2011 Fiscal Year Research-status Report
戦後における小学校家庭科の展開過程と家政学の専門性:鹿内瑞子旧蔵資料をもとに
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23500883
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
八幡 彩子 (谷口 彩子) 熊本大学, 教育学部, 准教授 (90259763)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 家政学原論 / 鹿内瑞子 / 専門性 / 小学校家庭科 / 家政学史 |
Research Abstract |
平成23年度は、「鹿内瑞子旧蔵資料」のうち、昭和20年代・30年代の小学校家庭科に関する資料をもとに検討を行った。研究概要は次の通り。(1)「鹿内瑞子旧蔵資料目録」をもとに、昭和20年代・30年代の小学校家庭科に関連する資料の抽出を行い、国立教育政策研究所附属図書館において、複写による資料の入手、整理作業を行った。おもな資料として、昭和20年代の小学校家庭科存置運動関係資料、非教科型の家庭生活指導のてびき編集過程に関する資料、昭和30年代の教育課程改訂に関する審議会資料、へき地教育、実験学校、家庭科の施設・設備充実に関する資料等を入手することができた。(2)収集した資料をもとに、昭和20年代・30年代の小学校家庭科に関する教育課程の展開過程を把握するとともに、教育課程改訂の際に出された小学校家庭科の本質等に関する議論を整理し、検討した。とくに、昭和30年代に、教科としての家庭科存置がはっきりしてからは、実験学校における研究を通して教科内容を充実させるとともに、へき地教育や施設・設備の充実に関する行政側の取り組みも明確になっている。教科調査官鹿内瑞子氏は、小学校家庭科に関する教育課程行政のトップとして、専門家の協力を得ながら、精力的に仕事に取り組んでいる様子が窺われる。(3)上記の検討をふまえ、小学校家庭科の独自性・専門性について考察した。昭和20年代の教科型か、非教科型か、という家政学の普及のあり方に関する検討を通して、教科として家庭科を設置することの意義が関係者に自覚を促す効果が認められた。(4)小学校家庭科に関する教育課程の改訂の際に、鹿内瑞子氏が果たした役割を検討し、小学校家庭科の専門性について考察した。とくに、昭和30年代の実験学校や家庭科の施設・設備充実を指導した鹿内氏の姿勢には、家政学の専門性をふまえた視点が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国立教育政策研究所附属図書館に所蔵されている「鹿内瑞子旧蔵資料」のうち、予定していた昭和20年代・30年代の小学校家庭科に関する資料の複写・入手は、ほぼ完了している。(一部、著作権の関係から、複写が制限されたものがある。) 昭和20年代と昭和30年代における小学校家庭科に関する学習指導要領の改訂に関する検討はほぼ終了している。 昭和30年代の入手資料中、へき地教育に関する検討をもうしばらく継続する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果については、5月の日本家政学会での発表までに、予定している研究を終了させ、区切りを付けたい。研究発表後には、論文を執筆し、「日本家政学会誌」への論文投稿を予定している。 次年度以降、引き続き、昭和40年代・50年代の小学校家庭科に関する資料の入手作業を進める。 とくに、「鹿内瑞子旧蔵資料」では、鹿内氏が教科調査官として手腕を発揮した昭和40年代の資料が膨大であることから、資料収集に時間がかかることが予想される。効率的に資料収集を行えるよう務めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、昭和40年代・50年代の小学校家庭科に関する教育課程行政の動きと鹿内瑞子氏が果たした役割について検討を行う。おもな研究費の使用計画は以下の通り。(1)平成23年度の研究成果をもとに、(社)日本家政学会年次大会において研究発表を行うとともに、(社)日本家政学会誌に論文を投稿する。(研究発表旅費、論文投稿料等)(2)「鹿内瑞子旧蔵資料目録」をもとに、昭和40年代・50年代の小学校家庭科に関する資料の絞り込み作業を行い、国立教育政策研究所附属図書館において、資料の複写による入手作業・整理を行う。(資料収集旅費、複写費等)(3)昭和40年代・50年代において、小学校家庭科に関する教育課程がどのように改訂されたのかを把握し、審議会等における検討過程で議論された論点を整理する。そのための参考文献等の購入を予定している。(文献購入等)(4)教育課程改訂の際に、教科調査官として鹿内瑞子氏が果たした役割について検討し、小学校家庭科の独自性・意義・専門性について考察する。
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