2011 Fiscal Year Research-status Report
食用担子菌におけるスフィンゴ糖脂質の偏在性と第三次機能の科学的評価
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23500980
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
水野 淨子 相愛大学, 人間発達学部, 副学長 (90190652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 永年 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80326256)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スフィンゴ糖脂質 / 生理活性 / 化学分類 |
Research Abstract |
本研究では、種々の食用担子菌に含まれるスフィンゴ糖脂質 (GSL) の分布と構造解析からその偏在性を明らかにするため、各キノコの総脂質画分とアルカリ安定脂質を各種展開溶媒系でTLC展開し、GSLの分布を検討した。総脂質画分を弱アルカリ加水分解すると、エステル結合型のリン脂質や糖脂質は分解されるが、GSLは分解されずに安定であった。TLCの結果、食用担子菌であるマイタケ (Glifola frondosa)、エノキタケ (Flammulina velutipes)、マツタケ (Tricholoma matsutake)、シイタケ (Lentinula edodes)、エリンギ (Pleurotus eryngii)、ブナシメジ (Hypsizygus marmoreus) に構造不均一なGSLが多量に含まれていることを見出し、その構造と偏在性を明らかにした。即ち、マイタケ、エノキタケ、マツタケ、シイタケ、エリンギ、ブナシメジには共通したGSL-1が存在し、その化学構造はglucosyl-β(1→1)-ceramideと同定した。エノキタケ、マツタケ、エリンギにはマイタケに存在しないGSL-2が検出された。GSL-2はGSL-1に比べTLC上の移動度が異なり、質量分析の結果から分子量が120程度大きかった。糖、脂肪酸、長鎖塩基の解析も含めGSL-1と比較しているが、構造の同定までは未だ至っていない。しかしながら、担子菌間でGSLの分布に違いがあることが示唆され、他の食用キノコ、ハナビラタケ (Sparasis crispa) 、ヤマブシタケ (Hericium erinaceum) についてもGSLの偏在性を今後検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は食用キノコの化学分類の指標として脂質分布の解析を開始し、一部の担子菌マイタケ; Glifola frondosa (真正担子菌綱チョレイマイタケ目トンビマイタケ科マイタケ属)、エノキ; Flammulina velutipes (真正担子菌綱ハラタケ目キシメジ科エノキタケ属)、マツタケ; Tricholoma matsutake (真正担子菌綱ハラタケ目キシメジ科キシメジ属キシメジ亜属マツタケ節)、シイタケ; Lentinula edodes (菌じん綱ハラタケ目キシメジ科ヒラタケ科ホウライタケ科ツキヨタケ科シイタケ属)、エリンギ; Pleurotus eryngii (真正担子菌綱ハラタケ目 ヒラタケ科 ヒラタケ属)、ブナシメジ; Hypsizygus marmoreus (真正担子菌綱 ハラタケ目シメジ科シロタモギタケ属) にスフィンゴ糖脂質の存在と構造不均一性を認め、化学分類の可能性が示唆できた。
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Strategy for Future Research Activity |
スフィンゴ糖脂質は糖とセラミド(長鎖塩基と脂肪酸)からなり、動植物などの真核生物に広く分布し、脳細胞、神経細胞膜、脾臓、筋肉等の重要な構成成分である。細胞シグナル伝達物質として分化、増殖、プログラム死を制御し、免疫学的に重要な働きをしている。また、皮膚においては保湿や細胞透過性への関与が指摘されている。これらスフィンゴ糖脂質は自己免疫疾患や神経変性疾患の治療に役立つ可能性もあり、健康の維持増進への関与が示唆される。また、スフィンゴ糖脂質を認識するCD1d拘束性NKT細胞が見出され、その機能解明が求められている。キノコの子実体に含まれるGSLを始めとする糖脂質は細胞分化の結果として発現するだけでなく細胞分化能を有すると考えられる。キノコでは子実体型性能を有することに加え、これらの糖脂質が生体内でどのような働きを持っているのか興味深く、今後、生理活性についても解析する。即ち、(1)自然免疫系の主役であるマクロファージ、樹状細胞の活性化機能が健康維持、増進の観点から重要であり、スフィンゴ糖脂質の経常的な刺激による生理的機能(サイトカイン誘導能、貪食活性能)を模索する。(2)各種スフィンゴ糖脂質による活性化細胞の検索; マウス脾臓細胞をin vitroの系で刺激し、チミジン取り込みから細胞の活性化を評価。同時に培養上清のサイトカイン産生から分子機構を解析する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
我々は、食品の機能性研究を推進する過程で、キノコに構造不均一なスフィンゴ糖脂質が多量に含まれていることを見出し、これら糖脂質分子がキノコの第三次機能に寄与していると仮定した。本研究では、本仮定を証明するため、種々の食用担子菌に含まれるスフィンゴ糖脂質の分布と構造解析から偏在性を明らかにするために大量の脂質を精製純化する必要がある。このために必要な消耗品(薄層クロマトグラフィー、有機溶媒、エバポレーター、真空ポンプ)、生理活性を見るための消耗品(マウス、細胞株、培地、ELISAキット、ラジオアイソトープ)を購入する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Structure and host recognition of serotype 13 glycopeptidolipid from Mycobacterium intracellulare2011
Author(s)
T. Naka, N. Nakata, S. Maeda, R. Yamamoto, M. Doe, S. Mizuno, M. Niki, K. Kobayasi, H. Ogura, M. Makino, and N. Fujiwara
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Journal Title
Journal of Bacteriology
Volume: 193
Pages: 5766-5774
Peer Reviewed
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