2011 Fiscal Year Research-status Report
三陸沿岸養殖漁家の食生活と環境微量元素暴露・負荷量の経年変動に関する研究
Project/Area Number |
23500991
|
Research Institution | Morioka Junior College,Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
千葉 啓子 岩手県立大学盛岡短期大学部, 生活科学科, 教授 (90197137)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 孝男 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (20004608)
中塚 晴夫 宮城大学, 看護学部, 教授 (70164225)
猿渡 英之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (30221287)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 環境微量元素 / 食生活 / 陰膳実測法 / ヒ素摂取量 |
Research Abstract |
目的:日本人の海産物の多食とそれによるヒ素や水銀等の健康影響が議議されているが実証的研究は少ない事から、本研究では居住・職種とも生涯を通じ海洋と密接する養殖漁業者と家族を対象に陰膳実測による食事調査を実施し、ヒ素等有害元素のみならず必須・微量元素の栄養・代謝への慢性影響の解明を目的とした。本年度の調査予定地は3.11東日本大震災・津波で甚大な被害を被った事から当初計画を変更し、対照地域で調査を実施した。方法:調査時期は平成23年12月~平成24年3月で、調査対象は岩手県内陸部の大豆や野菜の生産農家の男女、3地区でそれぞれ20~30名である。各地とも事前に調査内容について紙面と口頭による説明を行い、同意を得た者を対象とした。なお本研究は岩手県立大学研究倫理委員会の承認を得て実施されたものである。調査項目は(1)蔭膳実測法による食事調査では対象者に3日間食事記録をつけてもらい、うち一日は陰膳調査を実施した。対象者が朝起きてから夜寝るまでに口にした全ての飲食物を、朝食、昼食、夕食、それ以外に分けて採取した。さらに(2)食生活アンケート調査、(3)問診(既往歴、自覚症状、喫煙、飲酒習慣等)、健康診断(身体計測、血圧測定、触診等)、(4)生体試料(血液、尿、毛髪)を採取した。この調査から分析或いは解析される項目は、(1)食事からの必須・微量・有害元素類摂取量及び生体試料中の同元素類の濃度、(2)食事中の栄養素等摂取量及び食品群別摂取量、(3)血液・尿生化学検査値等である。食事試料は今後の分析や保存のため、調査終了後、直ちに各食事毎、食品の秤量を行った後、少量の精製水とともにミキサーで均質化し、保存容器に移して-30℃で保存した。結果:3地区での調査対象の合計は68名(男22名、女46名)であった。本年度はこれら対象者の食事票からの栄養価計算及び集計、健診結果の取りまとめまでを終了した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の初年度実施計画では、対象地を三陸沿岸地域と考えていたが、3.11東日本大震災・津波により漁港の地盤沈下、養殖漁業施設の壊滅的被害等により、従来の生活形態が著しく損なわれた。そのため、調査計画を変更し、H23年度は対照地区から調査を開始した。調査の実施に関しては順調であったが、対象変更した分、交渉等に時間が掛かり、また想定よりやや対象者数が少なかった事から、(2)おおむね順調に進展しているが妥当と考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次の2項目について研究を継続する。(1)平成23年度に収集した試料中各種元素の前処理及び分析食事試料、各種生体試料の特性や使用機器の違いに応じた前処理を行なう。検体数も多い事から、精度管理をしながら計画的に処理を進める。24年度には試料中の必須・非必須元素類の測定についても開始する。対象元素はナトリウム、塩素、ヨウ素、珪素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ストロンチウム、リチウム、モリブデン、セレン、ヒ素、カドミウム、鉛等である。ICP-MSやPIXE等の機器分析により、食事及び各生体試料中の元素類を測定する。ヒ素、セレン等化学形態による生体影響が異なる元素について、有害性の検討に化学形態別分析が必要となった場合には、北里大の山内博教授に研究協力を依頼し、精度の高い化学形態別分析及び解析を実施する。(2)沿岸部における陰膳実測法による食事調査の実施平成23年度と同様の調査方法にて、沿岸地域の対象者について食事調査を実施する。本研究は被災状況に係る内容を含む研究ではないが、文科省通達(平成23年5月16日)に従い、対象者への充分な配慮のもとで遂行したいと考えており、場合によっては申請時の調査規模からの縮小や簡素化も有り得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には大きく分けて2つの項目に研究費を投入する予定である。1つは平成23年度に実施した調査試料の分析に掛かるもので、試料の前処理用試薬類、分析用試薬類、分析装置用アルゴンガス代、ガラス器具代、PIXE分析装置借用分担経費である。他方は沿岸部での陰膳食事調査に掛かる経費で、食事材料費、健診費、管理栄養士委託経費(聞き取り調査、栄養価計算等)、学生バイト代(実験補助)及び学会等での成果発表の旅費等である。
|