2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500954
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境学部, 講師 (90198119)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 葉酸 / 脂質代謝 / 脂肪組織 / 高脂肪食 |
Research Abstract |
水溶性ビタミンの葉酸は、古くから抗貧血因子として知られているが、最近では動脈硬化症発症のリスクファクターであるホモシステイン代謝との関連が注目されている。我々は、ホモシステイン代謝に関わる酵素の遺伝子発現が、葉酸摂取によって調節を受けることを明らかにしているが、その研究過程のなかで葉酸が脂質代謝関連酵素の発現調節にも関与していることを見出した。さらに、葉酸欠乏モデル動物の肝臓を用いて、脂質代謝に関連する遺伝子発現が変動することを見出している。脂質代謝は、肝臓以外の臓器,特に白色脂肪組織および褐色脂肪組織との相互作用によって平衡が保たれていると考えられる。そこで、葉酸欠乏過程における白色および褐色脂肪組織における脂質代謝関連遺伝子の発現変動を検討し、肝臓での変化と比較した。脂肪酸のβ酸化に関与するカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI,脂肪酸合成系で働くリンゴ酸酵素や脂肪酸合成酵素などの発現が、肝臓と同様に、白色および褐色脂肪組織において減少した。不飽和脂肪酸合成に関わるステアリルCoAデサチュラーゼの発現は、葉酸欠乏により肝臓で減少したが、脂肪組織では増加していた。以上より、葉酸の欠乏によって、肝臓だけでなく脂肪組織においても脂質代謝が変化すること、その変化は組織によって異なることが明らかとなった。次に、高脂肪摂取に葉酸が欠乏した場合の、肝臓における脂質代謝関連遺伝子の発現変動を検討した。脂肪酸の分解系,合成系,輸送および取り込みに関わる遺伝子発現が、普通食摂取時に葉酸が欠乏した場合と同様に減少していたが、その程度は高脂肪摂取によって大きくなった。葉酸欠乏によって誘導される脂質代謝の変動が、高脂肪負荷によって増悪している可能性が示唆された
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、葉酸欠乏時における肝臓での脂質代謝関連遺伝子の発現が変動することを見出していたが、計画1年目では白色および褐色脂肪組織における脂質代謝関連遺伝子の発現変動と肝臓との違いを新たに見出すことができた。さらに、高脂肪摂取時に葉酸が欠乏した場合の肝臓での脂質代謝関連遺伝子の発現変動についても検討し、普通食摂取時に葉酸が欠乏した場合との違いを比較検討することができたので、研究計画は概ね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画2年目では、1年目に引き続き、高脂肪摂取時に葉酸が欠乏した場合の白色および褐色脂肪組織における脂質代謝関連遺伝子の発現変動を検討し、肝臓の場合と比較するとともに、普通食摂取時に葉酸が欠乏した場合との違いを比較検討する。さらに、葉酸代謝および脂質代謝の両方に関係するコリンにも注目し、葉酸欠乏時にコリンが欠乏した場合の脂質代謝の変動について、検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は全て消耗品費として使用し、動物実験関連消耗品や分子生物学実験用の試薬や消耗品の購入に主に充てる予定である。
|