2012 Fiscal Year Research-status Report
水/エタノールを洗浄溶媒とする環境適合型ドライクリーニングシステムの構築
Project/Area Number |
23500917
|
Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
米山 雄二 文化学園大学, 服装学部, 教授 (30556163)
|
Keywords | エタノール / ドライクリーニング / 洗浄 |
Research Abstract |
本研究はドライクリーニング業界において熱望されている人体・環境に安全・安心なドライクリーニング溶剤を用いた洗浄方法として、水/エタノール混合溶媒を使用した新しい洗浄技術の提案を目指すものである。本研究の目的を達成するための課題は、水/エタノール溶媒を用いて洗浄すると発生する収縮・変形の程度を把握し、その解決策を確立し、また洗浄廃液の再生利用の技術を確立することにある。本研究の当該年度(平成24年度)は、実衣料を用いた収縮試験を行い、その防止策としてシリコーン添加効果の検討、そしてクリーニングによる洗浄廃液の再生処理の検討を行った。 1.ウールスーツ実衣料を使用し、クリーニング業者の協力を得て、実装置を用いて水/エタノール混合溶媒を用いた洗浄試験を実施した。水/エタノール溶媒を用いたクリーニングにおいて実衣料の収縮・変形の程度を把握した。 2.水/エタノール溶媒での洗浄で発生した収縮・変形を回復する目的で、水/エタノールに溶解可能で潤滑性を有するシリコーンを探索し、候補素材を見出した。この素材の効果をウールスーツ実衣料およびクリーニング実装置を用いて確認した。 3.エタノール使用だけでなく、さらに環境配慮型のクリーニング技術を目指して、水/エタノール溶媒を用いたクリーニングで発生する洗浄廃液を浄化し、溶剤を繰り返し使用することを検討した。洗濯廃液を想定したモデル汚れを用い、水/エタノール溶媒での活性炭による吸着試験を行った結果、汚れの吸着除去が可能であるとの見通しを得た。 4.これまでの研究で得た知見として、各種布類に対するドライクリーニングの水添加の影響、およびウールスーツ素材における収縮・変形について学会発表2件を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで2年間の研究において、まず平成23年度の目標は、水/エタノール溶媒を用いた洗浄における布収縮の程度を把握することであった。これに対し、衣類に用いられる8種類の布(綿、毛、ポリエステル、ナイロン、絹2種、キュプラ、レーヨン)を用いてドライクリーニング溶剤中の水の存在が、布収縮に与える影響を詳細に検討した。現在使用されているドライクリーニング用の石油溶剤に水を少量可溶化させ、ごくわずかな水分の存在下において、各種布の収縮・変形を把握した。ドライクリーニング溶剤に対する水の可溶化限界量の2%でも布収縮は大きく発生し、水/エタノール溶媒のように水が多く存在する場合には、布収縮はほぼ飽和に達していることが判明した。また、ドライクリーニングの洗浄対象であるスーツ用ウール素材(4種)に注目し、収縮試験を行ってその収縮実態ならびにその要因について機械力を検討した結果、水/エタノール溶媒での収縮率は3~4%であり、その収縮率は洗浄時の機械力に影響し、機械力を抑えることで1~3%の収縮率に低下することが分かった。このように、水/エタノール溶媒による布収縮の基礎情報を把握することができた。 2年目の平成24年度は、前年度の基礎情報をもとにウールスーツの実衣料およびクリーニング実装置を用いた実用試験において収縮・変形を把握することであった。これに対し、実衣料および実装置による試験を行った結果、水/エタノール溶媒を用いたクリーニングにおいて発生する収縮はほぼ飽和状態であり、収縮が発生するものの、アイロン仕上げ工程によってその収縮変形は回復できることがわかった。収縮変形を更に抑えるには低機械力の条件化で、かつシリコーン潤滑剤を用いた洗浄が有効であることがわかった。 以上、水/エタノール溶媒をドライクリーニングに使用することの可能性が把握でき、目標を達成できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23~24年度の研究から水/エタノール溶媒を用いたドライクリーニングの可能性が把握できた。平成25年度は実用化に向けて、水/エタノール溶媒での洗浄適用範囲の汎用性について検討、および環境とコストに配慮して洗濯廃液の再生処理について検討を行い、具体的に以下の課題に取り組む。 1.最近のビジネススーツにおいて、水洗いが可能と表示されているウォッシャブルスーツが主流となっている。ウォッシャブルスーツは水洗い時の収縮処理として繊維間の接着加工またはウール表面の親水化処理が施されている。ウォッシャブルスーツの水に対する収縮変形を把握するとともに、水/エタノール溶媒による洗浄がウォッシャブルスーツの収縮防止加工に与える影響について把握し、本研究の技術の汎用性を明らかにする。 2.環境保全およびコストの観点から、洗浄廃液は一回の洗浄で廃棄されることなく、繰り返し使用されることが望ましい。このために洗浄廃液に含まれる汚れ成分を活性炭で吸着除去して水/エタノール溶媒を再生し、繰り返し洗浄に用いる再生技術について検討し、少なくとも5回の繰り返し再生利用が可能となる吸着除去技術の確立を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の初年度(平成23年度)に現状のドライクリーニングで使用されている石油系溶剤に1~2%のわずかな水量が存在するだけで布収縮が発生することがわかり、その値が許容量を超えることが判明した。このため2年目(平成24年度)はウールスーツ実衣料を用い、クリーニング実機による洗浄試験を行って、収縮の問題および解決方法についてについて重点的に検討した。この検討においてシリコーンによる収縮防止の効果が見られたことから、2年目に計画していた収縮防止剤シリコーンのウール試験布への吸着に及ぼす界面活性剤の影響の検討は問題ないと判断し、むしろ最近のスーツの動向から各種ウォッシャブルスーツへの影響を調べ、本技術の適用範囲を検討するほうが重要と判断した。従って、平成24年度の実験のために購入予定であった機器(可変速度攪拌機と加熱用機器)の購入費用は本年度のウォッシャブルスーツの購入に使用する計画とした。本年度は実用化への課題に対して、研究費の使用計画は以下のとおりである。 1.水洗い可能技術の異なるウォッシャブルスーツ(10着)の購入費用と、クリーニング実装置での洗浄試験の費用 2.クリーニング廃液中の汚れを活性炭で吸着して再生利用を検討するため、実装置を想定した連続吸着試験用の定量可変循環ポンプと吸着カラムの作成費用 3.収縮変形データおよび画像データ、連続吸着データ処理のためのPCおよびデータ保存装置の購入 4.研究成果を学会発表するための学会参加費用および旅費(日本繊維製品消費科学会:6月、日本油化学会年次大会:9月)。学会誌への論文投稿費用(材料技術研究協会:12月) 5.試料、試薬の購入費用
|
Research Products
(2 results)