2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501078
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
井上 美智子 大阪大谷大学, 教育福祉学部, 教授 (80269919)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境教育 / 保育 / オーストラリア / 国際情報交換 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
2012年6月から渡豪し,(1)文献調査,(2)実地調査及びインタビュー,(3)質問紙調査の準備を実施した。(1)文献調査は,滞在したクィーンズランド州を中心に集レベルと国家レベルの保育施策及び環境教育施策に関わる公的な文献を中心に収集し,州ごとに異なる制度を国家統一制度へと変容させる時期における施策の実態を明らかにした。次の(2)実地調査及びインタビューでは環境教育実践施設(州立・市立)5施設・幼稚園5園・保育園5園・プレップ2校を実地調査し,実践を観察し,実践担当者にインタビューを行った。また,国立・州立・市立の自然保護を目的とした保護区を訪問し,環境教育的取り組みがどのように導入されているのかの実地視察も行った。(3)質問紙調査の準備では,2003年度に日本で実施した保育現場調査の質問紙を元にオーストラリアの実態と本研究の目的に合わせた質問紙を再構成し,共同研究者の所属大学の倫理委員会に申請を行った。質問項目は,環境教育・持続可能性のための教育という概念の認知度,それらを実践に意識している度合い,それらに関係するような自然体験や生活体験の実施頻度や環境構成の実施度である。 保育においては2012年度実施のNATIONAL QUALITY FLAMEWORKに合わせた準備を行っていた。例えば,保育機関の運営母体団体が新体制に合わせて機関独自のガイドラインを改訂したり,各園が保護者や地域に国家レベルの指針への移行を説明する等である。ガイドラインにも組み込まれた幼児期の環境教育だが現場の関心はそこにはまだ向いていない印象であった。環境教育実践施設側は小学校以上も含めた国家レベルの教育課程の策定に環境教育が組み込まれていることを好意的に受け止めてはいるものの,一般教員の意識が高くないととらえていた。質問紙調査は倫理委員会からの許可を得,実施準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は(1)オーストラリアの就学前教育基準(2009)に示された環境教育の観点がどのように保育実践や養成教育に影響するのか, そして,保育学研究者や保育実践者の保育の基礎概念のとらえ方や環境教育への関心の程度を,文献調査とインタビュー調査により明らかにすること,(2)同一項目による質問紙調査を日豪で実施し,日豪の保育現場における自然体験活動等の実践実態と保育者の環境教育に対する関心度,概念理解の相違を明らかにすることの2点である。 まず,目的(1)に関しては,文献収集を行ったが,2012年のNational Quality Flameworkの導入に向けて新たな施策導入が進行中で,新たなガイドライン等が継続して発表されている段階であるため,文献収集も継続中である。保育学研究者や保育実践者の実態については,前者は文献や学会活動にみる言説によって分析する予定であり,本年度は公的な資料を中心に文献収集を進めた。後者は現場の環境及び実践観察やインタビューにより実施するが,本年度は導入直前の現場の実地観察やラポール形成を行った。 次に,目的(2)に関しては,2003年度に日本で実施した質問紙調査の調査項目を元にオーストラリアの保育の実態に合わせて質問項目を検討した。また,オーストラリアでの調査実施に当たっては,本研究のような社会学的研究においても倫理審査委員会への申請が必要であるとわかり,共同研究者の所属する大学の倫理審査委員会へ申請を行い,1月に実施許可を得た。 以上のように,2つの目的について,計画に則った手順で具体的な資料収集・ラポール形成・調査準備を進めており,おおむね順調に遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は目的(1)に関して,National Quality Flameworkの導入が本格的に開始するので,評価ガイドラインやそれに対応した各種団体のガイドラインも出揃うことが予想されるので,それらの収集を進める。保育学研究者の理解や評価については,隔年で開催されるEarly Childhood Australiaの大会が2012年10月に開催予定で,持続可能性が一つのテーマとしてあげられている。そのテーマの元に集められた発表に見る研究者・実践者の言説から実態を探る予定である。保育実践者の理解は初年度である2012年度ではなく2年目である2013年度にインタビューする計画である。目的(2)に関して,当初はオーストラリアにおける調査を2011年度に実施予定であったが,倫理委員会への申請・承認作業に要した期間(約4ヶ月)と実際に学校暦における調査に適した時期の選定の関係で,調査実施が年度内に遂行できず,2012年度後半に実施することになった。一方,比較対象である日本における調査は予定通り2012年度後半に実施予定である。また,この質問紙調査には韓国とスウェーデンの研究者も関心を示し,同一質問による調査を各国で行う計画が進んでおり,将来的には日豪比較だけではなく,複数国間の国際比較に発展する可能性がある。2013年度には当初の予定通り成果発表を兼ねた報告会を予定しているが,比較研究に関しては予定より進捗が遅れていること・国際比較研究へと発展する可能性があることから,目的(1)に応じた調査,及び,目的(2)の質問紙調査の分析を並行して進めながら,質問紙調査以外の成果発表を主たる目的とした報告会,及び,各国の研究者が集まって情報交換を目的とした研究交流集会の企画を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度の研究費(直接経費)は当初交付予定額(800千円)と本年度未使用分(463千円)の合計(1263千円)である。本年度未使用分が生じた理由はオーストラリアにおける質問紙調査が未実施であること,実地見学をクィーンズランド州の中心に行ったためオーストラリア国内で実施予定であった他州における調査にかかる移動旅費の消化ができなかったことである。このうちオーストラリアにおける質問紙調査は現地の学校暦を鑑み,2012年度後半に実施予定であり,そこで昨年度未使用分の調査関連経費を消化予定である。また,渡豪もEarly Childhood Australiaの大会参加(10月)、及び、夏期,あるいは,春期休暇期間に他州における実地調査の2回実施する予定であり,本年度の予定として既に申請済みであった旅費(1回分)に併せて昨年度未使用分を併せて2回の渡豪旅費として消化予定である。本年度当初交付予定額は上記旅費以外には,主として日本における質問紙調査の実施経費(印刷費・発送費・入力作業費謝金等)が計上されており,2012年度後半(12月-1月頃実施予定)の調査に向けて消化していく予定である。2012年度使用計画の具体的な内訳は,設備備品費=0,消耗品費=30,国内旅費=50,外国旅費(渡豪2回)=600,謝金(質問紙調査発送及び結果入力謝金)=230,その他(質問紙調査発送費用)=353の合計 1263(千円)である。
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Research Products
(3 results)