2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500983
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
堀田 久子 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (00165002)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 柑橘類 / ポリフェノール |
Research Abstract |
【目的】 ジュースの搾汁残渣は、果実に比べビタミンCやポリフェノールといった有効成分が濃縮されている場合があるが、多くの場合家畜の餌となるか廃棄されている事が多い。本研究では、このような低価値の材料に注目し、付加価値を見出すことを目的とした。【方法】凍結乾燥した晩柑または温州みかんの搾汁残渣100gに蒸留水2リットルを加えて121℃30分熱水抽出を行ったものをさらに凍結乾燥し、実験材料とした。 実験は、コントロール群と飼料の3%を搾汁残渣で置き換えた群(3%群)を設定し、これらの飼料でラット(SDラットオス)を4週間飼育した。【結果】血糖値と血清中総コレステロール含量は、コントロール群に比べ晩柑群で有意に低下していた。また、肝臓のコレステロール含量もコントロール群に比べ有意に低下しており、糞便中のコレステロールの排泄量についてはコントロール群に比べ、晩柑で有意に増加していた。一方温州みかん搾汁残渣では、これらの項目についてコントロール群との間に有意な差は認められなかった。以上の結果から、晩柑搾汁残渣には、血糖値を低下させ、コレステロールの生合成を抑制するかまたはコレステロールの排泄を促す活性があることが示唆された。また晩柑搾汁残渣は試験管内ではビフィズス菌を増加させたにもかかわらず、ラットの盲腸内容物中にビフィズス菌を増加させることができなかったが、一方、温州みかん搾汁残渣では盲腸内容物中にビフィズス菌が有意に増加していたが、血清脂質には変化がなかった。【考察】分析の結果、晩柑搾汁残渣熱水抽出物の総ポリフェノール含量は試料1gあたり354mgと高く、温州みかんはその3分の1であった。晩柑の結果からポリフェノール含量とコレステロール低下効果の関連が示唆された。ビフィズス菌増加とコレステロール低下には関係が見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに晩柑、温州みかん搾汁残渣について動物実験を終了し、もっとも活性が高かったのは、晩柑搾汁残渣であった。晩柑搾汁残渣は、夏みかんとはっさくが1対4で混合されたジュースの搾汁残渣であり単一の柑橘類ではないが、総ポリフェノール含量が1gあたり354mgで、これは温州みかん搾汁残渣の約3倍に相当した。温州みかんの搾汁残渣で同様に動物実験を実施したが、結果として血清や肝臓の総コレステロールや血糖値はコントロール群と変化が認められなかった。晩柑搾汁残渣では血糖値の低下と血清の総コレステロールのみならず、肝臓の総コレステロールも減少し、糞便中の総コレステロールの排泄まで高まっていた。これには晩柑搾汁残渣中に含まれる植物ステロールであるシトステロールの関与も考えれられ、シトステロール含量は晩柑試料中でもっとも高かった。血糖値のみならず血清コレステロールも低下させる晩柑搾汁残渣を見出すことができた点で、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験は、ユズ及びはっさくの搾汁残渣の熱水抽出物でも遂行する。調べるべき項目は、先の実験と同様に、血清コステロール、血糖値などであるが、腸内細菌叢についても検討を加える。晩柑搾汁残渣を用いた実験ではビフィズス菌の増加は認められなかったものの、温州みかん搾汁残渣では盲腸内容物中にビフィズス菌が有意に増加していた。コレステロール低下作用とビフィズス菌増加作用は必ずしも並行しないかもしれないが、2つの活性を有する搾汁残渣についても探索を加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物費用、血清脂質・血糖値等測定キット、腸内細菌培養用ガス、FISH法用プローブ等物品費として450千円、学会参加費用50千円の総計500千円
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