2011 Fiscal Year Research-status Report
水/エタノールを洗浄溶媒とする環境適合型ドライクリーニングシステムの構築
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23500917
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
米山 雄二 文化学園大学, 服装学部, 教授 (30556163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / エタノール / ドライクリーニング / 洗浄 |
Research Abstract |
本研究はドライクリーニング業界において熱望されている人体・環境に安全・安心なドライクリーニング溶剤を用いた洗浄方法として、水/エタノール混合溶媒を使用した新しい洗浄技術の提案を目指すものである。本研究の目的を達成するための課題は、水/エタノール溶媒を用いて洗浄すると発生する布収縮・変形の程度を把握し、これの解決策を確立することにある。本研究の初年度(平成23年度)は、毛織物の洗浄における収縮・変形と水の影響について基礎データ把握および基礎解析に視点を置き、以下に示す項目1~3を検討するとともに、項目4の収縮抑制のための繊維表面処理剤および溶媒のエタノールについて情報収集を行った。(1)現状のドライクリーニングでの布収縮を把握するため、石油系ドライクリーニング溶剤への水添加と布収縮の関係を、JIS L-1042およびL-1096試験法に準拠し、素材の異なる8種類の布を用いて検討した。(2)ウールスーツ素材について、4種(ジョゼット、フラノ、ギャバジン、ウール)の生地を用い、水/エタノール溶媒による洗浄試験をJIS L-1042およびL-1096試験法に準拠して行い、布収縮及び布表面のダメージを検討した。(3)水/エタノール溶媒を用いた洗浄で発生した収縮・変形を回復する方策として、潤滑効果に優れるシリコーンの活用に着目し、水/エタノール溶媒に溶解可能であり、毛繊維への滑り性の良好なシリコーンの探索を行った。(4)繊維処理剤メーカの一方社油脂工業株式会社の本社、工場、研究所を訪問し、繊維の表面処理剤の種類と最新の技術について情報収集を行った。また、宝酒造株式会社の本社および工場を訪問し、醸造エタノールの製造・蒸留方法、世界のエタノール供給事情について情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の石油系ドライクリーニング溶剤における布収縮を、水添加量を変化させて詳細に検討した。その結果、布収縮は溶剤中に可溶化したわずかな水量によって発生し、水添加量の増加にしたがって収縮率は増加することがわかった。水の可溶化限界量である2%であっても布収縮の値は大きく、一般に布収縮率の許容値が2%と考えられており、水添加量2%における布収縮は許容の限界を超えることがわかった。一方、水だけで洗浄した場合での布収縮の値を把握し、水/エタノール溶媒のように水が多く存在する場合には、布収縮は飽和に達していることがわかった。 ウールスーツの実衣料を用いた試験の前に、ウールスーツ素材の生地を用いて収縮率を測定し、水/エタノール溶媒での収縮率を検討した。JIS試験法に準拠して、ウールスーツ生地4種類(ウールジョゼット、フラノ、ギャバジン、ウール)の収縮試験を試みた結果、水が多量に存在する水/エタノール溶媒での収縮率は、3~4%であることが判明した。さらに洗浄時の機械力の影響について調べた結果、機械力を極力少なくすることで、収縮率は1~3%に小さくなることが分かった。 布収縮を許容値2%に抑えるには、収縮を回復する添加剤として滑り性を有するシリコーンに着目し、水/エタノールに溶解可能なシリコーンの探索を実施した。その結果、水/エタノール溶媒に溶解可能なシリコーンを見出すことができた。以上の検討により、毛織物の収縮に関する基礎データ把握および基礎解析ができ、ウールスーツなど実衣料とクリーニング実機を用いた収縮試験の実施に向けて、試験条件の設定ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究で得た知見を踏まえて、平成24年度はドライクリーニング工場の協力を得て、実際のクリーニング装置を使用し、市販のウールスーツを水/エタノール溶剤で洗浄し、実衣料におけるスーツの収縮変形の発生度合いを洗浄・乾燥・アイロン仕上げの工程毎に詳細に観察および寸法測定して把握する。加えて収縮抑制剤としてのシリコーンの添加効果を試験し、その結果から、水/エタノール溶剤のドライクリーニングに適する洗剤組成に関して、以下の条件、(1)毛織物に付着した汚れを除去できる基本洗浄力を備わっていること、(2)シリコーンが毛織物に吸着する現象を阻害しない界面活性剤の選定と量の設定されていること、(3)水/エタノール混合溶媒への溶解性が良好であること、(4)実際のドライクリーニングの工程に適合して目的の収縮・変形が従来のドライクリーニングと同程度であること、を満たす洗剤組成の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の第一段階として、現状の石油系ドライクリーニングにおける布収縮を把握することを目的に検討した結果、わずかな水量が存在するだけで布収縮が発生することが分かり、水2%の存在で収縮率が通常の許容範囲を超えることが判明した。本研究で試験する水/エタノール溶媒では、水を多量に含むため布収縮が許容値以上になることが想定された。そこで、平成23年度に実施する予定であったウールスーツ実衣料を用いた実機クリーニング試験を延期し、ウールスーツ生地4種を用いた収縮試験を行い、収縮に関する基礎データの充実を図った。そのため、収縮試験用のウールスーツ実衣料の購入費用分(初年度計画60万円)を次年度に使用する計画とした。本年度の研究費の使用計画は以下のとおり。1.クリーニング実装置・実衣料を使用した試験における、試験用ウールスーツの購入 およびクリーニング費用2.研究成果を学会発表するための学会参加費用および旅費(日本繊維製品消費科学会主催 年次年会:6月、日本油化学会・洗浄洗剤部会主催 洗浄に関するシンポジウム:11月)。学会誌への投稿掲載料(日本繊維製品消費科学会:10月)3.各種毛織物試験布へのシリコーンの付着を界面活性剤など洗剤成分の共存下で行うため、速度可変の撹拌機と温度制御可能な加熱用マントルヒーターの購入費用4.試料・試薬購入費用
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