2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロスケール実験を用いた教材開発と授業実践による理科教育実験の体系化と普及
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23501016
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
芝原 寛泰 京都教育大学, 教育学部, 教授 (60144408)
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Keywords | microscale chemistry |
Research Abstract |
本年度は、課題の趣旨である「マイクロスケール実験の普及」のため、対外的な活動に重点をおいた。研究実績は主に1)論文、2)著書、3)学会発表、4)授業実践,5)その他 からなる。 1)「パックテスト容器を用いたマイクロスケール実験による電池・電気分解の教材開発と授業実践-考える力の育成を図る実験活動を目指して-」; 佐藤美子; 芝原寛泰、Vol.53, No.1 pp.61-67、理科教育学研究、2012 ; 2)「基礎化学(ドリルと演習)」川村康文、芝原寛泰ら、pp.131、電気書院 3)日本理科教育学会、全国大会4件、近畿支部大会6件の発表 4)京都府立桃山高校にて2回、授業実践をおこなった。京都府立山城高校、京都府立東宇治高校にて各1回の授業実践を行った。5)その他として、SSH指定高校においてマイクロスケール実験の指導にあたった(京都府立嵯峨野高校および桃山高校)。大阪府枚方市小学校理科研究会の招きでマイクロスケール実験の特別講演を行った。各種教員研修会(計3回)においてもマイクロスケール実験の普及に努めた。 実績のうち、論文「パックテスト容器を用いたマイクロスケール実験による電池・電気分解の教材開発と授業実践」は、「考えさせる授業」の展開につながり、今後の研究の方向性にとっておおきな布石となった。 また、K.Kナリカ(教材会社)との協同研究で、昨年と同様に開発した教材実験のうち、反応速度、アンモニアの噴水実験に関するマイクロスケール実験の商品化が実現した。マイクロスケール実験に使用する多種の器具も、少量で購入しやすくするなど、学校現場への普及を目的のひとつとする本研究にとっては大きな前進となった。 また、科研費の研究成果の公表として、「ひらめき☆ときめきサイエンス」を実施。近隣の中学生12名を対象に、マイクロスケール実験の体験講座を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度は教材開発と並行して、授業実践も積極的に行い、開発した教材の有効性を検証した。高校化学の分野では、「酸化還元滴定」、「浸透圧の性質」、「燃料電池」、中学校理科分野では「イオンの移動実験」、「銅の酸化還元実験」、「アンモニアの噴水」を新たにとりあげた。昨年から取り組んでいる高校化学の「化学平衡の移動」、「化学反応に伴う吸熱発熱反応」、「銅アンモニアレーヨンの合成」についても継続して改良を行った。 概要でも述べたが、公立学校において授業実践を行った。その結果、問題点も抽出することができたが、実用化に向けて大きく前進した。目下、研究成果をまとめ論文による公表の準備を行っている。H23年度においては、以上より概ね目標には達したと言える。しかし、小学校理科を対象とした教材開発は昨年と同様、新しい教材開発には至らなかった。しかし以前に開発した「ものの溶け方」、「水溶液のなかまわけ」の実験テーマについて3回の授業実践を行うことができ、定番の実験となったことは一つの成果であった。 本研究の目的である「マイクロスケール実験の体系化」、「マイクロスケール実験の普及」「教員志望学生に対する実験紹介」「現職教員への実地指導」に関しては、一定の進展がみられた。2年前に発刊した単行本「マイクロスケール実験ー環境にやさしい理科実験」により、小学校から高校に至る、一連のマイクロスケール実験を事例的にまとめ、体系化をはかった。またこれを用いた研修を実施でき、学校現場への普及についても、一定の前進がみられた。 また、教材会社(ナリカK.K)との協同開発による教材化も継続的に取り組むことができ、いくつかの教材を商品化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究期間の最終年度であることを踏まえ研究の推進を図る。本研究の目的である、「マイクロスケール実験の体系化」、「マイクロスケール実験の普及」の実現に関しては、さらなる方策が必要と考える。 次の方策を考える。1)実験集のまとめ:今まで開発した実験教材および授業実践の記録をまとめ冊子とする。場合によっては単行本として出版する。2)教材開発の推進:高校化学についても「銀鏡反応」、「テルミット反応」「コロイドの性質」のマイクロスケール実験による教材開発を取り上げる。中学校理科では、引き続いて「気体の発生と性質」に関するマイクロスケール実験による開発を行い、授業実践をとおして実用化の検討を行う。小学校理科に関しては、教材テーマの発掘から行い、新たなマイクロスケール実験の分野に取り組む。 3)ネットワークの構築:昨年に続き、授業実践を、近隣の学校の協力を得て実施するためには、人的なネットワークの構築が必要である。そのための具体的な方策として、研究会のメーリングリストを積極的に活用できる体制を整備する。4)授業案(学習指導案)の作成:学校現場における授業での普及を促進するには、具体的なマイクロスケール実験を用いた授業案を例示する必要がある。通常の授業と異なる展開や、指導上の注意点、さらに評価の観点などについて具体例を示すことが必要と考える。現在、学習指導案の事例集の出版を進めているが、その中で積極的にマイクロスケール実験を使った研究授業を取り入れ、さらなる普及促進をはかることを考えている。 5)社会への貢献。 昨年と同様に「ひらめきときめきサイエンス」を実施して、研究成果の公表および社会への還元を推進する。マイクロスケール実験の普及には、重要な側面をもつ活動として、今後も積極的に取り組む。 以上より、最終年度のまとめとして、1)と4)の活動は重要と考え、最優先で取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は、上記の推進方策でも述べたように、「マイクロスケール実験の体系化」、「マイクロスケール実験の普及」を念頭に、高校化学については「銀鏡反応」、「テルミット反応」「コロイドの性質」のマイクロスケール実験による教材開発を取り上、教材開発を進める。また、前年度に開発を行い、教材としての有効性を確かめる実験テーマについて、近隣の公立学校の協力を得て授業実践を行う。具体的には、「化学反応熱の測定」「化学平衡の移動実験」「銅アンモニアレーヨンの合成」「電気メッキ」について、授業実践を行う。 研究費の使用計画として、消耗品、旅費、謝金が中心で、設備費はない。消耗品は、実験教材の開発に関わる、器具、薬品が主で、少量で多品種となる。また実践では、児童・生徒数、クラス数に対応した器具や薬品を購入する。また現場教員との協同による教材研究、授業実践も積極的に行うが、その際の実験器具等の提供も含まれる。旅費は、研究成果の公表として、8月の日本理科教育学会全国大会(北海道大学)における発表のため必要となる。謝金は、出前授業や授業実践時の大学院生によるTAの人件費となる。また最終年度として、配布用の簡単な冊子(4-6ページ)を作成する。
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