2011 Fiscal Year Research-status Report
家族形態・居住形態の変容にともなう歴史的居住地の持続性に関する研究
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23500907
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
牧野 唯 奈良女子大学, 人間文化研究科, 助教 (20321325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 範子 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (30031719)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 居住地の持続性 / 家族形態 / 子世代との別居 / 住宅の改修 / 町家 / 会所 / 地域交流 |
Research Abstract |
本研究は、歴史・自然環境と伝統的な町並みの中にある生活空間を次世代に継承していくため、住様式視点から歴史的居住地の持続性を検討し、居住地として存続するための住宅・住環境計画の新たな課題を明らかにするものである。本研究の調査対象とした奈良町北地区は、2000年調査(奈良女子大学今井範子研究室実施)と同様、比較的古い町家の残る6地区(押上町・今小路町・手貝町・東包永町・東笹鉾町・半田町(南半田西町・南半田中町・南半田東町・北半田西町・北半田中町・北半田東町))である。 研究計画に基づき、現況調査(外観調査、空き家・空き地調査)、質問紙調査、事例調査を実施した。1)住宅地図(2000年と2011年)を用いて調査対象地区595例の現況調査を行った。また、通りに面した413建物の外観調査を行い、建物の外観を次に記すA~Dの4段階に分けて評価した。Aは伝統的な景観を最もよくとどめ、景観を形成する(もしくは優れた景観要素となる)もの、Dは景観を阻害するもの、B・Cは修景方法によって景観形式に寄与しうるものである。これら4段階に加えて、2011年の調査では建物の老朽化や新築による変化が顕著であることから、9段階に建物外観は分類された。2000年に調査した際の建物外観評価との比較を行うため、データはGISソフトにより作成した。2)2000年調査地区の居住者を対象として、住生活と居住に関する質問紙調査を実施した。調査時期は2011年10月である。なお、2000年調査は町家・長屋・屋敷・戸建住宅を対象としたが、2011年調査では調査対象地区のマンション居住者およびアパート居住者に対する質問紙調査を実施した。3)建物外観評価の2000年から2011年までの変化と家族形態の変化との関連性が見られる事例を抽出し、外観および内部の増改築の状況、住み方についての事例調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、居住地の持続的発展にかかわる住宅改修と居住者の意向を明らかにするため、持家居住と借家居住の二系統の居住形態に大別し、次に記す研究計画に基づき、住宅の現況調査、居住者への質問紙調査、事例の抽出による聴き取り調査を実施した。1)住宅改修に親子の居住形態と居住者の人的ネットワークの変容が与える影響、2)通り庭や中庭のある伝統的間取りの改修による変容と再評価、3)新たな世代交代としての非家族・非親族同居の可能性を検証。 質問紙調査は住宅形態別に3種類を作成し、世帯票に加えて、個人の意識を把握するため個人票を作成して実施した。平成23年度は、2000年に奈良女子大学今井範子研究室が行った奈良町北地区の調査対象地居住者に対する質問紙調査の実施に加えて、当該地区のマンション居住者およびアパート居住者に対する質問紙調査を実施することができた。その結果、居住地として存続するための、居住者の転出入とその住宅形態の特性によるより幅広い比較分析が可能となった。調査概要は次の通りである(調査時期2011年10~11月)。1)2000年調査対象の奈良町北6地区(町家・長屋・屋敷・戸建)を対象とした質問紙調査:世帯票配布数212、回収数182票(回収率85.8%)、個人票回収数341票2)調査対象地区に建設されているマンション居住者を対象とした質問紙調査:世帯票回収数111票、個人票回収数171票3)同様にアパート居住者を対象とした質問紙調査:世帯票回収数108票
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Strategy for Future Research Activity |
2010年度の調査結果を分析し、研究発表を進める中で、さらに検討しなければならない課題について分析を深める。 2000年調査では町家・長屋・屋敷・戸建住宅を対象としたが、2011年調査では調査対象地区の居住者・住宅上の変化がみられたことから、「借家居住」の調査回答が予想以上に少なかった。そこで、2011年調査では、マンション居住者およびアパート居住者に対する質問紙調査を実施することにより、これら住宅形態の違いによる居住者の意識の違いを現在分析中である。 また、奈良町北地区では、空き地や空き家の活用事例が実際には見いだせず、老朽長屋を現代的に改修して活用する動きはみられなかった。一方、奈良県下では空き家再生ネットワークの動向が注目され、今後の変化が予測されることから、まずは、全国で取り組まれている事業の動向を把握し、事例の見学、事業者への聴き取り調査を行い、目的に沿って研究計画を推進する。 研究分担者・今井範子(奈良女子大学・名誉教授)は、研究方法の妥当性の検討、研究計画の推進・実施、成果のとりまとめを分担する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本研究計画に基づき、住宅・住環境の更新状況と住宅の所有関係別にみた問題点を明らかにする。 分析には、パーソナルコンピュータを使用し、迅速な解析や論文執筆のためのソフトの導入を行う。また、本研究に関連する資料の収集、学会等の登録、論文掲載、先進事業の聴き取り調査、調査謝礼、学会・研究会等の出張に必要な経費を使用する。 なお、聴き取り調査は調査協力者の同意を得て実施する。4~6月:学会等での資料収集・整理 調査データの分析、論文執筆。5月:日本家政学会(大阪市立大学)発表。7月:国際家政学会(オーストラリア・メルボルン)ポスター発表。8~12 月:京町家再生賃貸住宅制度の活用事例の調査、実務者・事業主への聴き取り調査。既存住宅流通活性化事業の実績調査、物件資料の収集・整理と分析・考察。1~3 月:論文執筆、学会・研究会での資料収集と成果の発表。
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