2011 Fiscal Year Research-status Report
家政学的視点に基づく社会関係資本形成とリーダーシップ育成に関する構造的研究
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23500871
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
渡瀬 典子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (90333749)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 家政学 / 生活科学 / 社会関係資本 / リーダーシップ |
Research Abstract |
本研究課題は家政学及び生活科学論が果たしてきた社会関係資本形成、リーダーシップ育成機能の再考、「日本型の家政教育・家庭科教育」の再評価を目指すものである。検討にあたり3つの枠組み(1.「国民の生活をよりよくする」という思想的系譜・現象の整理、2.学校教育、社会教育における問題解決型の学習とリーダーシップ育成に関わる教育実践の分析、3.学校教育、社会教育が果たす公益的な社会参加活動及び社会関係資本形成機能の現状分析)を設定した。 平成23年度は、「生活学」「生活科学」「家政学」各分野における研究者の言説、実践が掲載された文献を収集し、各立場で「生活をよりよくする」ことへの解釈がどの点で類似し、どの点で異なるかを分析するための基礎的資料を整えてきた(枠組み1)。今年度はとくに今和次郎、生活改善事業を例にとり、"生活"が指し示す空間的範域、"よりよくする"行為主体者に注目し、ジェンダー視点による検討を試みた。 次に「問題解決型の学習」と対置するものとして、第二次大戦前に行われていた「技術習得型の学習」である「裁縫科」の教育方法に注目、第二次大戦後に展開された「問題解決型の学習」理念が被服製作の指導でどのように認識されていたか、家庭科教育学の研究者の見解を分析し発表した。 「枠組み3」では、地域社会の人々が学校の求めに応じてどのような関わり方をしているか、ネットワーク化、継続化に注目し、事例研究を行った。また、学校教育の側が授業実践において「地域社会の人的資源の活用」を「どのように認識し、取り組んでいるか」、「成果と課題は何か」等について岩手県の小学校教諭を対象とした質問紙調査の結果をもとに分析・検討した。教師は地域住民が授業に関わることに対し、肯定的かつ好意的に受け止めているが、教育活動として実践を深めるには時間が必要、と認識していることが明らかとなった(現在投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、当該課題にかかわる歴史的資料の収集(主に「枠組み1」関連)のほか、平成25年度に実施予定だった社会教育における社会関係資本形成の実践分析に取り組んだ(当該論文は現在投稿中)。また、当初平成23年度に成果報告をする予定だった学校教育におけるリーダーシップ育成の実践分析報告は、平成24年度に成果発表をするべく、現在取り組んでいるところである。その他の研究計画については、当初の予定のとおり遂行中のため、【現在までの達成度】を区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に収集した資料をもとに、山森の分類における第三期(1970年代以降)の時期に発表された「生活学」「生活科学」「家政学」で活躍した研究者の言説、実践の特徴について検討し、成果を報告する予定である。その際に、当時刊行された「生活をよりよくする」編集方針のもと刊行された生活情報雑誌の分析を副次的に用いる(枠組み1)。 平成23年度から継続課題になっている「リーダーシップ育成」について、高等学校家庭科における学校家庭クラブ活動の実践分析、さらに成果発表を予定している。「問題解決型の教育実践分析」については、学校教育実践における公益的な社会参加活動に関わる教育内容を対象とし、必要とされる知識・技能が生徒たちによってどのように習得されてきたかに着目し、調査を設計する(枠組み2)。また、「枠組み3」に関連して、行政による社会関係資本形成に関わる施策について、7月にオーストラリア(メルボルン)で開催されるIFHE(国際家政学会)で報告する。そのほか、社会教育機関、行政等による公益的活動に関する先行調査の二次分析を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
はじめに、平成23年度、平成24年度ともに「繰り越し」、「前倒し」による研究費使用の実績及び申請予定はない。平成24年度は1.成果発表のための旅費・参加費(国際家政学会、家庭科教育学会等)、2.平成23年度から継続収集中の文献資料の購入・複写、3.投稿料等が研究費の主な支出になると考えられる。
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Research Products
(2 results)