2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500872
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
千葉 桂子 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80188482)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 生活文化 / 東北 / 刺し子 |
Research Abstract |
本研究は,従来の「刺し子」研究にはなかったアプローチを試み,異分野とのリンクの可能性を拡げ,東北地方の衣生活文化の再考に資することを目的としている。平成23年度においては,福島県と山形県の刺し子について調査を行った。1.福島県の刺し子について (1)奥会津博物館南郷館における調査 「南郷刺し子」は,仕事着でありながら吉祥文様の刺し子を施すことにより,ハレ着とされた非常に興味深いものである。その仕事着を収蔵している奥会津博物館南郷館において,実物資料の写真資料の収集を行った。 (2)会津民俗館における調査 福島県の民俗有形民俗文化財「会津の仕事着コレクション」(476点)について,「南郷刺し子」を含む刺し子の仕事着を中心に,実物資料の写真資料及び収集に関する情報を収集した。資料の中には,福島県だけではなく舟運で結ばれていた阿賀野川流域(新潟県東蒲原郡)の仕事着も含まれており,かつての会津の生活文化の一端を把握することができた。また,刺し子の文様にも福島とは異なる文様が認められた。7月末の新潟・福島豪雨の影響により一部地域に限られたが,奧会津地域における衣生活に関する言葉の調査を試み,年代別の傾向を捉えた。2.山形県の刺し子について 山形県庄内地域の遊佐町に伝わる「遊佐刺し子」を中心に,調査を進めた。遊佐刺し子ギルド代表の土門玲子氏らから聞き取りを行うと共に写真資料の収集を行った。遊佐刺し子は,昭和の中頃まで続いた山から薪を橇に乗せて麓に下ろす作業の時に着る「橇曳き法被」に施された。文様は横刺しからなる特徴的なものであり,福島県の刺し子との差異が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,奥会津に残る刺し子の仕事着について予備調査を行った上で本調査を行う予定であったが,昨年7月末の新潟・福島豪雨の影響により,交通の確保が困難となり実施できなかった。 しかしながら,会津民俗館に収蔵されている「会津の仕事着コレクション」に関する情報を把握できたことや,近隣の山形県遊佐地方の刺し子についての情報収集ができたことにより,一定の成果はあったと思われる。 収集した刺し子の文様について幾何学的に分類する予定であったが,特に「会津の仕事着コレクション」における資料数が大量であり,その整理に時間がかかり,進んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては「津軽こぎん」と「南部菱刺し」について調査を行う予定である。 具体的には,(1)文献調査と(2)資料調査を行う。 (1)については「津軽こぎん」と「南部菱刺し」に関する書籍,研究論文等においてみられる文様および呼称について調査する。 (2)については,弘前市・青森市と盛岡市を中心に,博物館,資料館および個人を訪ね,現存する刺し子の布,衣服にみられる文様について調査を行い,ビジュアル資料を収集する。また,地域の衣生活文化の歴史や方言についても調査を行う。得られた資料・情報に基づいて,文様特性について幾何学的な分類を試みる。 それらの結果を,昨年度に調査を行った福島,山形の刺し子と比較し,それぞれの特性について検討する。さらに文様特性を幾何学的に分類することを試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度と同様に関連書籍の購入及び文献複写に使用するが,調査地に赴いてビジュアル資料等の収集を行うために旅費を使用する。 また,その際には作業補書者が必要であり,謝金として使用する。また連携研究者等の旅費も支出を予定している。 到達度でも述べた通り,新潟・福島豪雨により奥会津における本調査ができなくなったため,旅費及び学生アルバイトとして確保した謝金等の支出が不要となったために残高が生じた。平成24年度では主に青森,岩手での調査を計画しているが,日程を調整しながら当初の計画の通り,奥会津での調査実施の際に使用したい。
|