2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500925
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
香西 みどり お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10262354)
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Keywords | 大麦 / 還元糖 / 酵素 / 温度履歴 / 米 |
Research Abstract |
大麦100%飯の成分に及ぼす炊飯温度履歴の影響を調べるために炊飯過程の昇温速度を変化させ、沸騰まで11分間(標準)、45分間、炊飯途中で40℃、60℃、80℃を15分間保持後に通常炊飯を行い、飯抽出液を終濃度50%のエタノールで抽出し、糖、アミノ酸の定量を行った。その結果、昇温速度を遅くしたり、60℃を保持すると還元糖、遊離糖が増加した。リン酸バッファーで粗酵素液を調製し、可溶性デンプン、大麦デンプン、米デンプンを基質として大麦内在性酵素の温度依存性を調べるたところ、還元糖および遊離糖の生成量から50℃および60℃付近が酵素活性がもっとも高いことを示した。大麦、米の粗酵素液を混合して行った混炊モデル実験により、単独の粗酵素液活性に基づく計算値よりも、混合したときの実測値のほうが還元糖、グルコース生成量は多くなり、酵素の相互作用があることが示唆された。大麦の割合を40%とする混炊飯および米、大麦の単独炊飯の物性をテクスチャーアナライザーにより測定した結果、米に比べて大麦の飯は有意に硬くて、粘らないことが明であり、混炊しても麦飯全体の粘りはこの傾向がは変わらず、大麦の割合が高いほどその傾向は強くなった。大麦が全体の40%とする米と麦の混炊飯は大麦単独炊飯飯のときより還元糖、特にグルコースが増える傾向にあった。これは大麦と米の混炊により大麦のαアミラーゼ―やβアミラーゼなどの酵素が米デンプンに作用することで、間接的に米のグルコシダーゼの働きを促進していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大麦の炊飯及び吸水特性を把握する目的で大麦を炊飯するときの温度履歴を変えて糖などを測定する実験を行うことで、酵素作用が働く時間を長くすると飯中の糖が増えることを明らかにした。このことは大麦単独炊飯および米と大麦の混炊において温度履歴の工夫により糖含量の多い飯を調製することが可能であることを示した。また大麦内在性酵素の温度依存性を調べたところ、50℃、60℃に至適温度があり、炊飯温度履歴をこれを加味することが可能であった。大麦40%の米との混炊ではそれぞれの単独炊飯から計算される値よりも還元糖やグルコースの量が多い実測値が得られたことから、それぞれの酵素が互いに相互作用をもたらして混炊の効果をもたらしていることが示唆された。混炊飯の物性は大麦単独炊飯のものよりも大きく変わることはなく、大麦が硬くて粘らない傾向はそのまま混炊飯にも移行された。米と大麦の混炊効果は物性よりも糖という成分に現れることが示された。大麦と米との混炊において大麦の割合が少ない場合は比較的好まれ、大麦40%においても受け入れられることが示唆された。以上より、当該年度の研究成果はおおむね目的を達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
大麦と米との混炊による効果を探るために、糖などの成分の測定に加えて、米粒と大麦の吸水過程の観察を行い、単独炊飯に比べて混炊時の吸水特性がどのようなものか、また炊飯条件の設定にどうように有用な情報となるかをNMRイメージングを用いて検討を行う。また大麦と米との混炊飯を官能評価にかけ、混炊飯の嗜好特性を明らかにする。大麦と米との混炊飯の成分に及ぼす炊飯温度履歴を調べるために、一定の割合の大麦を米に加えて、種々の温度履歴で炊飯し、糖およびアミノ酸の定量を行い、混合飯の糖生成と酵素作用との関係を考察する。大麦および米のデンプン分解酵素により生成する糖のみかけの重合度等、分子サイズの検討を行う。さらに炊飯過程での粒内水分分布、温度履歴の異なる炊飯による糖の生成、飯の物性および嗜好性など大麦の炊飯に関する実験結果を総合的に勘案し、大麦と米との混炊における最適炊飯条件の提案を行う。吸水特性および内在性酵素活性の結果より温水浸漬による成分および物性改善の効果も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は最終年度となるため、これまでの実験結果の見直しも含め、炊飯による糖などの成分変化を炊飯温度履歴との関係で明らかにするため、成分分析ようの試薬やカラム、ガラス器具などの消耗品を購入する。また大麦および米内在性酵素の活性を測定するうえでも糖の測定が必要であり、糖の測定はHPLCによる方法とキット法による場合を行うのでそのための試薬、セットが必要で購入予定である。さらに官能評価により混炊飯の嗜好性を評価するので、官能評価用消耗品を購入する。これらのデータを処理し、まとめるためのソフトも必要に応じてバージョンアップする可能性もある。
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Research Products
(1 results)