2011 Fiscal Year Research-status Report
種子発芽の光調節に関する教材として利用可能な野生植物の探索と実験法の確立
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23501071
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
八ツ橋 寛子 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (60182359)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 種子発芽 / 光発芽性 / フィトクロム / 野生植物 / 生物教育 |
Research Abstract |
今年度は,光生理学の教材として可能性のある種子を選別することと,実験条件を整えることを並行して行った。大学周辺で採集可能な野生植物の種子をリストアップし,そのいくつかについて,光要求性,温度依存性,冷湿処理等休眠解除処理の必要性を調べた。光条件は,暗黒対象と白色光または赤色光連続照射,温度条件は15℃および25℃とした。タチスズメノヒエは,近年増えている外来種で,住宅地や,学校などで手に入りやすい材料であるが,登熟直後は,いずれの条件でも発芽が起こらなかった。15℃の温湿状態を経験させたのちは,25℃明暗いずれでも発芽するようになり,したがって,光要求性はこの条件では確認できなかった。また,コマツヨイグサでは,光要求性がみられたが,休眠が深く,最高発芽率が十分ではなかった。登熟の時期によっても反応性が異なることがわかった。ナガミヒナゲシも,増加している外来植物で,微細な種子をつくるため,光発芽性である可能性が高いと考えられるが,休眠が深く,冷湿処理では解除されなかった。スミレについても検討したが,発芽に至っていない。いずれも,今後さらに休眠解除などの条件について検討が必要である。実験条件については,LED照射装置を導入し,フィトクロムの関与を明らかにするため,赤色光および遠赤色光の単独照射のみならず,両者を一定の比率で混合して照射するシステムの構築を目指している。LEDランプの指向性から,均一な混合比を得るには,拡散板などの工夫がさらに必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材料については,1年目は採取可能な材料を探すことが主な計画である。23年度は,そのまま教材として利用できる種は見いだせなかったが,可能性のある種はリストアップすることができたので,今後検討を進めることができる。実験装置については,混合照射はさらに工夫が必要であるが,単色光照射の方法はほぼ確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度以降も引き続いて種子の採集と発芽特性のチェックを行う。23年度には,光要求性の種子を見いだせなかったので,特にこの点に留意して,登熟直後,または一定条件で保存したのち(後熟後)の種子の休眠性を調べる。発芽条件は,まず23年度と同様の条件で行い,この中で光発芽性のものについては,フィトクロムの関与を調べるため,赤色光と遠赤色光の短時間照射を繰り返し,赤色光の発芽促進効果が遠赤色光で打ち消されるか(赤色光/遠赤色光可逆性)と赤色光/遠赤色光比への依存性を調べる。さらに,赤色光/遠赤色光可逆性がどのような温度範囲で示さられるかを見る。青色光に対する反応も調べる。実験方法として,赤色光/遠赤色混合照射が様々な光強度比で行えるように引き続き工夫する。教材として適している,または利用できる種が見つかった場合,次の段階として教育現場に適した実験方法の確立を目指す。ここでは,最低限必要な実験用具や条件を洗い出し,通常の高等学校などでは用意することが難しいものについては,代替品や代替法がないか検討する。また,種子に低温処理などの前処理や,植物ホルモン,硝酸などのイオン添加を行うことによって,結果をさらに明瞭にできないか,実験を行う。また,教科書などに「小さな種子は光発芽性であることが多い」という記述が多く見られるが,その根拠をとなる文献など具体的なデータは示されていない。光発芽性と種子の大きさの相関が示されれば,この性質の生態的意義がより明確になると考えられ,そのためのデータも集める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度の購入予定品のうち,LED照射装置の一部は,研究の進行状況から,22年度の大学基盤経費で購入したため,およそ70,000円を次年度に使用することとなった。一方,使用予定であった既存インキュベータ(400,000)が,老朽化のため使用不可能となり,新規購入の必要が出てきた。この他,シャーレ,ろ紙などの消耗品,薬品類(130,000),青色光LED基盤(140,000),データ処理用パソコンソフト(30,000),計700,000円および最終年度に消耗品等100,000円を使用する計画である。
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