2011 Fiscal Year Research-status Report
食物繊維の生体内での役割ー生活習慣病予防の観点から
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23500951
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
南 道子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70272432)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | DNAマイクロアレイ / 食物繊維 / 遺伝子発現 / 生活習慣病 / 腸内細菌叢 |
Research Abstract |
23年度はセルロース添加飼料によるラットの肝臓の遺伝子の変化をDNAマイクロアレイの手法で確認し、合わせてPAI-1遺伝子に注目して研究を行う計画であった。ラットは一群7匹として2%セルロース、5%セルロース、10セルロースの添加量の餌を作成した。 2%セルロース添加群、5%セルロース添加群、10%セルロース添加群より各5個体の肝臓から抽出したRNAを用いて、それぞれをDNAマイクロアレイの試料として供した。DNAマイクロアレイは、GeneChip® Rat Genome 230 2.0 Array(Affymetrix)を用い、定法に従ってサンプル調製を行い、データを取得した。得られたデータ(CEL.ファイル)は、DFW(Distribution Free Weighted method)にて正規化し、Rank products法により2群間比較を実施した。Rank productsの結果、FDR
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の計画としてセルロースのラット餌への添加量を10%、5%。2%と変化させた餌で動物飼育を行い、肝臓からのDNA マイクロアレイをおこなう事であったが、その目的はほぼ達している。しかし、発現が増加している遺伝子群と減少している遺伝子群の中の個々の遺伝子の詳細な解析に着手できていない点があり、達成度は8割というところである。 大規模な疫学調査で食物繊維を多く摂っている人はそうでない人に比べ、血中のPA-1量が少ないという調査結果が報告されている。それをもとにラットの血中のPAI-1量を測定する計画であったが、今年度はラット血中のPAI-1タンパク質量が測定できていない点があるので、(1)にあるような計画以上に進展しているとはいえない。 ラットのPAI-1量の測定は、現在外注先としてはアメリカに送る方法があるが、一サンプルにつき8万円であり、21匹測定するには送料も含めて176万円もかかる。200万である本年の科研費をほとんど使用してしまうことになり、現実的ではないと考え、発売されているKitを用いて測定していたのであるが、上手くいっていない。 kitににある検量線はきちんと測定できているので、今回測定できなかった理由としては、ラットの血清および血漿の処理方法に何らかの問題点があると考えた。そこで、次年度は予備実験を行い、ラットの血清でPAI-1量が測定できてから正式な動物実験を行う事とする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はラットの解剖時に採取した肝臓以外の臓器からRNAを抽出して生活習慣病に関する遺伝子の発現量を検討する。食物繊維摂取で変動すると言われている血中PAI-1量の測定が上手く行っていないので、PAI-1を分泌する肝臓、脂肪細胞、血管内皮でのPAI-1遺伝子の発現を RTーPCR法を用いて検討したい。以前、予備実験ではウエスタンブロット分析で、肝臓のPAI-1タンパク質量には変化がなく、DNAマイクロアレイによる解析でも肝臓の PAI-1遺伝子発現はセルロース添加量によって差がなかった。40週令のラットの血管内皮の採取は難かったので、今年度はPAI-1遺伝子発現の差を、既に採取した脂肪細胞で検討する事とした. また、PAI-1遺伝子だけではなく、脂肪細胞から分泌される生活習慣病に関連する遺伝子であるアディポネクチンなどの遺伝子発現の変化についても測定したい。 問題点としてあげた、現在市販されているELISAのKitでのPAI-1タンパク質の検出ができていない事であるが、血漿や血清を採取する方法は、結果的に最後の動物の解剖が終了するまで室温に長く置くので、PAI-1タンパク質の分解が生じている可能性がある。そこで通常は室温放置である血清を氷上で作成することや、血液を採取した段階で凍結してELISA測定時に溶解して使用するなどの検討を行い、測定方法の確立をはかり今後の研究を進めたい。 また、食物繊維の添加で変動するといわれている腸内細菌の同定も行いたい。予備実験の少数のラットでの腸内細菌叢は2%食物繊維群と10%食物繊維群ではクラスターを形成する事が分かっている。現在、蛍光プライマーにより、従来のRFLP法を用いて腸内細菌の同定を行う事が可能になったので、今年度行った動物実験で、解剖時に採取しておいた盲腸内容物で、食物繊維の摂取量の違いによる腸内細菌の違いを更に詳しく解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はラットの飼育を行う事で、ラットの購入費(1匹5000~8000円を21匹~170,000円)、そのための飼料の購入が12.5Kgで約100,000円、ELISAのKitが1つあたり88000円(測定を検討するのに4枚、実際の測定には1枚必要)なので、計440,000円、RNA 抽出kit, 生活習慣病関連遺伝子のプライマーなど生化学試薬、分子生物学試薬に300,000円ほど使用する予定である。
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Research Products
(1 results)