2011 Fiscal Year Research-status Report
行動科学と発達段階を考慮した子どもの食育と教材開発に関する研究
Project/Area Number |
23500952
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
赤松 利恵 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (50376985)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 栄養教育 / 行動科学 / 発達段階 |
Research Abstract |
本研究では「栄養バランスの良い食事を適量とる」をテーマに,これに関連する幼児期から学童期までの子どもの食に関わる問題(たとえば,偏食,好き嫌い,食べ残しなど)を扱い,3つのテーマに分けて研究を進めている.初年度である平成23年度の各研究実績は以下のとおりである. テーマ1:食事場面において幼児が食べたがらないときに母親がとる方法の研究.これまでの研究結果から,子どもの偏食に関する教材(パネルシアター「ほねくんとやさいスープ」)を,行動科学に基づきを開発した.平成23年度は,母親を対象にパネルシアターを含むプログラムを実施した.その結果,参加した母親を対象にアンケートを行った結果,「興味ある」,「わかりやすかった」教材の内容について肯定的な意見が得られた. テーマ2:小学校における給食の食べ残しに関する研究.平成22年度パイロット的に用いた学校給食の食べ残しに関する紙芝居教材を見直し,都内協力校において,対照群を設けた教育介入を行った.その結果,介入群において,10%有意確率で,残食率が有意に減少した.また,今年度は東京都の栄養教諭を対象に,紙芝居教材を用いた行動科学に基づいた食育の研修を行った.研修後の質問紙調査の結果,参加者の理解度,興味・関心,紙芝居教材を実践したいという意欲は高かった. テーマ3:発達段階を考慮した栄養に関する教育の研究.食物の栄養について教育することは重要であるが,発達段階を考慮した教育についての研究はされていない.平成23年度は栄養に関する教育の現状把握を行う目的で,東京都学校栄養職員を対象に,これまで行った栄養に関する教育を調査した.その結果,栄養に関する教育には三色食品群が最も用いられており,低学年においても実施されていることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それまで進めてきた研究を継続して行ってきたため,平成23年度は初年度であったが計画通り進めることができた.研究費をいただいたおかげで,教材を印刷することができ,現場の栄養士の先生方からの教材活用に対する調査も実施できた.
|
Strategy for Future Research Activity |
各研究テーマの今後の研究推進予定は以下のとおりである. テーマ1:食事場面において幼児が食べたがらないときに母親がとる方法の研究.平成23年度実施した実践の結果から,教材を見直し,教材を冊子の形にした.平成24年度はこれを用いて,幼稚園教諭,保育士,栄養士等を対象とした研修会を開催し,プログラムを普及させる予定である.プログラムを実施した実践者から実施報告書を回収し,プログラムに対する意見をまとめる.最終的には,プログラムは実施者向け解説書の他,教材,指導案などを含んだ食育キットとして仕上げる予定である.解説書にはこれまでの研究成果,教育効果の測定方法の解説も入れる. テーマ2:小学校における給食の食べ残しに関する研究.平成24年度は,平成23年度に実施した研修会に参加した栄養教諭が各学校で,紙芝居を用いた実践活動を行う予定である.実施した学校から,フィードバックをもらい,プログラムに対する意見をまとめる.本研究は,最終的に,学校給食の食べ残しを減らすための方策について総合的な手引書を作成することを目標としているため,対象を中・高学年まで広げ,発達段階を考慮した小学校での給食の食べ残しを減らすプログラムを検討始める. テーマ3:発達段階を考慮した栄養に関する教育の研究.平成23年度の調査結果から,栄養に関する教育では,3色食品群が学校現場ではよく使われていることがわかった.平成24年度は3色食品群の分類が妥当であるかを調べるため,献立表の分析を行う.3色食品群の妥当性が取れた後,各発達段階の子どもを対象に,3色食品群を用いて,栄養に関する教育を行う.本研究は,最終的に,栄養に関する教育について,発達段階を考慮した方法を提案することを目標にしている.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
テーマ1や2については,平成23年度までに行った研究を平成24年度,学会発表や論文発表を行う.旅費や英文校閲,論文投稿料はその経費である.平成24年度学会発表は,7月に米国ワシントンで開催されるSociety of Nutrition Education and Behavior(栄養教育に関する国際学会)で,小学校で実施した野菜に関する研究結果を報告する予定である.抄録はすでに採択されている.また,9月に名古屋で開催される日本栄養改善学会では,学校給食の食べ残しに関する研究および幼稚園児の偏食に関する研究を報告する予定である. テーマ3は,平成24年度,都内小学校に対し,献立表を含む学校給食のデータを郵送でやりとりする計画であり,通信費や消耗品,人件費等は,この調査で用いる予定である.謝金は研究に対して専門的知識を提供いただくため,また印刷費は,年度終了時に,報告書を作成するために計上した.
|
Research Products
(11 results)