2012 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児ズボンのウェスト構成と圧迫による身体影響に関する研究
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23500906
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
山田 由佳子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20304074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 真理 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20294184)
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Keywords | 乳幼児ズボン / 衣服圧 / 血流 / アンケート調査 |
Research Abstract |
本研究は圧感覚の主観的評価が難しい子どもに対し、血流を測定することで圧迫に対する客観的評価を行うことが主な目的である。H24年度は、メイン実験である血流測定及びアンケート調査を、大阪教育大学倫理委員会の承認を得て実施した。 実験用ズボンは、H23年度の結果を踏まえて締め付け率10%及び15%とした。被験者は事前に保護者の同意を得た4.8才から6.8才の幼児70名である。実験は、ズボン未着用時の測定を行った上で、実験用ズボン2点及び当日着用の普段着での測定を行った。 実験用ズボンにおける衣服圧は締め付け率15%の平均で2.68kpaであり、締め付け率10%の2.43kpaに比べてやや高い傾向を示した。同時に血管容量は締め付け率10%が1.14であったのに対して、締め付け率15%で1.07と減少する傾向がみられ、ウエストを締め付けると衣服圧は上昇し、血管が押しつぶされて血管容量が減少する様子が確認された。立っている時(立位)と比べて、体操座り(座位)では衣服圧が高くなる傾向があり、個々の測定値では最大で2倍もの衣服圧となることがわかった。 測定当日の普段着の布の種類は、伸縮性の少ない織物が最も多く、38%を占めた。普段着全体における立位での衣服圧の平均は2.09kpaであり、最小値が0.76kPa、最大値が4.70kPaとバラツキが大きかった。ズボンの種類別にみると伸縮性の無い織物では、座位時に6.0kpa以上の衣服圧となったズボンが数点あり伸縮性の無い織物ズボンで体操座りをすると、非常に高い数値となる傾向が確認された。 アンケート調査では、ズボン購入の際布の伸び柔らかさを重視する~やや重視するものが計92.0%もいるにかかわらず、実験当日の普段着に4割近くが伸び固い織物のズボンを着用していたことは問題であると思われ、アンケート結果と着用実態の更なる検討が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度研究実施計画におけるアンケート調査及び着用実態調査、人体による衣服圧及び血流の測定は完了しており、アンケート調査では単純集計を終えている。着用実態調査については普段着の種類を調査した上でそのウエスト長、被験者のウエスト長を測定し、普段着での締め付け率を明らかとした。実験は全体での締め付け率及び姿勢の変化における全体の平均値の把握は行っていることから、おおむねH24年度実験計画の目的は達成出来たと考えている。 しかし、アンケート調査においてはクロス集計、分散分析などによる検討がまだ行えておらず、衣服圧及び血流測定実験では幼児それぞれの年齢や性別の影響、普段着ではズボンの布の種類による影響の検討が十分に行えていない。 更に、H23年度に想定外の新たな課題として、ズボンのゴム紐を通す時点で特に細いコールゴムにおいて、ゴム紐が一度引き延ばされ、伸長力が低下する問題が明らかとなった。しかし、H24年度には当初の計画通りメイン実験を行う事を優先し、伸長力低下の少ない太い織りゴムで着用実験を行って、それぞれのゴム紐ごとの一度引き伸ばした後の伸長力低下挙動を含む、ゴム紐そのものの物性を把握する追加実験はH25年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、まず、当初の研究計画通り、ずり下がり性について、実験用ボディ及び人体により実験を行い、ずり下がりにくいウエスト構成について検討する。 又、課題として残った、引き伸ばし後の伸長力低下挙動を把握する為に、幅の広い織りゴムをはじめ、幅の狭いコールゴムにおいても一度最大限まで引き伸ばし、応力緩和した後のゴム紐の引張特性を測定し、使用されている糸ゴムの種類及び織り、組み構造の違いと伸長力低下挙動の関係を明らかとする。又、ゴムの厚さと圧縮特性についても実験を加えて総合的に、伸長力と衣服圧との関係を検討する。 更に、H24年度衣服圧及び血流測定実験の結果について、衣服圧及び血流に影響を及ぼす因子(年齢、性別、布の種類など)の更なる検討とその関連を深く考察する。又、アンケート集計において、更に分析を行って検討を深め、部分的には実験に協力いただいた回答者のみ、アンケート結果と着用実態及び衣服圧等との関連を探る。 以上の研究結果を踏まえて本研究の総合考察を行い、幼児用ズボンの問題点を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の支出は物品費以外はほぼ計画通りであったが、H24年7月に購入した血流計がモデルチェンジによりH23年度当初の計画より安価となった為生じた差額(\446,250)を含め\504,197をH25年度に繰り越すこととした。 次年度は物品費を計画の\50,000と繰り越し金を合わせて\554,197とし、文房具等の購入と、繰り越された課題であるゴム紐の特性を明らかにする為の追加実験として行うゴム厚さ及び圧縮特性の測定装置購入にあてる。 又、人件費・謝金においては計画では\110,000であったが、繰り越された課題のゴム紐の特性に関する実験に補助をおくため\200,000へと変更する。差額は旅費とその他から移動し、旅費を\70,000、その他を\80,000とし、合計\904,197の支出予定である。
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