2011 Fiscal Year Research-status Report
デザイン実験による算数を数学に接続する授業・カリキュラムの開発研究
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23501019
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40303193)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 科学教育 / 算数と数学の接続 / デザイン実験 / カリキュラム開発 |
Research Abstract |
平成23年度は,授業デザインの背景となる理論的研究と,小学校・中学校での授業開発研究およびその分析とを並行して行った。 まず,算数から数学への移行を意図した授業デザインを構成する上で,算数的活動を活かした授業づくりについて検討するとともに,授業構成の背景となる認識論についても吟味した。成果を次のものにまとめた。(「算数的活動を活かした授業づくり」, 中原忠男編, 新しい学びを拓く算数科授業の理論と実践(pp.63-75). ミネルヴァ書房. 2011; 「数学教育における認識論が実践,学習指導,研究方法論に与える影響について」, 日本数学教育学会,第44回数学教育論文発表会論文集, 21-30.) 次に,図形の包摂関係に関する授業実践の分析を行い,中学校数学に向けて子どもが論理的な推論を高めていく過程や様相を明らかにした。成果は国際会議の中で発表した。(Fifth graders' arguments fostered in the learning of inclusion relations between geometric figures, Proceedings of the 35th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education, 3, 281-288. 2011.) さらに,中学校教師の協力を得て,約1ヶ月に渡って,変化の割合の認識を高めるグラフの探究を視点として,中学2年の一次関数の全単元についての実験授業を,デザイン実験の手法に基づいて実施した。また,データの一部の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は,まず算数から数学への移行を意図した授業デザインを構成することを目指していた。これについては,算数的活動の活用の仕方について幅広く調べてまとめた。また,授業構成の背景となる認識論に関しても,国内外の文献を幅広く収集し吟味した。いずれも著書,論文として提出することができた。 また,過去に実施した授業データをふり返り,授業設計の視点を抽出し,それらをもとに算数を数学に接続する授業構成の仮説を設定することを予定していた。これについても,図形の包摂関係に関する授業を質的分析法によって分析を行い,そこから中学校数学に向けて子ども達が論理的な推論を高める過程や様相を明らかにできた。これは授業設計の為の基盤になりうるものであり,さらに分析を積み重ねることによって,授業や単元を構成する原理や方法が明らかになると考えられる。 最後に,小学校で授業研究を行うことにしていたが,中学校での授業研究を先に実施することにして,中学校で一次関数に関する授業研究を実施した。授業研究を行う順番が入れ替わったのみで,研究全体としては順調に進行してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,理論面では,認識論と研究方法論を授業の中に具体化することを中心にして,算数から数学への移行過程を研究する上での背景的な理論を吟味する。成果は,国内学会にて発表する予定である。また,数学教育学の国際会議に出席して,情報収集・資料収集を行い,理論面の強化を行っていく予定である。 実践面では,第一に,中学校での実験授業の授業データの分析を継続して行う。質的分析法,特にグラウンデッドセオリーアプローチの手法に則って,生徒の学習過程の特徴を分析し,カテゴリー化をしながら,思考の特徴や高まりを明らかにする。また,教師による手だてや学習環境が果たした役割も分析する。成果は,第12回数学教育国際会議の中で発表する予定である。 次に,小学校と中学校でさらなるデザイン実験を実施する。小中学校教師と協働で,学校現場の実態を考慮して,これまで実施した調査や授業観察などをふり返りながら,授業デザインを構成する。内容としては,小学校での小数・分数の除法,比例,中学校での一次関数,図形の移動・作図のうちのいずれかを予定している。いずれの授業もビデオカメラ,ICレコーダに記録する。データの一部を分析して,国内の学会で発表する。 さらに,23年度に実施した中学校での授業研究に関して,授業を受けた生徒の経年変化を調べるために,学習定着に関する評価研究を行うとともに,そのデータ分析を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の使用計画として,まず算数を数学に接続する授業構成の為の背景的な理論を考察し,その成果を国内会議で発表する為の旅費を計上する。次に,中学校1年の図形の移動・作図の授業データを分析した成果を,第12回数学教育国際会議の中で発表する予定であり,これについての旅費を計上する。また,数学教育心理研究国際会議に出席し,理論面の強化として情報収集・資料収集を行うための旅費を,23年度に未使用分の経費に加算して,計上する。 次に,中学校で実施した一次関数に関わるデザイン実験の分析を進め,データの一部を分析して国内学会で発表する。これについて分析に必要なソフトや成果発表の為の旅費を計上する。さらに,23年度に実施した授業研究に関して,授業を受けた生徒の学習定着に関する経年変化を調べる研究を行う上で,県内の出張や質問紙作成に必要な経費を計上する。インタビュー調査をする際には,ビデオカメラや記録媒体を購入して使用する。 最後に,小中学校でデザイン実験を実施する上で,ビデオカメラ,ICレコーダ,記録媒体,印刷用紙,その他授業で使用するプリントや学習具の準備のための経費を計上する。
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