2012 Fiscal Year Research-status Report
米粉澱粉の改質による吸水性制御技術の開発と利用特性の解明
Project/Area Number |
23500948
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
松木 順子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品素材科学研究領域, 主任研究員 (10353955)
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Keywords | 米粉 / 吸水特性 / 澱粉結晶性 |
Research Abstract |
本研究では、澱粉結晶性が米粉の吸水性に及ぼす影響を解析し、米粉の吸水特性の決定要因を解明することにより、米粉用途開発の加速につなげることを目的としている。本年度は、昨年に引き続き米粒へのアニーリングおよび湿熱処理を行った後に米粉を調製し、澱粉結晶性の制御を試みた。 DSC糊化特性の評価から、いずれの処理においても処理温度が高いほど糊化温度は高くなり、アニーリングでは糊化開始温度よりも5℃低い60℃で処理したとき、湿熱処理では120℃で処理したときに糊化温度が最大となり、結晶の強度が向上することが判明した。その一方で、糊化エンタルピーは処理温度が高いほど減少しており、結晶化度が低下していることから、部分的に糊化が進行している可能性が示唆された。湿熱処理後には、DSC測定において110℃付近にピークが観察された。これは未処理米粉には観察されないピークであり、アミロース脂質複合体由来である可能性がある。 次に、これらの米粉について、吸水特性、損傷澱粉含量、粒度分布の評価を行った。吸水量は処理温度によって異なり、アニーリングでは40℃、湿熱処理では80℃で処理したときの吸水量が最小となった。吸水速度は湿熱処理では100℃で処理したときが最も遅く、アニーリング温度が高いほど遅くなる傾向が認められた。損傷澱粉含量は吸水量と高い相関が認められた。粒度分布はアニーリングと湿熱処理では異なるパターンを示し、処理により米粒の崩れやすさが異なることが示唆された。 これまで吸水速度は全吸水量の半量を吸水するのに必要な時間すなわち半吸水時間を目安としていたが、損傷澱粉含量が高いときには米粉が膨潤して水路をふさぎ、吸水が進まなくなることから、半吸水時間では評価が困難な部分があった。そこで、吸水速度の目安として、初速度を用いた評価を検討したところ、1/初速度と糊化エンタルピーに高い相関が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画では、結晶性の向上した米粉の調製方法を確立する予定になっているが、十分に絞り込めておらず、この部分については計画からやや遅れている。一方、米粉試料の物理特性の解析については吸水速度、アミロース脂質複合体などの影響についての知見が得られており、概ね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、米粉の調製方法の絞り込みを加速し、迅速に結晶性の向上した米粉の調製方法を確立し、加工適性の評価を行う。澱粉の結晶性に及ぼすアミロース脂質複合体の影響を明らかにするために、アミロース含量の異なる米を利用した検討を行い、澱粉の結晶性と米粉の吸水特性との関連性の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画通りに使用する。本年度は、研究費を効率的に使用したため、昨年度の残額とほぼ同額の547,111円の残額が生じた。残額については、米粉の調製方法の確立が見込め次第、必要な装置を購入する他、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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Research Products
(4 results)