2012 Fiscal Year Research-status Report
微量元素の過剰摂取が老人性神経障害に与える影響及び摂取量のモニタリング方法の開発
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23500978
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
吉田 香 京都光華女子大学, 健康科学部, 教授 (10336787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魏 民 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336783)
川添 禎浩 京都女子大学, 家政学部, 教授 (00224783)
北村 真理 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (40369666)
寺本 勲(木俣勲) 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20153174)
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Keywords | 微量元素 / モニタリング / サプリメント / 脳神経障害 / 動物行動試験 / マウス |
Research Abstract |
近年、人々の健康への関心が高まり、サプリメントを常用する人が増えている。昨年度の研究で、天然原料の中にはマンガン(Mn)亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)などの微量元素が多量に含まれるものがあることが明らかにした。今年度、幅広い年代の322名を対象としたサプリメントの利用実態調査を行なった。その結果、飲用経験者は半数以上おり、特に中高年女性で飲用者が多いこと、年代が上がるにつれて健康に気を配り、食事と合わせて天然原料のサプリメントを毎日飲用する人が多くなる傾向があることが示された。これらのことは、食品のみから摂る場合には注意する必要のなかった微量元素の過剰摂取が起こる可能性があることを示唆している。また、昨年度に引き続き、摂取した食事中の微量元素量の指標として尿中微量元素量が使用できるかを調べた結果、過剰摂取によりCuとMgで尿中排泄量が増加することが示された。 Mn、Zn、 Cu、Feは神経変性疾患との関連性が指摘されている元素であり、これらの元素の長年に渡る過剰摂取により老人性神経障害が起こる危険性がある。昨年度の研究で、加齢雄マウスへのMn、ZnまたはCuの14か月間飲水投与により、対照群に比べて、MnおよびCu投与で長期記憶能の低下が認められることを示した。今年度は、さらにその折、脳神経に変性が起こっていたかを免疫染色により調べた。その結果、対照群と投与群の間で差は認められなかった。今年度は、MnとZnに焦点を当て、単独および組み合わせ投与により記憶能に影響を与えるかを動物行動試験により調べている。その結果、加齢雌マウスにMn、Zn、Mn+Zn水溶液を飲料水として30週間自由摂取させると、 Y字型迷路試験では差は認められなかったが、新奇物質探索試験ではZn群とMn+Zn群において記憶能の低下が認められた。現在、この長期間投与試験を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行う予定であったサプリメントの摂取状況調査、ヒト微量元素過剰摂取のモニタリング指標として尿中微量元素量が適用できるかの検討は順調に進んでいる。また、動物試験においても、加齢マウスへのMn、ZnまたはCuの長期間投与が脳神経に与える影響について、α-シヌクレイン抗体染色およびタウタンパク質抗体染色により脳神経変性の有無を病理組織学的に確認できている。動物行動試験では、昨年度購入した室町機械株式会社製のDVTrackビデオトラッキングシステムを用いて、今年度新たにY字型迷路試験とオブジェクトレコグニション(新奇物質探索試験)の試験方法の確立ができた。このシステムを用い、マウスへのMnとZnの単独および組み合わせ長期間投与の短期記憶への影響をY字型迷路試験で、視覚的認知記憶への影響をオブジェクトレコグニション(新奇物質探索試験)により調べることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
尿中微量元素量測定による食事摂取量のモニタリング調査の有効性、加齢マウスへの微量元素長期間投与後の記憶・学習行動試験、脳の免疫組織化学的検査および病理切片内のMn、Zn、Cu、Fe分布の測定方法の開発などを引き続き行う。 尿中微量元素量測定による摂取量のモニタリング調査の開発では、ヒトにおける微量元素過剰摂取の尿中微量元素量測定の有効性を調べるため、種々の食事パターンでの微量元素摂取量と尿中微量元素排泄量の関係を調べていく。 加齢マウスへの微量元素長期間投与後の記憶・学習行動試験では、加齢雌マウスにMn、Zn、Cu、Fe水溶液を単独もしくは組み合わせで長期間飲水投与し、ステップスルー型受動回避試験、Y字型迷路試験、オブジェクトレコグニション(新奇物質探索試験)などにより微量元素が記憶学習能力に与える影響をさらに調べる。 脳の免疫組織化学的検査および病理切片内のMn、Zn、Cu、Fe分布の測定方法の開発では、免疫染色により脳神経変性の有無を調べ、その変性部位とMn、Zn、Cu、Fe分布が一致するかを調べていく。以上の実験により微量元素の過剰摂取が記憶学習能力にどのような影響を与えるかを解明するという本研究の主要な目的の達成を目指し、さらに脳のどの部位の障害が記憶・学習障害と関連しているかを考察することも目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度ビデオトラッキングシステム追加ソフト購入や装置購入の際、当初予定金額より価格が低かったため、次年度使用額が生じた。 平成25年度は、尿中微量元素量測定による摂取量モニタリング調査、加齢マウスへの微量元素長期間投与後の記憶・学習行動試験、脳の免疫組織化学的検査および病理切片内のMn、Zn、Cu、Fe分布の測定方法の開発などを行うため、実験器具や試薬、マウスなどを購入する。また、動物試験は、共同研究を行っている大阪市立大学医学部内の動物実験施設内において行っており、その施設使用料が必要である。記憶・学習行動試験では、前年度までのステップスルー型受動回避試験、Y字型迷路試験、新奇物質探索試験オブジェクトレコグニション(新奇物質探索試験)に加え、さらに有効なDVTrackビデオトラッキングシステムの追加ソフトを購入して幅広く行動試験を行っていく。これら種々の動物行動試験による記憶・学習行動評価を行うことにより、各微量元素が脳のどの部位に作用しているかを推測していく予定である。
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