2012 Fiscal Year Research-status Report
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23500942
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
竹中 康之 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (20273518)
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Keywords | ゴマタンパク質 / エゴマタンパク質 / 豆乳 |
Research Abstract |
油糧種子は、植物油の供給源であるが、その脱脂粕はタンパク質含量が高いにもかかわらず、食料素材とされずに肥料や飼料として利用されている。本研究は、油糧種子中の主要なタンパク質の特性を明らかにし、その利用法を提案することを目的としている。2011年度に引き続き、ゴマ(ゴマ科)、エゴマ(シソ科)種子中のタンパク質について検討した。また、豆腐製造の際に利用される、ダイズタンパク質の凝固剤による沈殿について解析を行い、凝固剤濃度と沈殿形成の関係を明らかにした。 (1) ゴマタンパク質を酵素分解すると、水への溶解性が大幅に改善された。ゴマタンパク質のサーモライシン分解物を培地に加えて酵母を培養すれば、酵母が冷凍耐性を獲得することを昨年見出した。この作用は、菌体内のプロリン濃度が増加することが原因であることを明らかにした。凍結保護物質として知られているトレハロースやグリセロールの細胞内濃度は増加していなかった。 (2) エゴマタンパク質も、ゴマタンパク質同様に、水に不溶性であり、プロテアーゼによる低分子化が、水への溶解度向上に有効であった。このエゴマタンパク質由来ペプチドは、優れた乳化性を示した。また、FRAP法、ABTS法などにより抗酸化能を測定したところ、エゴマペプチドは、エゴマタンパク質と比較して抗酸化能が著しく増加した。 (3) 豆乳に含まれるダイズタンパク質は、低濃度の凝固剤では滑らかな沈殿を、高濃度では目の粗い沈殿を形成することを見出した。また、この2つの沈殿は、沈殿形成における相互作用様式が大きく異なることを明らかにした(論文印刷中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
油糧種子中の主要なタンパク質の特性を明らかにし、その利用法を提案することを目的としている。 ゴマタンパク質分解物が、酵母の冷凍耐性付与という、ユニークな生理活性を有することを見出した。2012年度は、その作用機構について明らかにした。また、ゴマタンパク質が酵母の成長促進効果を有していることを確認しているが、乳酸菌やビフィズス菌への効果を検討している。 エゴマタンパク質については、簡便かつ高収率の回収方法を確立している。2012年度は、酵素処理による低分子化が溶解度の改善に対して有効であることを明らかにし、かつ優れた乳化性を示すことを明らかにした。このように、エゴマペプチドが食品物性を改良する機能素材としての可能性が明らかになりつつある。 一方、多様な生理作用の検討を計画していたが、解析できたのが、加工特性(特に乳化性)、微生物に対する作用にとどまり、三次機能(生体調節機能)に対する評価が行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴマ、エゴマペプチドの様々な生理機能を明らかにしつつあるが、そこに含まれる活性ペプチドを単離・精製(逆相HPLC)し、そのアミノ酸配列を明らかにする。 エゴマタンパク質分解物の新たな生理活性を明らかにする。現在見出しているものの他、物理・化学的特性(気泡性、粘度調整)、物理・化学的処理に対する耐性の付与、経時変化の抑制の検討(抗酸化性(酸化防止、退色防止)、熱安定性、保水・保油性 )を検討する。また、in vitro 実験系を用いて生理活性(耐糖能改善作用、脂質代謝改善作用)を検討する。これらの活性を有することが明らかになれば、その活性の特徴に応じて食品への用途を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、食品学・生化学的な実験手法を用いるため、研究遂行に必要な研究費は物品費(実験試料、試薬、カラム、ガラス・プ ラスチック製品など)の費用が中心であり、委託分析(日本食品分析センターなど)や委託合成の費用を加え、209万円を計上している。想定している委託分析の内訳は、アミノ酸分析、ペプチド配列解析、電子顕微鏡観察などである。また、委託合成は、ペプチドの予定である。なお、備品の購入計画はない。学会発表・情報収集のための旅費を30万円、人件費・謝金(外国語論文の校閲)を15万円、その他(研究成果投 稿料)を15万円使用予定である。
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