2012 Fiscal Year Research-status Report
食用担子菌におけるスフィンゴ糖脂質の偏在性と第三次機能の科学的評価
Project/Area Number |
23500980
|
Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
水野 淨子 相愛大学, 人間発達学部, その他 (90190652)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 永年 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80326256)
|
Keywords | 糖脂質 |
Research Abstract |
本年度は、β-グルカンを高濃度に含有し、抗腫瘍作用、血糖値低下作用および全身性の免疫賦活作用が報告されているハナビラタケについて検討した。 抗腫瘍作用、血糖値低下作用および全身性の免疫賦活作用などのこれらの作用はハナビラタケに含まれるβ-グルカンによるものと報告されているが、β-グルカンが含まれない低分子画分においても、高い損傷治癒効果が報告されている。また、キノコに含まれる微量な脂質成分が免疫賦活作用、抗酸化作用を示すことが明らかにされていることから、ハナビラタケおよび脂質成分の免疫賦活作用および腸内菌叢改善作用について、マウスを用い、ハナビラタケおよび脂質成分投与前および24時間後に新鮮糞を回収し、糞IgA濃度を測定した。またサンプリング時の盲腸内容物を用いて腸内菌叢解析を行った。 対照餌、ハナビラタケ子実体および脂質添加餌飼育マウスでは、摂食量及び体重増加量には差は認められなかった。飼育期間終了時の血糖値は、ハナビラタケ子実体および脂質成分投与マウスで低下する傾向が認められた。小腸パイエル板の表面積は、ハナビラタケ子実体および脂質成分投与マウスで増加する傾向が認められた。ハナビラタケ子実体および脂質成分投与前および投与24時間後の新鮮糞を用いてIgA濃度を計測した結果、投与により糞IgA濃度が増加することが明らかとなった。さらに腸内菌叢解析の結果から、ハナビラタケ子実体投与マウスでは、LactobacillusおよびBifidobacteriumの著しい増加が観察された。またハナビラタケ脂質成分投与マウスにおいても、これらの腸内細菌数は高い値を示した。以上の結果から、ハナビラタケ子実体および脂質成分のパイエル板を介した腸管免疫賦活作用が示唆され、腸内菌叢の改善作用を有することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スフィンゴ糖脂質(GSL)は糖とセラミド(長鎖塩基と脂肪酸)からなり、動植物などの真核生物に広く分布し、脳細胞、神経細胞膜、脾臓、筋肉等の重要な構成成分である。細胞シグナル伝達物質として分化、増殖、プログラム死を制御し、免疫学的に重要な働きをしている。また、皮膚においては保湿や細胞透過性への関与が指摘されている。これらスフィンゴ糖脂質は自己免疫疾患や神経変性疾患の治療に役立つ可能性もあり、健康の維持増進への関与が示唆される。今回我々は、これらの糖脂質の生体内での働きの一端を解明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、属の異なる各種食用キノコの脂質成分を分画し、パイエル板を介した腸管免疫賦活作用および、腸内菌叢の改善作用を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
キノコに含まれる微量な脂質成分が免疫賦活作用、抗酸化作用を示すことが明らかにされていることから、各種キノコの脂質成分の免疫賦活作用および腸内菌叢改善作用について検討を行うため、大量の脂質を純化精製する必要がある。このために必要な消耗品(薄層クロマトグラフィー、有機溶媒等)及び生理活性を検討するための消耗品(マウス、細胞株、培地、ELISAキット等)の購入とこれらの研究の研究補助員を雇用する。
|
Research Products
(5 results)