体組成、腹囲/腰囲)、血圧測定、心電図、胸部エックス線検査、呼吸機能検査、眼底検査、血液検査(血計、血明生化学、HbA1cなど)、検尿、75g経口糖負荷試験、栄養調査を行う。前年度までと同様に、生活習慣病予防健診の未受診者、転出者へのアンケート調査、久山町周辺の病院への定期的な訪問調査、心血管病発症や死亡に関する情報を収集する。また、死亡例については、病理解剖の承諾を得るよう努力し、死因を精査する。2)今年度の生活習慣病予防健診では体組成計を増台するため、調査スタッフの謝金等による経費を増やす。3)得られた研究成果は、国内学会および国際学会での発表、英文誌への投稿を予定している。また、九州大学大学院医学研究院環境医学分野のホームページ(http://www.med.kyushu-u.ac.jp/envmed/index.html)に研究成果を掲載し、広く情報を発信する。
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Research Products
(5 results)