2011 Fiscal Year Research-status Report
在宅認知症高齢者とその家族を対象とした介護援助プログラムの開発に関する研究
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23500887
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
篠田 美紀 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (10285299)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 認知症 / 介護家族 / 回想法 |
Research Abstract |
H23年6月より 研究従事者の研修と研究対象者への案内を開始し、10月よりアルツハイマー型認知症高齢者を対象とした回想法グループと家族の会を開始した。両グループはいずれも集団精神療法の技法に従い、週1日90分10週連続で1グループとした。H23年10月~12月、H24年1月~3月の期間、2グループ実施した。案内は10家族に行ったが、参加者は8人、8家族であった。いずれもアルツハイマー型認知症の初期の段階にあり、診断名の告知直後の事例もみられた。認知症高齢者は抑うつ傾向や引きこもりの状態にあったため、継続的な参加が心配されたが、出席率は90%を維持できた。グループ回想法への参加により表情が豊かになり、投影法(バウムテスト)による効果評価では、外界適応への意欲や、自尊感情の安定などが認められている。一方、家族は診断後間もない状態であるため、診断名や認知症への拒否感、否定的な介護感情が強く、現在の状況認識と症状の予後に対する展望が持てていない状況にあった。また、介護保険についての情報や、介護情報を得るネットワークもなく、孤立状態であった。今年度は心理教育的なプログラムを見送り、ピアサポートの要素を含むエンカウンター形式のプログラムに変更したところ、介護家族はまず、診断名や認知症、介護についての否定的感情を表現することで、現在の状況についての客観的な認識を持つようになり、認知症について理解する姿勢へと移行していく過程が認められた。プログラムの最終期には、介護保険や介護情報を積極的に交換し、利用についての検討を開始するなど、具体的、実際的な介護体制へと変化が認められた。これらの結果について、現在数量データーとして集約中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の実施状況についてはやや遅れている。H23年度は当初5月より開始し、年度内に3グループ実施する予定であったが、研究従事者の研修と手続き、および心理教育的プログラムの構築に時間がかかったことと、盛夏の時期は、研究対象者となる認知症高齢者の来所に大きな負担がかかるため、倫理的配慮からも10月からの開始にせざるを得なかった。効果評価他の研究計画については、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に基づき、年度内に3グループのグループ回想法と家族の会の実践を行う。次年度は本年度実施を見送った心理教育プログラムを導入し、臨床心理士やケアマネージャーによる認知症の理解や症状への対応、介護保険制度の利用について、情報提供を行っていく。また回想法と介護家族のグループを並行して行っているので、2つのグループ療法の長所を取り入れたプログラムについても検討する予定である。介護家族の効果評価については、グループの内容分析に加え、参加対象者に実施している投影法による技法も検討中である。また、グループを終了した後のネットワーク作りの場として、同窓会と称した会を3回(5月 9月 12月)開催し、参加者とその家族の交流の場を提供するとともに、回想法グループ参加後の経過観察も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は年間を通じて 3グループ実施するため、交通費、人件費に多くの費用を予定している。また心理教育プログラムを実施するため、外部講師への謝礼金も多く予定している。本年度は2グループであったため、予定していた1グループ実施分の経費を次年度に繰り越しているので、この研究費を次年度の人件費、旅費、謝金に使用する。また、前年度までのグループ回想法の効果評価について、学会発表を予定しており、その旅費など、前年度に比べ、増加する見込みである。備品、物品については、新たに準備するものは消耗品以外、特にない。
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