2011 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー型認知症予防のための新規食品成分検索とその細胞内作用機構の検証
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23500985
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
土井 裕司 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (50106267)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー型認知症 / アセチルコリンエステラーゼ / 阻害物質 / 微小管 / 抗酸化酵素 / 脂質過酸化物 |
Research Abstract |
アルツハイマー型認知症では、脳細胞の委縮やその数の減少が観察されており、その原因として微小管形成の阻害が起こっていると考えられる。本研究課題では、予防のための新規食品成分を検索することを目的としている。そこで、本症発症の要因として脂質過酸化物(PO)を仮定し、それによる微小管形成阻害を確認することを本年度の研究の最初とし、次いで、抗酸化系酵素の変動を観察することとし、更に抗酸化物質による微小管形成の回復を検討することとした。 POで劣化させた細胞にエピカテキンまたはβ-カロテンを添加すると抗酸化剤無添加と比べて生細胞数が増加し、それらの濃度依存性もみられた。細胞骨格形成の検討ではケルセチンまたはエピカテキン添加の効果が認められた。更に、β-カロテンまたはケルセチン添加で細胞内のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性化が認められた。また、β-カロテン、エピカテキン、サポニンの添加により細胞膜の過酸化が減少した。これらのことより、抗酸化剤によって劣化した細胞の増殖に関係するもの、劣化した細胞骨格形成を形成しなおすもの、細胞内抗酸化系であるSODの活性化をするものなど、さまざまな影響を及ぼすものの存在がみられた。それらの結果は、平成24年3月の日本農芸化学会大会で報告した。 また、新規食品成分の検索では、本症発症要因としてコリン作動性シナプスの減少を仮定して、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の検索を開始した。食品素材としては、紅タデを用いた。その結果、紅タデ水抽出部中にアセチルコリンエステラーゼ阻害活性の存在を見出し、その精製に取り組んできている。精製法としては、イオン交換法、ゲルろ過法を用いた。現在、精製法についてはシリカゲルを用いた別法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的として、アセチルコリンエステラーゼ阻害物質の検索とその精製があった。その結果、上述のように紅タデ水抽出物中に阻害活性を見出した。そして、当初計画通り、イオン交換法やゲルろ過法を用いての精製を試みた。現在、部分精製まで至っている。当初の計画では、大量精製法の確立を平成24年度前半としている。その点を考慮すると、おおむね順調に進展しているといえる。 また、当初計画ではAChE阻害物質の検索・精製に加えて、神経モデル細胞の培養をあげていた。すなわち、阻害物質がヒトへどのような影響を及ぼすかを明らかにする必要があるため、まず、神経モデル細胞へどのような影響を及ぼすかを検討するための予備実験である。本研究室では他のグループによってラット副腎由来褐色細胞腫で、神経モデル細胞として知られているPC12細胞を実験材料としてしており、そこからその細胞の培養に関する基本情報を得ている。この点でも、研究目的はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に見いだされたアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤の精製をまず、第一の研究方策とする。また、数多くの試料の阻害活性を検討する必要から、分光光度計による酵素活性測定に代えて、マイクロプレートリーダーを用いての活性測定法の開発を目指す予定である。当初計画では精製法としてイオン交換法やゲルろ過法を考慮していたが、今後はシリカゲルでの精製も検討したい。そして当初計画通りAChE阻害物質の大量調製法を確立したい。 また、申請時には平成24年度計画の第2点目として、精製AChE阻害物質の構造研究、第3点目として、その酵素化学的研究をあげている。平成23年度に酵素阻害物質の部分精製が進展していることから、さらなる精製が可能と考えられる。そこで前述の大量調製法で得られた精製物質を対象として、その構造研究、酵素化学的諸性質の解明を予定通り今後の研究対象としてに加える。 更に、研究計画の第4点目として神経モデル細胞であるPC12細胞を培養に対しても、予定通り実施し、PC12細胞の阻害物質無添加条件での諸機能を把握しておく予定である。ここでのPC12細胞は特に分化したものを使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度からの「次年度使用額」については、研究成果をまとめるため論文作成を計画している。その論文の英文校正費用として前年度からの繰越金を使用する予定である。 研究の内容として、酵素活性の測定、酵素阻害物質の精製、ならびに新規酵素活性測定法の開発があり、それらの遂行のための研究経費が支出先となる。すなわち活性測定に必要な酵素、基質、緩衝液といった試薬類、精製のために必要なゲル類、カラム等の器具類、そして、マイクロプレートリーダー関連器具類の購入である。 また、細胞中の微小管形成、抗酸化系酵素の変動は付随して検討する予定であることから、それらの測定のための経費の支出もある。 更には、PC12細胞の生育状況の把握、微小管形成、抗酸化系酵素の変動等を測定する予定で、PC12細胞の培養関連の試薬としての培地、神経成長因子、ならびに培養器具類の購入への支出も計画している。
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Research Products
(3 results)