2013 Fiscal Year Research-status Report
フェノール性化合物およびその亜硝酸との反応産物による澱粉消化抑制
Project/Area Number |
23500968
|
Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
高浜 有明夫 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (30106273)
|
Keywords | アズキ色素 / カテキン / クエルセチン / 亜硝酸 / 澱粉消化抑制 / 酸化還元 / ニトロソ化 |
Research Abstract |
今年度は、アズキ種子に含まれている(+)-カテキンとケルセチンおよびケルセチン7-グルコシドとの相互作用を調べた。(+)-カテキンは胃腔条件下で亜硝酸と反応して、6,8-ジニトロソカテキンとなり、更に、ジニトロソカテキンはキノン体に変化した。これらの化合物のαーアミラーゼによる澱粉消化に対する影響は時間の関係で検討できなかったが、ケルセチンは澱粉の消化を阻害した。また、ケルセチンは(+)-カテキン/亜硝酸系および6,8-ジニトロソカテキン/亜硝酸系で生成されるラジカルと反応して、6,8-ジニトロソカテキンおよびそのキノン体の生成を抑えた。この反応抑制に伴って、クエルセチンの亜硝酸による酸化は促進された。以上のことから、アズキに含まれているケルセチンは2つの機能を持っていることが明らかになった。すなわち、(1)澱粉と結合して小腸でのその消化の抑制と、(2)(+)-カテキン由来の6,8-ジニトロソカテキンのキノン体への酸化抑制である。キノン体は酸性条件では安定であるが、中性条件では、活性酸素を生成しながらポリマーを生成してので、生体に有害であることが知られている。クエルセチングルコシドもケルセチンと同様にキノン体形成を抑制し、抑制作用はケルセチン7-グルコシド>ケルセチン4’-グルコシド>クエルセチン3-ルチノシドの順であった。このことは、ケルセチンのC3-OHおよびB環が6,8-ジニトロソカテキンのキノン体形成抑制に重要な役割を持っていることを示している。今後、アズキ種子に含まれているケルセチン配糖体とカテキン類のニトロソ化物のαーアミラーゼによる澱粉消化に対する影響を調べていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アズキ種子から疎水性の高い赤紫色の今までに報告されていない色素を単離して、この色素をvignacyanidinと命名した。Vignacyanidinには二種類あり、その一つはアントシアニンであるシアニジンとカテキンの複合体であり、他はシアニジンとエピカテキンの複合体であった。この色素は澱粉と疎水的に結合し、その結果、α-アミラーゼによる澱粉消化を抑制することは昨年度に報告した。このことから、小腸での澱粉消化は、赤飯の方が白米より遅いと推定される。また、α-アミラーゼによる澱粉消化のフラボノイド類による抑制は、疎水性が強くなるほど大きくなることも分かった。 今年度は、アズキに含まれているカテキン類の亜硝酸との反応に対するクエルセチンおよびクエルセチン7-グルコサイドの影響を調べた。まず、カテキン類は亜硝酸と反応してジニトロソカテキンに変化した。この反応は、部分的にケルセチンおよびケルセチン7-グルコサイドによって部分的に抑制され、その抑制に伴って、クエルセチンおよびクエルセチン7-グルコサイドの酸化が促進された。ジニトロソカテキンは亜硝酸と反応し、その酸化産物であるキノン体であった。このキノン体の生成はケルセチンおよびケルセチン7-グルコサイドで効率よく抑制された。 以上の結果から、疎水性の高いフラボノイド類は、澱粉と結合してα-アミラーゼによる澱粉消化を抑えることが明らかになった。また、唾液中の亜硝酸塩濃度が高い条件では、カテキン類は胃腔でジニトロソカテキンのキノン体に変化できることが分かった。また、ケルセチン類は、ジニトロソカテキンのキノン体への酸化を抑え、カテキン類の有害作用抑制に関与できることも分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(+)-カテキンは胃腔条件で、唾液由来の亜硝酸によってニトロソ化された後、そのキノン体に変化することが昨年度の研究から明らかになった。このことは、他のカテキン類およびプロアントシアニジン類も唾液由来の亜硝酸によってニトロソ化されてそのキノン体に変化することを示唆している。一般的に、キノン体は中性条件下では反応性に富むため有害であると考えられているので、胃で生成したキノン体は腸および体内で種々の反応を行うと考えられる。カテキン類の多量摂取は、ヒトにとって有害であることが報告されているので、胃腔条件下でのキノン体形成反応の解明は、カテキン類の有害性機構を明らかにするのに役立つ可能性がある。また、キノン体は酸性条件下で、唾液成分であるチオシアン酸と反応して安定な化合物に変化するので、唾液由来のチオシアン酸によるキノン体の無毒化を調べ、唾液チオシアン酸塩の胃での働きを明らかにする。また、ニトロソカテキンおよびクエルセチン配糖体の澱粉消化に対する影響も明らかにしていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、謝金として約90万円を予定していたが、九州歯科大学学長枠研究費で、約50万円の謝金支払いが可能となった。そのため、40万円の次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、研究に必要な試薬類やHPLCに必要な有機溶媒やカラム類に使うと同時に、研究発表の旅費に使用する。また、論文の掲載料にも使う。
|
Research Products
(6 results)