2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者介護を支える家族・専門職ネットワークに関する基礎的研究
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23500877
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
高田 洋子 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (80171445)
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Keywords | 高齢者介護 / 地域福祉 / 介護意識 / 専門職 / ネットワーク |
Research Abstract |
1)介護保険導入後の地域福祉展開に関わる課題として,医療・保健・福祉の3領域間の専門職連携を,地域において住民・家族との協働の中でいかに有効に展開できるのかをとりあげ,その際の大切な条件の一つが当事者や家族,地域住民の意識のありかたであることを示した。この研究の具体的課題として,福井県中山間地域と大都市圏住宅都市それぞれに具体的な地域を選択し,住民と関係機関への調査を行い,先の課題に関わる実際を確認して諸問題の整理を行うことを計画した。 2)学会等の議論を整理し,私たちの課題を確認する作業を初年度に引き続き,今年度も学会への参加や文献の検討を通して行った。6月の福祉社会学会(東北大学),9月の「札幌社会福祉フォーラム2012」,1月の鳥取市での「地域共同ケア全国セミナー」,いずれも自治体や専門職の役割,専門職間の連携を課題とするもので,家族や住民の「気づき」や「見守り」を要点としつつも,社会福祉施設などを含みながら専門職が地域において働くあり方を考えるものである。家族や当事者の負担を看過せず社会的なケアをどう構築するかを考えている。 3)具体的な地域ケアの実態と課題を検証する作業を,今年度,福井県大野市で行った。配票調査で幾らか全体的な視点を確保し,可能な面接調査によって,やや精細な問題群の把握を試みようとした。40歳から85歳の市民約千人を抽出し,「ケアラー」問題に焦点を設定し郵送配票調査を行った。家族など無償の介護者としての「ケアラー」は回答者の3分の1を占め,社会的なサービス,専門職の働きとの協働が,必ずしも期待通りではない実際が示された。関連機関でのデータ収集を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地域福祉の展開と専門職間連携に関わる議論の検討は概ね計画通りに進展しており,成果の報告に結びつくものと思われる。地域社会の現状を考えたときに,過度な期待は福祉水準の向上に結びつかず,各層の施設群と専門職の有機的な展開が有用であることを,これまでの各地の事例検分から導くことになる。具体的な地域における実証調査は,福井県内において始めたが,大都市圏域での実施は未着手である。関係資料の収集作業を進めているが,配票調査には着手できていない。地域間での比較要素が多く,幾らか統制する必要があるのではないかと考えている。現状では,福井県内での調査地を,都市化がやや進行し,在宅医療システムも整いつつある福井市などから選択して現実的な研究展開を考え,いったん総括した上で,大都市圏域での調査を次の段階に設計する方向が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進行状況,および研究の進め方に関する検討を経て,次のような形で,最終年度の研究を進めたい。 ①福井県大野市での配票調査の第一次報告書は年度当初に印刷し,必要な検討を経て批判をいただく。さらに面接調査が可能な人々がリストアップされているので,今年度前半に進めたい。②福井県内での「ケアラー」に焦点化した調査を,もう1地域で実施する。調査票内容を比較可能な範囲で更新し,配票数および配票方法を統制して,有効な調査を実施し分析に供したい。この調査の結果と先の大野市調査の結果とあわせ,総合的な第二次報告書を印刷する。③大野市調査の結果による論文を構成し,事業終了後になるが,来年度にかけて学会での評価を得たい。地域福祉の展開と専門職間連携の議論の整理と成果は今年度中にまとめたい。 調査では学術調査としての調査趣旨を十分説明し,調査資料の保管・公開について対象者の人権への配慮に注意する。補助者にも教育を十分に行う。 研究分担はこれまでと同様,以下のように行う。 高田洋子:研究代表者。高齢者の生活と生活保障に関する政策・制度・実態の分析。 高田滋 :連携研究者。地域社会分析と地方自治体の行財政分析。市民活動の分析。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに残した研究費と第3年度に請求した研究費によって,25年度は以下のように研究を進める。 ・主題に沿った国内外の文献を購入し整理検討する。主として,在宅ケアに関わる医療保健福祉システム構築の問題領域と医療システムの課題群,地域福祉また社会関係分析の手法に関わる文献となる。学会等にも参加し議論の水準を確認する。 ・福井県内の自治体(福井市予定)の住民対象の現地調査を行う。行政機関,社会福祉団体・施設,関係医療機関への訪問面接調査,資料収集と検討,住民への面接調査,住民への配票調査と検討を行う。調査とくに配票調査の集計分析においては調査集計ソフトを活用し,データ入力の際には妥当な補助者を得て行う予定である。昨年度に行った大野市調査では,さらに今年度に面接調査を行い分析に加える。面接調査では調査対象者に謝礼を考える。 ・福井県大野市調査に関わる第一次調査報告書を年度当初に刊行し,さらにインタビュー調査結果及び上記福井市調査(予定)の分析成果を得て,第二次調査報告書を作る。
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