2012 Fiscal Year Research-status Report
人工知能システムや遺伝子多型を用いた、生活習慣病発症予防のための縦断研究
Project/Area Number |
23500855
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
広瀬 寛 慶應義塾大学, 保健管理センター, 准教授 (50208881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴沢 重成 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40181482)
齊藤 郁夫 慶應義塾大学, 保健管理センター, 教授 (60129442)
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Keywords | アディポネクチン / 遺伝子多型 / 人工知能システム |
Research Abstract |
総合大学在籍の教職員を対象に6年間の健康診断データを追跡し、耐糖能の悪化に寄与するベースラインの因子があるか否かを検討した。 ベースラインの時点で25-60歳, かつ糖尿病(DM)でなく、6年後にも当施設の定期健康診断を受診し本研究に関してインフォームドコンセントの得られた男性390名(44.8±8.3歳、BMI 23.6±3.1 kg/m2)を対象とした。身長, 体重, 血圧, 脈拍数を測定し、血液検査は午前中空腹時に行った。ベースラインおよび6年後の各時点で、空腹時血糖(FPG)126 mg/dl以上またはHbA1c(NGSP) 6.5%以上のDM群、FPG 110-125かつ/またはHbA1c 6.0-6.4%のPreDM群、FPG 109以下かつHbA1c 5.9%以下の正常群に分類して改善・不変・悪化群とし、これらに寄与するベースラインの因子を、年齢, BMI, 血糖, 血清脂質, インスリン抵抗性指数(HOMA-IR), HOMA-β, および高分子量アディポネクチン(HMW-ADPN)濃度を含めて検討した。血清インスリン濃度はEIAにて、HMW-ADPN濃度は富士レビオ社のELISAキットを用いて測定した。 その結果、1) 6年後の耐糖能は、改善群2名、不変群347名、悪化群41名であった。2) 不変/悪化を従属変数としたステップワイズ多重回帰分析にて、男性ではベースラインの血糖 (除外F値51.2, r’= 0.300)、HMW-ADPN (F= 11.5, r’= -0.165)、および年齢 (F= 5.1, r’= 0.110)の順に採択された。 25-60歳の非糖尿病男性における6年間の縦断的検討で、ベースラインの血糖以外にHMW-ADPN低値および年齢高値が耐糖能悪化の予知因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベースラインの時点で25-60歳, かつ糖尿病(DM)でなく、6年後にも当施設の定期健康診断を受診し本研究に関してインフォームドコンセントの得られた男性390名(44.8±8.3歳、BMI 23.6±3.1 kg/m2)を対象とした。身長, 体重, 血圧, 脈拍数を測定し、血液検査は午前中空腹時に行った。ベースラインおよび6年後の各時点で、空腹時血糖(FPG)126 mg/dl以上またはHbA1c(NGSP) 6.5%以上のDM群、FPG 110-125かつ/またはHbA1c 6.0-6.4%のPreDM群、FPG 109以下かつHbA1c 5.9%以下の正常群に分類して改善・不変・悪化群とし、これらに寄与するベースラインの因子を、年齢, BMI, 血糖, 血清脂質, インスリン抵抗性指数(HOMA-IR), HOMA-β, および高分子量アディポネクチン(HMW-ADPN)濃度を含めて検討した。血清インスリン濃度はEIAにて、HMW-ADPN濃度は富士レビオ社のELISAキットを用いて測定した。 その結果、1) 6年後の耐糖能は、改善群2名、不変群347名、悪化群41名であった。2) 不変/悪化を従属変数としたステップワイズ多重回帰分析にて、男性ではベースラインの血糖 (除外F値51.2, r’= 0.300)、HMW-ADPN (F= 11.5, r’= -0.165)、および年齢 (F= 5.1, r’= 0.110)の順に採択された。 25-60歳の非糖尿病男性における6年間の縦断的検討で、ベースラインの血糖以外にHMW-ADPN低値および年齢高値が耐糖能悪化の予知因子であることが示唆された。 遺伝子多型(SNPs)の検討では、ANK1やDUSP9 locusの遺伝子多型と2型糖尿病との関連が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25~26年度も、平成24年度の実績をふまえて解析・検討を進める。 特定保健指導の制度が始まったが、糖尿病およびその予備軍に対する予防および改善の方策が今後ますます重要となることは明らかである。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、内臓脂肪蓄積を基盤としたメタボリックシンドローム型の場合相互に合併しやすく、動脈硬化症の相乗的な危険因子となることが報告されている。昨年8月から慶應義塾大学病院予防医療センターにおいて人間ドックが再開となり、臍高部CTによる内臓脂肪面積および皮下脂肪面積の測定は、希望されない方を除きほぼ全員に行われている。 本研究では、人間ドックや健康診断を受診した方を対象とし、内臓脂肪および皮下脂肪面積と各種代謝性疾患や動脈硬化性疾患の有無との関連を人口知能システムも含めて検討する。方法としては、慶應義塾大学病院予防医療センターの人間ドックを受診した患者さんの健診システムや電子カルテ上の医療情報を得る。研究協力者の人数としては、年間5,000人以上を見込んでいる。 さらに、2型糖尿病などと関連のある遺伝子多型(SNPs)を検索し、血清HMW-ADPN濃度やHOMA-IRを含めて縦断研究で検証する。SNPsの解析情報から、耐糖能異常や高血圧、メタボリックシンドロームなどに関与するSNPsを、一度に多数例解析できるようにシステムを構築したい。なお、本研究計画は当大学医学部倫理審査委員会において、既に承認を受けている。 これらの研究により、2型糖尿病や心血管病のハイリスクグループが同定されれば、健常者における効果的な一次予防や糖尿病患者の治療法および二次予防のための対策の開発に有効である。今後さらに、既知または未知の遺伝子との関連も検討していきたい。得られた有益な知見は、国内外の学会で発表し、和文や英文の雑誌に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も、前年度の実績をふまえて更に解析・検討を進める。 本研究では、当大学在籍中の教職員や病院の人間ドック受診者を対象に、健康診断データを検討し、内臓脂肪および皮下脂肪面積と各種代謝性疾患や動脈硬化性疾患の有無との関連を検討する。データ解析用のコンピューターソフトや、文献検索用の情報通信機器、ノート、ファイル等の消耗品が必要になると考えられる。また、血清中のインスリン濃度はEIAにて、全量ADPNはELISA法にて、HMW-ADPN濃度はCLEIA法またはELISA法のキットを用いて測定するので、測定キット代等の消耗品が必要である。その他、高感度CRPや酸化ストレスマーカーなどを含めて、外部検査機関(SRL, MBCなど)に測定を委託する予定である。 さらに、遺伝子多型(SNPs)の解析にはチューブ、チップ等の消耗品の他、DNA抽出用のキットやInvader法または直接シーケンス法のための試薬等が必要である。SNPsの解析情報から、耐糖能異常や高血圧、メタボリックシンドロームなどに関与するSNPsを、一度に多数例解析できるようにシステムを構築する予定である。 なお、得られた有益な知見は国内外の学会で発表し、和文や英文の雑誌に投稿する予定である。他大学や他国の研究者と本研究やその周辺の関連情報を意見交換し、研究の推進に役立てたい。欧州糖尿病学会(EASD, 9月24日~27日、Barcelona)への国外旅費、および英文校正や雑誌投稿費用などを使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Replication study for the association of DUSP9 locus and 6 South Asian GWAS derived loci with susceptibility to type 2 diabetes in a Japanese population.2012
Author(s)
Imamura M, Iwata M, Maegawa H, Watada H, Tanaka Y, Hirose H, Kashiwagi A, Tobe K, Kaku K, Kawamori R, Nakamura Y, Maeda S
Organizer
第72回米国糖尿病学会
Place of Presentation
米国、フィラデルフィア
Year and Date
20120608-20120612
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