2011 Fiscal Year Research-status Report
地衣類調査をテーマにした科学的発見の歓びを実感する科学教育プログラムの開発
Project/Area Number |
23501011
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
川上 紳一 岐阜大学, 教育学部, 教授 (80183036)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 科学教育 / 地衣類 / 図鑑 / 高校生 / 生物多様性 / フロラ / 岐阜県 / 生態 |
Research Abstract |
本研究の目的は,岐阜県内の高校生と連携して地衣類調査を行うことで,次世代の科学技術を担う人材育成に貢献することである.岐阜県は濃尾平野から3000m級の北アルプスまで自然環境が多様で,さまざまな地衣類が生育していることが期待される.しかし,系統的な地衣類調査が行われておらず,確認されている地衣類は120種程度であった. 本研究では,地域の地衣類の調査を高校生の科学研究として実施し,地域の地衣類相の解明や新種の記載などについて,学会等で研究発表するなかで,科学的発見の喜び,研究の進め方や発表の仕方を学び,将来科学技術分野で活躍する人材を育成する. 地域の地衣類を調査し,生育する地衣類の種類を同定するには,多様な地衣類の生態を撮影した地衣類図鑑が必要である.地衣類は生育環境によって形態の変異が大きいものもあり,生態写真を集めた図鑑を構築する必要がある.本研究では,岐阜県内を中心に,野外調査で生態写真を集め,webサイト教材「進化する地衣類図鑑」の構築を進めている.掲載する地衣類は,分類群ごとに整理する一方,外部形態の特徴などによるグループ化も行っており,初学者でも分類群が絞り込めるような工夫を行っている. これまでに掲載した地衣類は120属,260種である.このなかには,アツミダイダイゴケ,サラゴケのほか,稀種とされるキビノサラゴケ,ウロコイボゴケ,オワリウメノキゴケなどが含まれている.これまでの取り組みで,千葉県立中央博物館への標本の流れもできつつあり,今後は岐阜県内の高校生や地衣類分類学の専門家との緊密な連携が課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ウェブ上に掲載している「進化する地衣類図鑑」を構築している。本研究の達成目標を150属、300種と設定したが、現在までに130属、260種の地衣類について、生態写真を撮影し、図鑑化した。本年度の取り組みで、研究目標を達成する目処がついた。 高校生による科学研究については、岐阜県立加茂高等学校の生徒1名、岐阜県立大垣東高等学校の生徒1名が地域の地衣類調査を行った。課題研究レポートにまとめると同時に、日本地衣学会の大会において、口頭発表を行っており、地衣類研究をテーマにした高校生対象の科学教育プログラムの方向性も確立できた。 また、新種1種、国内新種2種を含む、稀種を確認し、日本地衣学会誌Lichenologyに報告論文として6編投稿し、掲載された。現在2編は投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
「進化する地衣類図鑑」のさらなる充実に向けて、岐阜県内の地衣類調査を進める。また、掲載種数の充実に向けて、生育環境の異なる国内各地の調査も進め、150属、300種の達成を目指す。 高校生の地衣類調査の支援を継続し、携わる生徒の数を増やしていく。また、高校の学会発表を支援していく。 さらに、発見した新種、稀種については、外部形態、内部形態を記載し、学会誌に投稿していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
地衣類標本の保管用のパケットや標本収納ケースなどの消耗品を確保する。地衣類検査用の薬品やプレパラートなどの確保する。地衣類の文献を収集する。 調査旅費や学会発表のために、旅費を使用する。 地衣類標本の滅菌のため、オートクレーブを確保する。
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