2011 Fiscal Year Research-status Report
環境に優しい新規ケラチナーゼ酵素を用いた羊毛の防縮加工法の開発と消費性能評価
Project/Area Number |
23500916
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
長嶋 直子 和洋女子大学, 生活科学系, 助教 (30459599)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ウォッシャブルウール / ハロゲンフリープロセス / 防縮加工 / 羊毛 / 酵素処理 / 酵素 / フエルト収縮 / 天然由来樹脂 |
Research Abstract |
本研究では、羊毛のケラチン質に選択的に作用すると期待される新規ケラチナーゼ酵素と天然由来樹脂のセラックを用いて、環境に調和したウォッシャブルウールの開発を計画した。酵素処理によって羊毛の柔らかい風合いが増すという長所を活かし、かつ実用上必要な寸法変化率5%以下の防縮性と十分な強度を得るための処理条件を確立する。とくに、強度に関係する羊毛繊維内部コルテックス層に影響をおよぼさずに表面スケール層のみを処理するため、スケール間を接着している細胞膜複合体(CMC)をセラックで封鎖した状態で酵素処理する方法を試みた。 酵素として新規開発のNocardiopsis sp.由来のケラチン分解酵素(ビオソークK)を用いた。汎用性の高いメリノ羊毛スライバーを用いた。水およびアルコール類へのセラックの溶解性を検討し、最適溶媒としてメタノールを選んだ。セラックのメタノール溶液中で前処理し、さらにビオソークを用いて酵素処理を行った。防縮性を調べるために、IWTO-20-69(E)法すなわちAachen Felting Testに準拠するため、温度可変で3次元方向での回転が可能な試験機として、科学研究費助成事業で購入したラボ用染色試験機を用いて評価を行った。その結果、未処理<セラック単独処理<酵素単独処理≦セラック/酵素処理の順に防縮性が向上した。防縮性としては酵素単独処理とセラック/酵素処理羊毛は同程度であることがわかり、その重量変化、強度、洗濯耐久性について検討を進めている。 セラック単独処理においてもかなりの防縮性が得られたことから、セラックがクチクル細胞接合域に沈着して防縮性が発現している可能性が考えられ、酵素の接合域への浸透挙動を、セラックおよびケラチナーゼの処理濃度、温度、時間、かくはん条件等を詳細に変化させて検討を進めており、最適なセラック前処理条件を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)で購入したラボ用染色試験機によって、スライバーを用いてセラック、セラック/酵素処理による防縮性を評価する方法を確立できた。また、セラックおよび酵素処理に必要な試薬、ガラス機器等消耗品も十分に購入することができ、実験を計画的に進めることができた。 したがって今後の最適な処理条件を検討するための方策ができ、おおむね初期の計画にそって進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続き、最適なセラック前処理条件を検討・確立し、その成果を織物に応用展開する。防縮性発現とセラックおよびセラック/酵素処理後の物性変化との関連を解明していく。 さらに、消費科学的性能について、JIS L 0217およびL 1096の試験方法等に準拠して寸法変化率を求め、基礎的データを集積する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「収支状況報告書」の「次年度使用額」が生じた状況としては、各種処理に必要な試薬や器具等の消耗品費を当初予定よりも抑えることができたためである。次年度以降に請求する研究費と合わせ次のように研究費の使用を計画している。 まず、平成23年度に引き続き、最適なセラック前処理条件を検討・確立し、羊毛織物へ展開するため、消耗品として、試料(羊毛織物 JIS L 0803規定添付白布等)、試薬(メタノール、酢酸ナトリウム等)、ガラス器具(マイヤー等)を購入する。また、セラック/酵素処理羊毛の防縮発現機構を解析するために、外部機関の解放機器を使用して、処理後の試料について形態学的観察および物性変化の測定を行う予定であり、その際の測定機器使用料として研究費を使用する。さらに、繊維関連の学会において開催される研究発表会に出席し、研究の成果を公表する予定であり、その旅費として使用する。
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