2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501100
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松浦 慶総 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究教員 (70282960)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 技能継承 / 溶接技能 / AR技術 / 技能評価技術 / 教育支援システム |
Research Abstract |
平成23年度では溶接技能動作定量的評価システムの開発を行った. 具体的にはまず対象技能動作をアーク溶接作業として溶接動作解析システムを開発した.技能動作の3次元位置情報を解析するために2カメラ同期撮影システムを開発し,撮影した動画像をモーションキャプチャシステムで3次元位置情報に変換した.ここで,撮影時のアーク光対策として赤外線フィルタを用いて画像の白飛びを防ぐとともに,マーカを高輝度小型電球にすることで判別率を高めた.また,3次元位置情報と表面筋電位の同期解析システムにより,技能動作時の上肢の筋活動の解析を行った. 次に品質工学の一手法であるRT法により,熟達者の模範動作データを「良品」として単位空間を作成し,比較対象の動作データとのマハラノビス距離を求めて正誤判定を行う技能評価システムの開発を行った.これらの結果を溶接技能者に提示して,これまで溶接技能上達のために必要な暗黙知に対してどのようにアプローチをしていたか,すなわち気づきの明確化を行った. 今回は企業の溶接技術センターに勤務する溶接技能者6名を対象に,ウィービング運棒法による裏金有立向突き合わせ溶接の技能評価実験を実施した.この結果から,溶接開始時点の姿勢データは初級者を除きほぼ変わらない結果となったが,上方に運棒を進めると熟達者は姿勢があまり変化しないが,経験が浅いほど脇が開く結果となった.またEMG解析では熟達者の結果は最大筋電位に対して30%以下で,時間的変化もあまりないが,3~5年の技能者では運棒に対して筋電位が不安定で,しかも肩付近の筋電位が大きくなる傾向が分かった.また,実験後に被験者にアンケートを実施した結果と解析結果を熟達者に提示してインタビューを実施したところ,溶接技能の習得に重要な新たな知見を得ることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は研究初年度であったが,平成23年3月の東北地方太平洋沖地震の影響で研究開始が遅れ,さらに補助金減額(3割減)の可能性があったため購入計画の留保を10月まで行った.そのため動作計測装置の購入が遅くなったことより当初の開発計画より遅れてしまった.また溶接技能計測に協力予定だった企業が,今回の原子力発電所事故に関係した企業であり,溶接技能実験やアンケート実施でも大きな影響が出てしまった.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は前年度に開発した溶接技能動作定量的評価システム,および溶接技能者の解析結果より熟達者の溶接技能データベースの作成を行う.またこのデータベースに基づいた熟達度評価システムの開発を行う.さらにAR技術を利用して,実際に溶接作業を実施しながら技能情報を提示する溶接技術学習支援システムの開発を目標とする.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では,AR技術による溶接技術学習支援システムの開発に必要なヘッドマウントディスプレイや外部撮影小型カメラ,ワークステーションを購入する予定である. 具体的には溶接作業中に学習者に情報を提示するために,溶接作業の際に着用する溶接面内にヘッドマウントディスプレイ(購入予定品)と外部撮影小型カメラ(購入予定品)を設置し,ワークステーション(購入予定品)に接続する. またAR開発システム(購入予定品)で,リアルタイムに現在の姿勢や筋活動情報といった技能習得に必要な情報を提示することが可能な溶接技能情報提示システムを開発し,外部撮影カメラで撮影した溶融池や,溶接棒の状態から学習に必要な情報を判定し,ヘッドマウントディスプレイ上に提示する. これまで学習者は作業終了後に溶接結果でしか学習評価を得ることが出来なかったが,学習中に必要な情報を得ることが可能となり,習熟効果が向上すると考えられる. 成果発表として,国内発表(3件)や論文発表(2件)を予定している.
|