2012 Fiscal Year Research-status Report
子育て世帯に対する経済的支援策の国際比較研究:家計分析からのアプローチ
Project/Area Number |
23500886
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
所 道彦 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (80326272)
|
Keywords | 社会保障 / 家計 / 児童手当 / イギリス / 国際比較 |
Research Abstract |
24年度は、引き続き文献研究を行うとともに、23年度末に行ったイギリス調査の結果を整理した。現在、イギリスにおいては、社会保障制度改革が実施されており、児童手当に対する所得制限や社会保障手当の総額に対するキャッピング(受給総額の制限)などが実施される予定となっている。特に、住宅手当が大きく削減されること、クライエントグループ別では、母子世帯に対する影響が大きくなることが予想されており、これらの改革の影響については、家族形態別の家計単位での把握が必要となっている。改革動向については、現在、その影響について全体の把握を進めており、25年度にまとめて報告予定である。 また、日本の子どもに対する経済的支援策についても国際的に関心が高く、今後の本研究の実施において協力を得るためのステップとして、日本における過去3年間行われた児童手当と子ども手当に関する制度改革について、イギリスの雑誌に英語論文を発表した。また、過去10年間の子育て支援策の水準の推移を比較検討するための試算にも着手しており、イギリス研究者と議論を続けている。特に、水平的再分配の水準と併せて、公的扶助水準を基準とした経済的支援策の実質的な価値を測定するという手法がイギリスでは用いられているが、国によって公的扶助水準の位置づけ、設定方法、最低賃金など他制度との関係が異なることから、比較研究を行う上では理論的・技術的に難しい課題が残されていることを確認した。 本研究は、家計の視点から、子どもに対する経済的支援策の国際比較を試みるものであるが、比較の前提となる制度設計の変更を見極めた上で、分析と考察を平成25年度に実施するとともに、福祉制度の比較研究を行う上での家計分析の重要性を示していきたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、家計の視点から、子どもに対する経済的支援策の国際比較を試みるものであるが、経済的な危機を背景に、ヨーロッパ諸国を中心に、制度比較の前提となる制度設計の変更が各国で行われており、その把握にやや苦労している。本来ならば、24年度中にイギリス以外の国でのヒアリング調査を実施したかったが、ヨーロッパ情勢が依然として不安定なこと、日本においても政権交代があり、子育て支援策の方向性が変化することなどから、25年度にまとめて比較研究を実施することが合理的と判断した。スケジュール的にはやや厳しくなったものの、総じて目標達成が可能であると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、海外調査を行い、ヨーロッパの経済危機以降の家族政策の方向性を見定めたい。また、その家計への影響を、社会保障のパッケージのシミュレーションを行うことで明らかにしたいと考えている。日本の含め、公的扶助制度改革が議論されており、低所得世帯の経済的支援のあり方に注目する必要があると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査および、最新の政策動向に関する文献収集に関する費用が、多くを占めることになる予定である。
|
Research Products
(3 results)