2012 Fiscal Year Research-status Report
低消費電力型クラスタPCを用いた小型で実用的な並列画像処理システムの開発
Project/Area Number |
23501001
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木村 彰男 岩手大学, 工学部, 講師 (00281949)
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Keywords | 画像処理 / 並列処理 / クラスタ / 低消費電力 |
Research Abstract |
今年度は,前年度に高性能化を完了したクラスタPC(Intel Atom D510 × 8台)によって並列画像処理システムの開発・実装を学べるような例題教材を作成することに主眼を置いて研究を進めた.本研究の最終的な目標の一つは,完成予定教材の利用者が,画像処理プログラムの製作を通じて並列化の効果を実感し,それとともに並列処理に関するスキルを高めてもらうことにある.その意味で,例題としてはそれなりに計算量の多い画像処理アルゴリズムを選ぶことが不可欠であるが,今年度は特に,画像中の点や線の組み合わせに基づいて処理を行う組み合わせ的な画像処理手法に注目し,これを並列に実行するための具体的手法について理論的な検討を進めた.その結果,各組み合わせに対して一連の通し番号を付け,その番号を利用してクラスタの各ノードにタスクを配分する方法を新たに考案した.さらに,組み合わせHough変換などのいくつかの手法について,評価実験によって並列化の効果を検証したところ,通常は莫大な処理時間を要するが,計算ノード数を8に増やしてデュアルコアまで利用することで,平均的な処理時間をおよそ1/6程度にまで短縮できることを確認した.しかしその一方で,並列処理実行時のクラスタPCの消費電力は90W程度と,以前よりも大きくなった.それでも,Core i7搭載の汎用PC1台(稼働時200W程度)よりは低消費電力といえるが,今後は,消費電力と計算能力のバランスを保てる最適な計算ノード数などについても検討する計画である. なお,これとは別に,次年度以降に予定している研究の下準備として,一枚の画像から幾何学的なシーン制約(複数点の共面性,空間直線の平行性や直交性など)を利用して建物等の3次元構造を復元する方法や,マイクロヘリコプターをプログラムで制御しながら飛行させるためのモジュールなども開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つである「利用者が並列処理に関する基本的知識を効果的に学べるような教材を作る」という点に関しては,現段階では,クラスタPCの構築過程,組み合わせ型画像処理を並列化するための原理,プログラムによるマイクロヘリコプターのコントロール方法,などに関する教材プロトタイプが出来上がっており,おおむね順調に進んでいると判断している.ただし,今年度重点的に検討を進めた組み合わせ型画像処理の具体的な並列プログラミング部分については,教材として取り纏める作業が未だ残っており,さらにクラスタPCの消費電力と計算能力のバランスに関する検証実験にも未着手であるため,これらについては早急に取り組む必要がある. また,「組み込み用途のCPU単独では実現困難であるような,比較的計算量の多い画像処理システムを実用的な形で実現する」という目的に対しては,より具体的なシステムとして,USBカメラを搭載したマイクロヘリコプターで遠方の画像を取得してリアルタイム3次元画像処理を行うことを構想しており,実績概要欄にも記載したように,既にそのための基盤技術のいくつかを開発済みである.こちらについてもおおむね順調に進んでいると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,マイクロヘリコプターを利用した並列3次元画像処理システムを題材として,小型かつ実用的な並列画像処理システムを実現し,さらにこれを構築・実装する過程を教材として取り纏める計画である.特に,まだ並列実装が済んでいないUSBカメラからの映像処理モジュール,特定画像の切り出しモジュールなどを開発し,従来にはない小型・高性能なシステムを完成させる予定である.また,研究期間が残り1年であるので,教材を利用した学生の並列画像処理に関する習熟度の分析調査,およびその結果を利用した教材の精製,などにも取り組む計画である.そのために,まずは,一部残されている並列画像処理用のモジュール開発を速やかに遂行し,PBL型演習教材が出来上がった段階で,申請者の研究室に新規に配属された学生達に対して実習を試みる.学生達は,配属直後の段階では画像処理や並列処理に関してそれほど明るくないため,教材の出来を評価する上でこの実習は非常に効果的であると考えている.そして,この教材を使って並列画像処理システムを学んだ学生達の理解度を,新たに何らかの追加課題を課すことで追跡調査する.例えば,クラスタPCを用いて(教材内容とは別の)並列画像処理アルゴリズムを実装させてみる,汎用PCでも実行可能な形にプログラムの移植を行わせて性能比較させてみる,といった試みを行い,課題に対する取り組み方やプログラムの洗練度によって学生の到達度を分析する.そしてその分析結果に基づいて教材の効果を検証し,さらにそれを教材にフィードバックさせることで,より完成度の高い教材の実現を目指していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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