2011 Fiscal Year Research-status Report
微量元素の過剰摂取が老人性神経障害に与える影響及び摂取量のモニタリング方法の開発
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23500978
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
吉田 香 京都光華女子大学, 健康科学部, 教授 (10336787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魏 民 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336783)
川添 禎浩 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00224783)
北村 真理 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (40369666)
寺本 勲 (木俣 勲) 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20153174)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 微量元素 / モニタリング / サプリメント / 神経障害 / 行動毒性 |
Research Abstract |
食物とサプリメントを組み合わせた摂取により微量元素の過剰摂取が起こる可能性があり、微量元素の長期に渡る過剰摂取により老人性神経障害が起こる可能性がある。現在、脳神経変性疾患との関連性が指摘されているFe、Cu、Zn、Mnに焦点を当て、広角的に研究を進めている。今年度の研究では、まず過剰摂取の可能性を調べるため、アンケート調査を実施し、摂取頻度が高かった天然原料由来のサプリメント中の微量元素量を調べた。その結果、ビール酵母でZn、Fe、Mnを、ウコンでCu、Mnを高濃度含んでいるものがあった。クロレラのFeやCuでは食事摂取基準の推奨量を超えているものもあった。また、食事中の微量元素量を測定すると栄養価計算値より高いものがあることが明らかになった。次に、摂取した食事中の微量元素量とヒトの尿中Mn、Cu、Zn、Fe量に相関関係が得られるかを調べた。その結果、Mn、Cuで相関関係が認められ、これらの元素は尿中微量元素量がモニタリング指標として使用できる可能性が示唆された。さらに、Mn、Zn、Cuの長期間投与が加齢マウスの記憶学習能力に与える影響を調べるため、20週令マウスに13ヶ月間飲料水としてMn、ZnおよびCuを自由摂取させたのち、8方向放射状迷路試験によりマウスの短期記憶に与える影響を動物行動解析装置を用いて調べた。また投与14ケ月後、ステップ・スルー型受動的回避学習試験により長期記憶に与える影響を調べた。その結果、対照群に比べて、MnおよびCu投与で短期記憶能に若干の低下が認められ、長期記憶能では著しい低下が認められた。なお、投与による肝障害や腎障害が起こっていないことは生化学検査により確認された。現在、さらに、脳組織の免疫染色により脳神経に変性が起こっているかを調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行う予定であったサプリメントの摂取状況調査、ヒト微量元素摂取過剰のモニタリング指標として尿中微量元素量が適用できるかの検討、加齢マウスへのMn、Cu、Znの長期間投与による記憶学習能力への影響をステップスルー型受動回避試験および8方向放射状迷路により調べる実験は順調に進んでおり、結果を得ることができている。当初予定していた動物行動試験のビデオ映像結果をコンピューター解析する手法の開発は室町機械株式会社製のDVTrackビデオトラッキングシステムを購入し、その追跡ソフトを使用することによりおおむね対応できた。
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Strategy for Future Research Activity |
サプリメントの摂取状況調査、尿中微量元素量測定による摂取量モニタリング調査、加齢マウスへの微量元素長期間投与後の記憶・学習行動試験、脳の免疫組織化学的検査および病理切片内のMn、Zn、Cu、Fe分布の測定方法の開発などを行う。尿中微量元素量測定による摂取量モニタリング調査では、ヒトにおけるMn、Zn、Cu、Fe過剰摂取のモニタリング方法の確立のため、サンプル数を増やし、微量元素摂取量と尿中微量元素排泄量の間に相関関係があるかを調べていく。加齢マウスへの微量元素長期間投与後の記憶・学習行動試験では、加齢雌マウスにMn、Zn、Cu、Fe水溶液を単独もしくは組み合わせて長期間飲水投与し、ステップスルー型受動回避試験、8方向放射状迷路試験、新奇物質探索試験などにより微量元素が記憶学習能力に与える影響をさらに調べる。脳の免疫組織化学的検査および病理切片内のMn、Zn、Cu、Fe分布の測定方法の開発では、免疫染色により脳神経変性の有無を調べ、その変性部位とMn、Zn、Cu、Fe分布が一致するかを調べていく。以上の実験により微量元素の過剰摂取が記憶学習能力にどのような影響を与えるかを解明するという本研究の主要な目的の達成を目指し、さらに脳のどの部位の障害が記憶・学習障害と関連しているかを考察することも目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、サプリメントの摂取状況調査、尿中微量元素量測定による摂取量モニタリング調査、加齢マウスへの微量元素長期間投与後の記憶・学習行動試験、脳の免疫組織化学的検査および病理切片内のMn、Zn、Cu、Fe分布の測定方法の開発などを行うため、実験器具や試薬、マウスなどを購入する。記憶・学習行動試験では、前年度までのステップスルー型受動回避試験および8方向放射状迷路試験に加え DVTrackビデオトラッキングシステムの追加ソフトを購入してオブジェクトレコグニション(新奇物質探索試験)やフィアコンディショニングテスト(恐怖条件付け文脈学習試験)などを行う。これら種々の動物行動試験による記憶・学習行動評価を行うことにより、各微量元素が脳のどの部位に作用しているかを推測する。
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