2011 Fiscal Year Research-status Report
未利用生物資源から吸水性・抗菌性・生分解性に優れた紙おむつ素材をつくる
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23500922
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑原 順子 福岡工業大学, 工学部, 助教 (40289351)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コラーゲン / 吸水性 / 抗菌性 / 生分解性 / γ-PGA |
Research Abstract |
本研究の目的は、水産廃棄物由来コラーゲンを利用した抗菌性および生分解性を示す吸水性高分子材料の開発である。初年度は(1)水産加工残滓から抽出したコラーゲンへの架橋構造導入、γ-ポリグルタミン酸との共重合体合成を行った。そのため、まず水産加工廃棄物である鰹皮から酸抽出法によりコラーゲンを抽出し、透析による精製を行い、高純度の鰹皮由来コラーゲンを得た。得られたコラーゲンをSDS-PAGEにより確認を行ったところ、コラーゲン特有のα1, α2およびβ鎖をそれぞれ確認することができた。さらに化学的架橋化によってコラーゲンの変性温度を約10℃上昇することができた。その後、吸水性高分子であるγ-ポリグルタミン酸との共重合化を図り、線維化したコラーゲン-PGA共重合体を得た。この共重合体は自重の約4200倍の水を吸水し、また熱に対するゾルーゲル転移があることがわかった。熱応答性の機能性材料を構築することができた。現在は、目的(2)の「抗菌性付与のためEDTA類あるいはアルギニンジペプチド等を導入する」ために、導入方法および導入化合物、評価法を検討中である。より広い抗菌スペクトルを得るために、少量のサンプルで抗菌活性が測定できないか評価法についても検討中である。また、生分解性実験については今回の化合物に適した方法で現在実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コラーゲンの収率は期待していたほど良くなかったが、コラーゲンにγ-ポリグルタミン酸を導入したことによって吸水性、熱応答性など様々な機能性を付与することができた。また、電離線放射による物理的架橋を行う予定であったが、研究協力者の所属移動などあり平成23年度は達成できなかった。現段階では概ね計画通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)コラーゲン-γ-PGAの共重合体にさらに抗菌効果の高い官能基や化合物群を導入する。たとえば、緑膿菌に対して抗菌力を示すEDTA、あるいは第四級アンモニウム基、アルギニンジペプチド等の導入を試みる。(2)緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、カビ、酵母などより多くの生物種に対する抗菌活性試験を実施する。より迅速かつ簡便に抗菌活性評価が可能なシステムを構築するために、H23年度に購入した分子間相互作用評価装置を使用した評価を試みる。この手法は、Au表面に固定化した自己組織化単分子膜(SAM: Self-Assembled Monolayer)の末端に種々の抗菌活性のある官能基、ジペプチド等を固定化し、ダイレクトインジェクション法により微生物培養溶液のインジェクト前後の表面プラズモン共鳴のシグナル強度から相互作用強度を比較する予定である。これまでの抗菌活性評価ではグラムスケールのサンプル量が必要であったが、今回の評価法を用いればマイクログラムスケールで評価可能となるため、迅速、簡便化が期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画は、抗菌活性を示す官能基の導入や、ジペプチドの合成などH24年度も化学合成実験が続くことから、予算のほぼ全てを実験用の試薬およびガラス器具として使用する予定である。なお、平成23年度はほとんどの研究費を使用し終えているが、物品の予定見積額と実際の請求額との違いにより若干の未使用額が発生している。平成24年度の研究では、未使用額を含め、上記の使用を計画している。
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