2012 Fiscal Year Research-status Report
在宅認知症高齢者とその家族を対象とした介護援助プログラムの開発に関する研究
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23500887
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
篠田 美紀 大阪市立大学, 生活科学研究科, 准教授 (10285299)
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Keywords | 認知症 / 介護家族 / 回想法 |
Research Abstract |
H24年度はH23年度に開始したアルツハイマー型認知症高齢者を対象とした回想法グループと家族の会を5月上旬より開始した。①H24年5月11日~7月20日、②H24年9月21日~12月14日、③H25年1月11日~3月15日の期間、週1回、90分、計30セッションと3回のフォローアップを行った。また、H24年6月~10月の期間、新たな回想法グループと家族の会を開始し、総計27家族の研究協力を得ることができた。認知症高齢者の回想法グループ効果について、投影法(バウムテスト)の指標による検討を行ったところ、いくつかの検討指標において改善が認められ、認知症高齢者への本プログラムの効果が認められた。本知見については、H24年9月に日本心理臨床学会第31回大会で発表した。 付き添い家族による家族の会は本年度、心理・教育プログラムを導入し、認知症理解や介護保険制度、医療システムの理解などについてのテーマを取り上げた。前年度のピアサポートプログラムに顕れた認知症高齢者の家族としての介護感情の変化を中心とした経過とは異なり、医療機関や医療体制への不信感、認知症理解のためのサポートの少なさに対する絶望感などが、介護家族としての問題意識よりも多く取り上げられ、社会体制とそのサポートのあり方について、より多くの知識提供が家族から求められた。家族による積極的な情報の収集と、情報交換も認められた。また、介護家族と認知症高齢者本人が同時にこのプログラムに参加することの有効性も指摘され、次年度の課題となっている。本年度より行った3回のフォローアップについては参加率も高く、認知症本人とその家族への継続的なサポートの重要性が認識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は準備期間が長引き、20回の実践しか行えなかったが、当初の計画通り、本年度は30回の実践と3回のフォローアップを行った。今年度に繰り越された10回の実践を行うために、研究補助者の移動に伴う交通費と人件費を昨年度の繰り越し資金で支出したうえ、新しく第2の実践グループを開始したため、スタッフの人件費が増大している。認知症高齢者への効果については、これまでの研究結果に基づいて、学会発表を行った。 並行プログラムとしての介護家族へのプログラムについては、質的研究の側面が強く、検討にかなりの時間が必要となっているが、現在進行中である。 さらに、当初計画に従い、今年度より参加者とその介護家族のフォローアップを実施している(5月・9月・12月)。同窓会として開催しているフォローアップの場は出席率が高く、好評である。介護のネットワーク作りの場ともなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に基づき、年度内に30回の実践と3回のフォローアップを行う予定である。認知症高齢者の回想法プログラムにおいては、事例を増やしてデータ分析を進める予定である。また、H24年度に解析できなかったロールシャッハ法による認知症高齢者の外界適応回復過程についても解析を行い、認知症関連の学会(認知症ケア学会)や回想法関連の学会(国際ライフレビュー学会)に報告する予定である。介護家族の会については、本年度は心理・教育プログラムとピアサポート的エンカウンターグループ形式の折衷プログラムを行う。介護家族の効果評価については、介護環境により介護者が複数交替で回に参加する事例が多く、当初予定していた特定の介護家族者の内的変化についての検討は、これまでの実践から難しいことが予想された。従って、介護家族の効果評価についてはプログラム実践によるグループ実践の質的検討から、行うこととする。 次年度は最終年度であるため、研究協力機関である認知症疾患医療センター(大阪市立弘済院附属病院)内での認知症セミナーおよび、大阪市立大学において、大学セミナーの形で研究報告を行い、研究報告書を作成し、研究成果を発信する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は前年度と同様の実践回数を予定しているので、研究補助者の移動に伴う交通費・人件費に多くの支出を予定している。また、本年度は家族の会において、折衷プログラムを施行するので、心理・教育プログラムのための外部講師への謝礼も多く予定している。研究成果の発表に伴う学会発表のための諸経費(データ処理・旅費・宿泊費など)も前年度分に比べて多く予定している。備品・物品については回想法の準備品としての道具をいくつか購入予定である。また、研究協力機関である認知症疾患医療センター(大阪市立弘済院附属病院)内での認知症セミナーおよび、大阪市立大学において、大学セミナーの形で研究報告を行い、研究成果を発信する予定であるため、その準備と会場費 広報等にも支出を予定している。
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