2011 Fiscal Year Research-status Report
学校における子どもの情緒的安定を目指した食生活教育プログラムの開発に関する研究
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23500950
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
新井 猛浩 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (80292407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠本 健二 山形大学, 教育文化学部, 講師 (90398008)
大村 一史 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (90431634)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 生活リズム / 食生活 / 朝食 / 衝動性傾向 |
Research Abstract |
近年、自分の感情を適切に抑えきれず、突発的で衝動的な行動に出てしまう子どもが増加している。その原因の一つとして家庭生活から生じる様々なストレス要因が考えられるが、中でも親の養育態度が大きく影響する「食生活」に起因している場合が少なくない。本研究では、児童生徒の食生活を社会行動的な側面と栄養学的な側面の両方から捉え、子どもの情緒的安定を目指した学校における食生活教育による支援方法のあり方を食行動(栄養)-社会行動的なアプローチから検討し、食生活教育プログラムの開発を行い、心身ともに健康になるための環境づくりについて検討することを目的とした。 まず、パイロット研究として大学生を対象とした食生活や生活リズムと行動特性との関連に関する検討を行い、次いで子どもに適用する食行動質問紙および衝動性質問紙の作成を試みている。大学生の生活リズムや食生活と衝動性傾向との関連をみると、睡眠のとり方や質に影響するような生活リズムの乱れが情緒的不安定の原因となっていることが予想され、今後これらの因果関係を詳細に検討することが重要であろう。食生活については、朝食の摂食状況や1日にとる食事の回数と衝動性傾向とに関連が認められた。朝食を毎日食べることは規則正しい生活リズムの形成につながり、栄養素の供給という点も含めて、青少年の情緒的安定のために大切なものであろう。 一般的に衝動性は過食などの行動の原因と捉えるような因果の方向を論じることが多いが、今回行った因果モデルの検討から、食生活や生活習慣が間接的に情緒的不安定の要因になっていることも十分考えられる。朝食を毎日食べることを中心に朝の時間を健康的に過ごすことは、体内で規則正しい生活リズムを形成し、それが衝動性傾向を抑えることにもつながる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、食生活に起因するストレス要因が子どもの衝動性と関連し突発的・衝動的行動につながりやすくなっているとの仮説に立っている。そこで、食生活や生活リズムと衝動性傾向との関連を探り、その影響関係を把握することが本研究の出発点と認識している。子どもを対象とした食生活や衝動性傾向に関する調査を実施する前に、大学生を対象とした調査研究を進め、これらの因果関係を含めた関連性を確認することが必要であり、現在までに実施した調査において、おおよそ期待されるような関連性が認められているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の趣旨に賛同していただいた児童生徒の保護者(約200組)を対象に、アンケート調査を行い、子どもに適用する食行動質問紙および衝動性質問紙の作成を試みる。食行動質問紙では、研究協力者の食生活(朝食摂取を中心に)の実態について明らかにする。また、児童生徒の一般的な衝動性傾向を検討するために、児童生徒とその保護者(約200組)、および担任教員を対象として、質問紙法による行動特性の調査を行う。 食事栄養調査と予備調査により作成された食行動質問紙および衝動性質問紙を用いた児童生徒の食行動と衝動性行動の調査を本格的に始動させていく。山形県内の小・中学校と連携し、児童生徒とその保護者(約300組:小学校150組、中学校150組)を対象に調査を行う。これらの結果を基にして、栄養-社会行動アプローチによる児童生徒の食行動・衝動性行動の調査および食生活教育プログラムを作成していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
異なる食文化、風土の中で育つ子どもたちを調査し比較検討することで、より食事のもつ「こころの糧」ともいうべき機能が明らかになるのではないかと考えた。そこで九州地方で同様の研究を実施できないかを検討するための調査費として活用する。
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