2013 Fiscal Year Research-status Report
人工知能システムや遺伝子多型を用いた、生活習慣病発症予防のための縦断研究
Project/Area Number |
23500855
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
広瀬 寛 慶應義塾大学, 保健管理センター, 准教授 (50208881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴沢 重成 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40181482)
齊藤 郁夫 慶應義塾大学, 保健管理センター, 教授 (60129442)
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Keywords | メタボリックシンドローム / アディポネクチン / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
メタボリックシンドローム(MetS)や動脈硬化症が増加の一途をたどる中、生活習慣の改善による一次予防や二次予防の重要性がいわれている。 本研究では、当施設の定期健康診断を受けた健常人や糖尿病患者のうち、インフォームドコンセントの得られた方を対象とした。高分子量アディポネクチン(HMW-ADPN)濃度は、市販のELISAキットを用いて測定した。その結果、HMW-ADPNには性差があり、男性では女性の約半分の値であった。男女ともHDLコレステロールと強い正の相関、BMIやTG, インスリン抵抗性指数 (HOMA-R)と負の相関を示し、HMW-ADPNの低い群ではMetSの者が多かった。ベースラインで30-59歳の男性における6年間の縦断研究で、HMW-ADPN濃度の低い群では年齢およびBMIで補正後も6年後のMetS発症と有意に関連していた(ハザード比1.56, 95%信頼区間 1.05-2.29, P= 0.028)。MetSの男性16名を対象に食事や運動の指導を3か月間行った介入研究では、食後2時間のインスリンおよびTG値, 腹囲が低下し、HMW-ADPN濃度は有意に増加した。2型糖尿病患者にピオグリタゾン30mg/日で3か月間治療したところ、血圧, 血糖, HbA1c, HOMA-Rなどが改善し、HMW-ADPNは平均で約3倍に増加した。以上より、血中HMW-ADPN濃度はMetSの構成因子やインスリン抵抗性と強く関連しており、重要な血中マーカーであると考えられた。 SNPsの解析では2型糖尿病と関連のある49のSNPsによるGenetic risk scoreの有用性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、当施設の定期健康診断を受けた健常人や糖尿病患者のうち、インフォームドコンセントの得られた方を対象とした。高分子量アディポネクチン(HMW-ADPN)濃度は、市販のELISAキットを用いて測定した。その結果、HMW-ADPNには性差があり、男性では女性の約半分の値であった。男女ともHDLコレステロールと強い正の相関、BMIやTG, インスリン抵抗性指数 (HOMA-R)と負の相関を示し、HMW-ADPNの低い群ではMetSの者が多かった。ベースラインで30-59歳の男性における6年間の縦断研究で、HMW-ADPN濃度の低い群では年齢およびBMIで補正後も6年後のMetS発症と有意に関連していた(ハザード比1.56, 95%信頼区間 1.05-2.29, P= 0.028)。MetSの男性16名を対象に食事や運動の指導を3か月間行った介入研究では、食後2時間のインスリンおよびTG値, 腹囲が低下し、HMW-ADPN濃度は有意に増加した。2型糖尿病患者にピオグリタゾン30mg/日で3か月間治療したところ、血圧, 血糖, HbA1c, HOMA-Rなどが改善し、HMW-ADPNは平均で約3倍に増加した。以上より、血中HMW-ADPN濃度はMetSの構成因子やインスリン抵抗性と強く関連しており、重要な血中マーカーである。ELISA法で測定したHMW-ADPNが2.6μg/mL以下の者は、生活習慣の改善等が必要と考えられた。 SNPsの解析では、2型糖尿病と関連のある49のSNPsによるGenetic risk scoreの有用性が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も、昨年度までの実績をふまえて解析・検討を進める。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、内臓脂肪蓄積を基盤としたメタボリックシンドローム型の場合相互に合併しやすく、動脈硬化症の相乗的な危険因子であることが報告されている。 平成25年8月から慶應義塾大学病院予防医療センターにおいて人間ドックが再開となり、臍高部CT scanによる内臓脂肪面積および皮下脂肪面積の測定は、希望されない方を除きほぼ全員に行われている。本研究では、当院予防医療センターの人間ドックを受診した患者さんを対象とし、内臓脂肪および皮下脂肪面積と各種代謝性疾患や動脈硬化性疾患の有無との関連を検討する。方法としては、上記の患者さんを対象とし、健診システムや電子カルテ上の医療情報を得る観察研究を行う。研究協力者の人数としては、年間4,000人以上を見込む。 また、2型糖尿病と関連のある遺伝子多型(SNPs)をさらに探索し、血清インスリン, HMW-ADPN濃度やHOMA-Rなどを含めて検討する。 これらの研究により、2型糖尿病や心血管病のハイリスクグループが同定されれば、健常者における効果的な一次予防や糖尿病患者の治療法および二次予防のための対策の開発に有効である。得られた有益な知見は、国内外の学会で発表したり、英文の雑誌に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究はほぼ順調に推移しているが、予定の変更により平成25年度の使用経費は少なくなり、そのかわりに平成26年度に使用経費が増加すると考えられる。 平成26年度も、前年度の実績をふまえて更に解析・検討を進める。 データ解析用のPCやコンピューターソフト、ノート、ファイル等の消耗品が必要になると考えられる。また、血清インスリン濃度はEIAにて、全量ADPNはELISA法にて、HMW-ADPN濃度はCLEIA法またはELISA法を用いて測定するので、測定キット代等の消耗品が必要である。その他、高感度CRPや酸化ストレスマーカーなどは、外部検査機関(SRL, MBCなど)に測定を委託する予定である。さらに、遺伝子多型の解析にはチューブ、チップ等の消耗品の他、DNA抽出用のキットやSNPs解析のための試薬等が必要である。 得られた有益な知見は国内外の学会で発表し、和文や英文の雑誌に投稿する予定であり、第50回欧州糖尿病学会 (Vienna)または国際人間ドック学会 (台北)への国外旅費、および英文校正代や雑誌投稿費用などを使用する予定である。
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Research Products
(3 results)