2012 Fiscal Year Research-status Report
大気中に暴露した銅板の腐食過程から学ぶ大気汚染に関連した実験教材作成
Project/Area Number |
23501065
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
尾關 徹 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70152494)
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Keywords | 科学教育 / 環境分析 / 国際協力 / 大気汚染 / 有害化学物質 |
Research Abstract |
本研究では,大気中に暴露した銅板の腐食量を簡易計測するシステムを考案し,銅板腐食に影響する大気環境要因を調査することにより,国内外の学校教育の場で利用できる環境教育実験教材を開発することを目的としている。そのために,A:7cm x 7cm 厚さ 0.5mmの銅板を大気中に暴露する腐食実験,B:水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験,及び,C: 大気の汚染状態を知るための降水の化学分析,の3つを並行して行っている。平成23年度において,清浄な表面を持つ銅板を準備し,日本国内2箇所(兵庫,福井),韓国3箇所(京仁,大邱,釜山),台湾1箇所(屏東)に送って,暴露実験を,2011年9月 6日(一部地域は 10月4 日)から開始した。現在,2013年4月16日に第21回目の暴露実験を終えた。本年,10月1日まで行い,二年間の暴露試料が得られるので,再現性のチェックも可能である。各地点で回収された銅板試料,1週間毎の降水試料が,順次,兵庫教育大学に送られ,銅板の腐食量と,降水試料の主要イオンの化学分析を行っている。一方,兵庫教育大学で,2011年8月にオゾン測定装置を購入し,大気中のオゾン濃度の測定を開始した。これまでに得られたデータを総合的に見た場合,降水量が多い季節に銅板の腐食量が大きくなっており,腐食の第一要因が大気中の水分量であると考えられる。今後,2年間のデータを得て,さらに詳しく,銅板の腐食と大気環境要因との関連を検討する。一方,水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験では,制御プログラムの改良を行い,一定時間ごとの計測を開始した。今後,夏に向かって,銅板の腐食量が増加するので,水晶振動子上の銅の腐食過程が,より詳細に解析できると考えられる。これまでに,分析の終わった降水試料中の汚染物質の季節変化や,銅板の腐食実験の結果は,日本分析化学会,日本化学会等において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅板の暴露実験は,日本国内2箇所(兵庫,福井),韓国3箇所(京仁,大邱,釜山),台湾1箇所(屏東)で,2011年9月 6日(一部地域は, 10月4 日)から開始し,現在,第21回目の暴露実験を終えた。各地の暴露銅板試料や,1週間毎の降水試料は,順次,兵庫教育大学に送られ,銅板の腐食量や,降水試料のpHと主要イオンの化学分析が行われている。また, 2011年8月から,大気中のオゾン濃度の継続測定を行っている。これまでにデータが得られた1年間の測定結果を見た場合,一般的に,降水量が多い季節に銅板の腐食量も大きくなっており,降水量の季節変化から,福井とそれ以外の地域で大きな違いがあることがわかった。また,兵庫で測定している大気中のオゾン濃度の測定結果から,オゾン濃度が最も多いのは夏(8月)であるが, 4月頃にも上昇していて,オゾンの長距離飛来の影響が示唆されている。また,水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験では,銅板上への水分の吸着と,銅板の腐食による周波数の変化が,測定結果として得られており,今後,銅板の腐食量が増加する夏季の測定が期待される。また,これらの途中経過については, 日本分析化学会や日本化学会で発表した。これらの事から,本研究の平成24年度の研究は,予定通り,おおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
銅板の4週間毎の暴露実験は全体で2年間(27回)行う予定であり,平成25年度の最後の暴露実験は,平成25年9月3日から10月1日に行う。平成25年度10月末には,計2年間を通した銅板の暴露試料と,各地点での降水試料が兵庫教育大学に回収される予定である。その後,それぞれの分析を完了し,腐食量,降水試料中の種々のイオン濃度の季節変化と,オゾン濃度の季節変化のデータから,それらを関連させた解析を行い,本研究の目的である,銅板腐食に影響する大気環境要因を調べる。また,国内外の学校教育の場で利用できる環境教育実験教材の実践指導のために,韓国と台湾の教員,並びに児童・生徒を対象とした講義や授業を行う。現在,台湾では7月に,韓国では9月に行う計画を立てている。また,銅をメッキした水晶振動子マイクロバランス法のシステムを用いて,1日のどの時間帯に銅板の腐食が生じるかを研究する実験は,設置ホルダーの改良や計測用プログラムの開発も完了し,今後,腐食量が大きくなると期待される本年の夏季に重点的に測定を行う予定である。これまでの銅板を4週間暴露する実験では,実際の腐食反応が,一日のどの時刻に生じるのかが分からなかったが,この水晶振動子マイクロバランス法のシステムを用いた実験では,分単位での腐食過程の追跡が可能となる。同時に,大気中のオゾン濃度,湿度,気温等を測定するので,これらの情報を総合的に解析し,銅板の腐食が生じるより詳細な大気環境の要因について検討することができるものと期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4週間毎の銅板の暴露実験に関して,韓国3箇所(京仁,大邱,釜山),台湾1箇所(屏東)の計4か所の実験協力者に対する謝金の支払いを,平成25年(2013)度の第21回(2013年2月19日から3月19日)から第27回(2013年9月3日から10月1日)まで,計8回の暴露実験について謝金を行う。銅板の暴露実験は10月で終わるが,その後,銅板と雨水試料の回収と分析を行い,また,オゾン濃度測定データを用いた解析を行う。一方,これまでの銅板の暴露実験から得られたデータを用いた環境教育実験教材の実践指導のために,韓国と台湾の教員,並びに,児童・生徒を対象とした講義や授業を行う。これを,台湾では7月に,韓国では9月に行う予定である。そのための出張旅費に研究費の一部を使用する。本年度後半には,本研究で行った,日本,韓国,台湾における銅板の腐食量の季節変化と地域変化,降水試料の分析結果,水晶振動子マイクロバランス法を用いた実験の結果等を,総合的に解析し,得られた結果を報告書にまとめて印刷すると共に,学会等で発表を行う。その他の研究費の使用については,当初の計画の通り,本年度の研究の継続に必要な物品購入等に用いる。
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Research Products
(8 results)