2012 Fiscal Year Research-status Report
地衣類調査をテーマにした科学的発見の歓びを実感する科学教育プログラムの開発
Project/Area Number |
23501011
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
川上 紳一 岐阜大学, 教育学部, 教授 (80183036)
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Keywords | 科学教育 / 地衣類 / フロラ / 高校生 / データベース / デジタルコンテンツ |
Research Abstract |
本研究の目的は,岐阜県内の高校生と連携して地衣類調査を行うことで,次世代の科学技術を担う人材育成に貢献することである.地域の地衣類の調査を高校生の科学研究として実施するには,野外での見分けに役立つ検索しやすい図鑑が必要である.そのため,2010年からwebサイト教材「進化する地衣類図鑑」の構築を進めている.科学教育プログラムとしては、岐阜県内の高校生が中心になって地衣類の調査を行い,確認した地衣類の同定について,大学教員や専門家がアドバイスすることで,新種や希少種を確認し,ひいては調査地域の地衣類相を明らかにすることで,地衣類相と自然環境の関わりについて考察していく.さらに,地域の地衣類相の解明や新種の記載などについて,学会等で研究発表するなかで,科学的発見の喜び,研究の進め方や発表の仕方を学び,将来科学技術分野で活躍する人材を育成するという構想である.2011年度には,岐阜県立加茂高校の生徒1名が本研究に参加し,本学会で発表を行った(柴垣ほか,2011).さらに、岐阜県西濃地域に位置する大垣東高校生についても2011年から調査を始め,2012年には日本地衣学会で講演を行った(日比野ほか,2012)。 webサイト教材「進化する地衣類図鑑」については、構築を始めた2010年以降着々とデータを追加し、現時点で約150属300種を掲載した。この中には、日本新産のダイダイゴケ科地衣類Caloplaca decipiensが含まれる。これまでに確認した地衣類の属、種の数は、本研究で目標とした数値にほぼ到達した。今後も、岐阜県で確認された注目種や日本新産の地衣について、高校生と連携して、野外での生育状況を記載するほか、子器内部形態の観察を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、概ね計画どおりに研究が進んでいる。岐阜県を中心に記載した地衣類の数は、150属、300種に達し、ほぼこの研究で3年間で目指した数値目標をクリアした。掲載した地衣類は、webサイトの「理科教材データベース」、「進化する地衣類図鑑」に掲載している。高校生との連携については、昨年度の岐阜県立加茂高校、大垣東高校生それぞれ1名が研究に参加したが、今年度は、大垣東高校生3名が、養老公園、池田の森において地衣類調査を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究の最終年度であり、これまでの研究を継続し、成果を取りまとめる。高校生との連携については、新たに研究に着手する生徒を見出す必要があるが、昨年度の大垣東高校生3名が、意欲的に研究を行い、研究発表を行っており、新2年生の中にも地衣類調査を希望する生徒が現れるのではないかと期待している。 岐阜県内の地衣類調査については、岐阜県北部や高山性の地衣類の調査を続けて、新たな地衣類を発見、記載していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に必要な設備はほぼ整っているが、新たに研究に着手する高校生のために、地衣類図鑑、デジカメなどを用意する。また、地衣類標本を保管する試料ケース、試薬類、データ管理用のハードディスクなどを確保し、継続的にホームページを運用できるようにする。
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