2012 Fiscal Year Research-status Report
脳発育期及び加齢時の脳機能に及ぼすシアル酸の神経科学的解析
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23500963
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
横越 英彦 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70109320)
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Keywords | シアル酸 / N-アセチルノイラミン酸 / 記憶学習能 / DHA |
Research Abstract |
現在、「健康寿命」という言葉をよく耳にするように、ただ長く生きるのではなく、「健康」の状態でいかに長く生きられるかが重要である。そこで注目されるのが、「脳」の健康である。今回注目したのは、脳の主要な構成成分であるシアル酸(ガングリオシド)の栄養生理機能である。本研究課題では、このシアル酸に着目し、前年度はNANAが投与後どれくらいの時間で血中においてピークになるのか、またラット乳幼児期の投与によって脳内成分にどのような変化を及ぼすのか観察した。 本年度は、餌組成調整により、脳内DHA構成比がほぼ0%のDHA欠乏ラットを作成し、そのラットにNANAを添加することで、学習行動及び脳内NANA濃度変化を検討した。 DHA欠乏食を第1世代の母ラットに1か月摂取させた後、雄ラットと交配せて、DHA欠乏ラットを作成した。DHA欠乏ラットが離乳した生後2週目から1%NANAを含んだ水を2週間摂取させた後、脳内の神経伝達物質、NANAおよびDHA濃度を測定した。 DHA欠乏ラットでは、脳内のDHA濃度の減少が観察された。その一方で、NANA水摂取群ではNANA濃度の上昇が確認された。加えて、NANA水摂取により脳内ドーパミン、セロトニン濃度が脳のいくつかの部位で有意に増加した。 DHA欠乏ラットを用いた記憶学習行動試験については現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の所属機関移動による研究環境の立ち上げのために、多くの準備期間を要した。また、今年度の実験手法であるDHAラットの作成が難航したため、このラットを用いたNANAの影響の分析については現在分析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、前年度の目的でもあるDHA欠乏ラットを用い脳内成分に対する、NANAのもつ働きを行動試験によって解明の検討を完了する。さらに、BDNFやNGFのような神経成長因子なども検討する事で、DHAとNANAとの関係について解明を行っていくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
DHA、NANAはともにガングリオシドの構成成分であり、記憶学習に関係する点と共通点が多いことに着目し、その関係をつかむことを目的とし、次年度では、餌組成調整により、脳内DHA構成比がほぼ0%のDHA欠乏ラットを作成し、そのラットにNANAを添加することで、学習行動及び脳内NANA濃度変化を検討する。また、各実験において、シアリルラクトースとの比較検討を行う。 本年度は、研究代表者の所属機関移動により、行動解析実験装置の再設定を検討中である。したがって、行動解析実験にかかる消耗品を今年度の繰越金から購入し、行動解析実験環境を整えたのち、次年度の研究費を使用し、実験動物の購入、各種生化学的な測定試薬の購入を行い次年度の実験を遂行する。
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