2012 Fiscal Year Research-status Report
フェノール性化合物およびその亜硝酸との反応産物による澱粉消化抑制
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23500968
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
高浜 有明夫 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (30106273)
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Keywords | アズキ色素 / vignacyanidin / 澱粉 / アミラーゼ / 消化抑制 / 疎水的相互作用 |
Research Abstract |
酢酸エチルやジエチルエーテルに溶け、アミロースやアミロペクチンと結合する紫色の色素をアズキ種皮から単離し、この化合物の化学構造を決定した。その結果、この色素は、シアニジンと(+)-カテキンから構成されている分子量557.1の化合物であることが分かった。NMRのデータから、この色素では、シアニジンの5位の水酸基と(+)-カテキンの5位の水酸基とが脱水結合し、また、シアニジンの4位の炭素と(+)-カテキンの6位の炭素とが結合しているもことが分かった。この色素は現在まで報告されていなかったので、vignacyanidin(ビグナシアニジン)と名付けた。 この色素の安定性に対するpHの影響を調べたところ、通常のアントシアニンと異なり、中性およびアルカリpH域で安定であった。また、通常のアントシアニンのpH5付近でのモル吸光係数は酸性あるいは中性域でのモル吸光係数に比べて非常に小さいが、この化合物のpH5付近でのモル吸光係数はpH3および7とほぼ同じであった。また、ビグナシアニジンのモル吸光係数は澱粉と結合することによってが大きくなり、澱粉はpH2でビグナシアニジンと亜硝酸との反応性を高めた。他方、5microMビグナシアニジンはα-アミラーゼによる澱粉の消化を約50%抑制した。これら結果から、ビグナシアニジンは澱粉分子に疎水的に結合して、亜硝酸と反応し易くなると同時に、澱粉の消化を抑制できると推定した。 上のことを証明するために、疎水性が異なるケンフェロールとケルセチンの澱粉に対する結合性を比較した。その結果、ケンフェロールはケルセチンより澱粉と結合し易く、また、α-アミラーゼによる澱粉消化をケンフェロールは約50 microMで、ケルセチンは200 microMで50%抑制した。このことから、疎水性の高いポリフェノール類は、澱粉の消化を抑え易いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の大きな目標の一つは、アズキ種皮から紫色色素を単離してその化学構造を決定することであった。この目標は、単離した物質の構造決定ができたことで達成され、その色素は現在まで報告されていない色素であったことからvignacyanidinと名付けた。逆相高速液体クロマトグラフィーのデータから、ビグナシアニジン、ケンフェロールやおよびヶルセチン間の疎水性は次の順番で大きくなった:ケルセチン<ケンフェロール<ビグナシアニジン。また、α-アミラーゼによる澱粉消化阻害度はケルセチン<ケンフェロール<ビグナシアニジンの順で大きくなった。このことから、ポリフェノール類による澱粉の消化の抑制は、疎水性が大きくなるほど、より効率よくなることが分かった。このデータは、小腸での澱粉消化抑制にポリフェノール類を使用する場合、用いたポリフェノールが消化を効率よく抑制できるかどうかの目安として使用でき、血糖値の急激な上昇を抑制できる食生活の提案につながる。 また、上記のポリフェノール類は亜硝酸によって酸化され、その反応は澱粉によって促進された。反応産物の疎水性は、それぞれの元の化合物より小さかったことから、胃でそれぞれのポリフェノールが亜硝酸によって酸化された場合、腸での澱粉消化にに対する抑制効果は、元の化合物より小さいと推定された。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究から、アズキ種皮から単離したvignacyanidinは澱粉と結合すること、ポリフェノール類の澱粉との結合性は、その疎水的性質に依存することが分かった。今後の研究の一つは、アズキ種子を食品として用いた場合、ビグナシアニジンや他のポリフェノール類が調理過程でどのように変化していくかを調べることである。また、アズキの色素は、調理過程でアズキ澱粉や米澱粉等と結合できる。そこで、調理によって得られる澱粉/ポリフェノール複合体が、胃腔条件で亜硝酸とどのように反応をするかについても調べていく。また、調理で得られる澱粉/ポリフェノール複合体のα-アミラーゼによる消化についても調べていく。これらの結果に基づいて、赤飯や小豆あんの胃で亜硝酸との反応性やそれらに含まれている澱粉の腸での消化速度が予測できるようなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は調理に伴うアズキ成分の変化とアズキ成分/澱粉複合体と亜硝酸との反応について、まず、HPLCと分光光度計を用いて調べていく。そのために必要なカラムや有機溶媒の購入に研究費を充てる。また、アズキ成分/澱粉複合体のα-アミラーゼによる消化の測定に必要な試薬類の購入にも研究費を充てる。次年度は、食品の調理を伴う実験を行うので、調理に詳しい人に実験を手伝ってもらうために、研究費の一分を人件費に充てる。また、研究発表のための旅費としても研究費の一分を充てる。
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Research Products
(7 results)