2011 Fiscal Year Research-status Report
機能性UVカット剤を用いた環境材料(衣料・生活用品)のエコ化と身体防護性能付与
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23500905
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
織田 博則 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80131176)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 染色布 / 耐光性 / 反応性 / 紫外線カット剤 / 機能性 |
Research Abstract |
色素の耐光性改善を目的として、自動酸化防止・紫外線カット・一重項酸素脱活性化機能を併せ持つ安定化剤を新規に合成し、繊維に反応させ、安定化剤の複合作用について、オレンジI染色ナイロン布を用い、耐光性改善効果を検討した。ベンゾトリアゾール系紫外線カット剤UVAの合成は文献に従い行った。染料の光退色挙動は各種安定化剤を反応させたナイロン布を用い、染料濃度3% owf、浴比1:100で80℃、1時間染色した。作成した各種染色布にキセノンアーク灯(550W/m2, 65℃)を照射し、退色挙動を色差計にて追及した。また、ニッケル塩化条件についても各種検討し、最適処理法を見出し、一重項酸素脱活性化効果についても検討した。未処理ナイロン布染色オレンジIの退色はキセノンアーク灯照射により、1hで8%、10hで48%、40hで86%の退色が見られるのに対し、紫外線カット剤(UVA)とスルファニル酸反応物をペンダントしたナイロン布上では1h照射で3%、10hで32%、40hで80%と紫外線カット剤による僅かな退色の抑制効果が見られた。一方、2-アミノフェノール-4-スルホン酸塩に代えた場合には、水酸基とトリアジン環のプロトン移動による紫外線吸収効果が発現し抑制効果の向上が見られた。その効果は、UVAを2個導入した物より優れていることは注目される。また、自動酸化防止剤(TMP)を組み合わせた場合には、更に抑制効果の向上が見られた。この効果はUVAとTMPを併用した場合と同程度であることから、紫外線カット機能と自動酸化防止機能の併用がオレンジIの光退色の抑制には有効であることが示唆された。事実、紫外線カット機能や自動酸化防止機能のみでは抑制効果は低下した。また、一重項酸素脱活性化機能の併用は顕著な耐光性改善効果が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反応性多機能型安定化剤の合成と染色布(綿、ナイロン、毛など)への反応条件の検索は、最適条件が見いだされ、又一重項酸素脱活性化処理については、最適処理法が確立され、結果は染料自身の耐光性が、キセノンアーク灯照射による耐光試験では、染料自身の耐光性が1級以下であるのに対し、処理布では、ゲレースケル評価で4級と3級半の大幅な向上が見られ、当初の目的以上の効果を示した。また、縮合型紫外線カット剤の効果については、SEN-I GAKKAISHI及びTextile Research Journalに投稿し掲載されている。現在行っている未利用バイオマスの有効利用における天然色素の耐光性改善についても、クチナシ青色素の耐光性を、ベンゾフェノンートリアゾール系紫外線カット剤と一重項酸素脱活性化剤の併用効果で、優れた耐光性改善効果が得られ、新規紫外線カット剤の地球環境負荷についても、大腸菌・黄色ブドウ球菌を用いた試験により、地球環境にやさしい化合物であることも判明した。この結果は、日本家政学会第64回大会で発表し、上記染色布への反応性機能性安定化剤の効果については、平成24年度繊維学会年次大会で発表する。
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Strategy for Future Research Activity |
紫外線カット剤の分子設計・合成を行い、モデル実験について諸物性、耐久性等基礎実験を行う。同時に、新規化合物についての地球環境負荷については、毒性試験等の実績を有する連携研究者(杉山章)が行う。新規分子設計された紫外線カット剤を大量合成し、これを衣服や生活用品への加工への適用を試みる。加工する材料は、まず反応染料染色綿布、絹、ナイロン、およびポリエステルの4つをターゲットとする。加工処理では、その濃度、加工方法を検討してサンプルを作成し、作業性と紫外線カット機能(UPF)について検討する。これらの結果は、分子設計指針へとフィードバックし、より高機能な紫外線カット剤の開発を進める。今年度の繰り越し金については、今年度の基礎知見を受け、ベンゾトリアジンートリアゾール系紫外線カット剤の有効性の期待が高まったため、次年度、その化合物誘導体を数十種合成するため、あえて次年度に研究資金をもわした。今年度回した75万円と次年度の資金で、大きな紫外線カット機能が期待されるベンゾトリアジンートリアゾール系紫外線カット剤の合成と物性評価を行うつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)二種の紫外線吸収機能を併せ持つベンゾトリアジンートリアゾール系紫外線カット剤の合成は文献に従い、母体骨格であるベンゾトリアジン系紫外線カット剤をまず合成し、その母体骨格に、o-ニトロアニリン誘導体をジアゾ化したジアゾ成分を3倍モルカップリングさせ、還元剤により還元閉環して合成する。また、上記紫外線吸収剤に一重項酸素脱活性基導入した高機能性材料や、撥水性機能を有するトリフルオロメチル基導入縮合型紫外線吸収剤など、多機能型紫外線吸収剤も合成する。構造確認は常法により確認する。合成した化合物のUVスペクトルや光退色予備実験は文献に従い、高分子基質を用い行う。2)新規紫外線カット剤の抗菌性と皮膚一部刺激性試験は昨年度と同様な方法で、JISの繊維製品の抗菌性試験に基づき行う。3)新規紫外線カット材料の染色布への適用と日光堅牢度改善効果及びUPFの検討は、絹、ナイロンおよび綿布を用い、浴比、染料濃度、染色温度、時間等染色条件を振とう恒温水槽と分光光度計を用いて行う。同時に、染色布の紫外線カット剤溶液に浸漬し、処理時間と付着量の関係を検討する。作成された処理サンプルの耐光試験はキセノンアーク灯を用い、変退色用グレースケルで評価する。紫外線カット処理染色布の紫外線遮蔽性能の測定は、分光光度計を用い、UVA,UVB,UVT領域別に透過率曲線のスペクトル面積を算出し、空気とのスペクトル面積比で紫外線遮蔽率として算出する。UPFについては、前年度と同様オーストラリア/ニュージーランド共同規格のUPF計算式を用いる。
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Research Products
(6 results)