2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500942
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
竹中 康之 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 准教授 (20273518)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゴマタンパク質 / エゴマタンパク質 |
Research Abstract |
油糧種子は、植物油の供給源であるが、その脱脂粕はタンパク質含量が高いにもかかわらず、食料素材とされずに肥料や飼料として利用されている。本研究は、油糧種子中の主要なタンパク質の特性を明らかにし、その利用法を提案することを目的としている。本年度はゴマ(ゴマ科)とエゴマ(シソ科)種子中のタンパク質について検討した。 ゴマタンパク質は、水に不溶で、高濃度塩溶液ではじめて溶解する。一方、ゴマタンパク質をプロテアーゼにより低分子化すると、水への溶解度が著しく増加することが知られている。そこで、数種類のプロテアーゼを用いてゴマタンパク質を分解し、中性付近で高い溶解度を示す分解条件を明らかにした。意外にも、このゴマタンパク質分解物を用いて酵母を培養すれば、生育促進、冷凍耐性付与されることを見出した。さらに、この酵母を用いて調製したパン生地は、冷凍後も良好な発酵力を示した。菌体中のアミノ酸組成が変化することを確認しており、この変化が冷凍耐性付与の原因であると考察している。 エゴマ種子中の主要タンパク質のサブユニット構成等について、申請者は既に明らかにしている。エゴマタンパク質の等電点を利用した、簡便で高収率の回収法を確立した。また、エゴマタンパク質の溶解性について明らかにした。エゴマタンパク質は、中性付近では水不溶性であり、高塩濃度溶液で可溶性となる。中性付近での溶解性を高めるには、プロテアーゼによる低分子化が有効であった。同時に、このエゴマタンパク質分解物は抗酸化活性やACE阻害活性などの生理活性を有することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
油糧種子中の主要なタンパク質の特性を明らかにし、その利用法を提案することを目的としている。 ゴマタンパク質分解物が、酵母の成長促進、冷凍耐性付与という、ユニークな生理活性を有することを見出した。ゴマタンパク質分解物の作用は、乳化作用、血圧低下作用が知られているのみである。今後、新たな作用の発見も期待できる。 エゴマタンパク質については、タンパク質科学的解析のみならず、利用法についても、研究者のグループ以外に報告がない。申請者は、エゴマタンパク質の利用に向け、簡便で高収率の回収方法を確立した。また、中性付近で水不溶性という欠点があったが、酵素処理を行った「タンパク質の断片化」による可溶化に成功した。予備実験では、エゴマタンパク質分解物が様々な生理作用を有していることが確認されているため、食品素材や添加物としての利用を探っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴマタンパク質分解物による、酵母への冷凍耐性付与活性について、その作用機構を明らかにする。酵母の冷凍耐性獲得については、細胞内成分の変動(プロリン、トレハロース、グリセロールなど)を原因とする例が報告されている。そこで、これらの因子について検討する。同時に、分解物に含まれる活性ペプチドそ単離・精製(逆相HPLC)し、そのアミノ酸配列を明らかにする。 エゴマタンパク質分解物の活性を明らかにする。現在見出しているものの他、物理・化学的特性(乳化性、気泡性、粘度調整、ゲル化性)、物理・化学的処理に対する耐性の付与、経時変化の抑制の検討(抗酸化性(酸化防止、退色防止)、熱安定性、保水・保油性)を検討する。また、in vitro 実験系を用いて生理活性(耐糖能改善作用、脂質代謝改善作用)を検討する。これらの活性を有することが明らかになれば、その活性の特徴に応じて食品への用途を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、食品学・生化学的な実験手法を用いるため、研究遂行に必要な研究費は物品費(実験試料、試薬、カラム、ガラス・プラスチック製品など)の費用が中心であり、委託分析(日本食品分析センターなど)費用を加え、157万円を計上している。なお、備品の購入計画はない。学会発表・情報収集のための旅費を15万円、人件費・謝金(外国語論文の校閲)を5万円、その他(研究成果投稿料)を10万円使用予定である。
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