2011 Fiscal Year Research-status Report
健康生成モデルにもとづいた食嗜好と偏食の機序に関する研究
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23500945
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 佳子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (30435052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 誠 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40203393)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 偏食 / 食嗜好 / HR-QOL / 健康生成論 |
Research Abstract |
平成23年度の目的は、健康生成モデルに基づいて、食の嗜好モデルをたてモデルの検討を進め、偏食の改善に有効な知見を得ることである。 本研究を計画するにあたって、味覚感受性と食嗜好との関連性について検討したが、これまでの研究から味覚感受性が優れている者は、嫌いな食べ物が多いことが報告されている。この点について、亜鉛を多く含む食品に対する嗜好や摂取頻度との関連性も含めて調査したデータを再検討し、国際誌に発表した。この研究は、生活科学と心理学を融合させた独創的な研究として評価されInternational Council of Psychologistsから賞を受けた。 さらに、この研究では味覚感受性が優れていても多様な味を受け入れることができる者がいることに注目し、次のような仮説をたてた。つまり、味覚感受性が優れていても食べ物に対する感情を調節することができれば、多様な味を受容することができると考えた。健康生成モデルではこのように、感情を調節しストレス(刺激)を軽減する内的要因と外的要因を想定している。 当該年度ではこれらの内的要因や外的要因、食嗜好(偏食)、味覚感受性を質問紙調査で測定する尺度の検討を主に行った。具体的には、大学生10名を対象に食嗜好(偏食)に関するインタビュー調査を行った。そして、偏食は合理的行為理論によって説明できると考察している。現在、インタビュー調査から抽出された項目を質問項目として、食嗜好を測定する尺度を開発中である。 また、食に対する感情の調節について明らかにすることは、食嗜好を制御する上で重要な要因であると考えている。そこで、感情調節にかかわる内的要因と外的要因について検討するために、健康な食生活を送ることに対する動機づけを取り上げ検討した。そして、その結果を国際学会で発表、現在国際誌および国内誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食嗜好モデルの中で特に検討が必要であると考えた感情調節要因について、より詳細に検討を行うことができた。また、平成24年度実施予定の官能評価に関する予備調査も多少実施することができた。しかし、当初計画していた質問紙調査の実施がやや遅れている。これらのことを考慮すると、研究全体としてはおおむね順調に進展している。 具体的には、味覚感受性と食嗜好の関係性については、これまで検討してきたことを論文にまとめ、一定の成果として発表できた。 また、食べ物に対する感情の調節を反映する要因として、健康な食生活を送る動機づけを想定し検討した。つまり、健康な食生活を送ることを楽しみ、そうすることに対する自己決定の程度が高いことを食物に対する感情の調節が図られている状態であるととらえた。そして、内発的な動機づけや自己決定の程度を高める要因を複数仮定し検討した。その結果の一部は、国際学会や国内外の学会誌に投稿しており、平成24年度も引き続き、その内容を発表し社会に研究成果を還元する予定である。 食嗜好や偏食を中心に据えた調査に関しては、インタビューによる質的調査が終了しており、モデルを支持する一定の結果が得られた。この結果は、平成24年度の健康心理学会で発表する予定で手続きが進んでいる。そして、現在得られた結果をより一般化するための手続きとして、大学生約600名を対象とした質問紙調査に取り掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定より多くの調査対象者からデータを得ているので、効率的に人員を動員してデーター整理を進めたい。そして、得られた結果を学会や学術雑誌に発表していきたい。 また、研究計画では質問紙調査に加え、官能評価および生理的指標の測定を計画している。官能評価については、検査実施の準備が整いつつある。年度後半からは、官能評価の予備調査および質問紙調査の結果を統合させ、味覚感受性、食に対する感情調整要因および食嗜好との関連性について検討したい。 そして、平成24年度は生理的指標の測定を測定する予定なので、被験者に具体的に試食してもらう食材など、実験材料等の具体的な検討を共同研究者とともに進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属大学を異動したために、官能評価のために器具等をそろえる必要が生じた。そのため、当面計画していたSPSSの購入とバージョンアップを見合わせた。本年度は、大量データの分析を行うので、さらに予算の効率化を図りSPSSを購入し効率的に分析を行いたい。
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Research Products
(3 results)