2011 Fiscal Year Research-status Report
学習履歴データを活用した外国語リスニング学習支援システムの開発及び実践的評価
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23501108
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
康 敏 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60290425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 治美 神戸大学, 国際コミュニケーションセンター, 教授 (60343349)
大月 一弘 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10185324)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | e-ラーニング / データマイニング / システム開発 / リスニング能力 / 科学教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、学習履歴データを活用し、ユーザビリティを向上した外国語学習支援システムの開発と実践的評価を行うことである。システムは主に教材作成部分と学習履歴データ分析部分からなる。平成23年度ではまず英語のリスニング学習用のテンプレートをデザインし、音声合成エンジンを実装した教材作成システムの開発を行った。また、学習履歴データ分析部分の一部として学習者へのフィードバックに焦点を当てた履歴データ分析機能を開発し、実験的利用によって利用者によるユーザビリティ評価を実施した。 リスニング学習用テンプレートは単語学習に焦点を当てたテンプレートをデザインした。実装した単語ディクテーションテンプレートは単語の意味理解に着目したトレーニングに対応し、二者択一問題作成テンプレートは、音声への知覚のトレーニングを行う際、ミニマルペアを使った練習問題や同定訓練の問題などの作成に用いる。教材作成インターフェースには、教材に必要な音声を事前に用意した音声ファイルのアップロードと音声合成エンジンによる音声ファイル作成と二つの機能が備えている。合成音声を利用する場合、これまでの研究で得た学習者による合成音声評価データを用いて推測した学習者評価結果を教師に提示して教材に取り入れるか否かの判断材料を示すことができる。 フィードバックに焦点を当てた履歴データ分析機能としては、クラス毎または学習者毎の解答状況の提示機能以外に、解答状況の並べ替え表示機能、解答状況の音素別表示機能及び他者の誤答を含んだ間違いやすい誤答パターン一覧機能を開発している。実施したユーザビリティテストは教材利用後のフィードバックに関する視点から行ったものであり、学習者から多くのポジティブな評価を得たほか、これらのフィードバック機能により、確実に学習者に刺激を与えたことも確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度予定していた単語学習におけるテンプレートの実装は完了している。システムを用いて単語ディクテーション問題や二者択一問題が容易に作成できるほか、システムに合成音声エンジンを実装することによって、事前録音できない状況に対応し、合成音声を利用した教材の作成もできる。また合成音声利用の際、学習者の評価データを教師に提示することによって利用の判断の助けを行うことができる。教材作成部分の開発は予定通り進んでいる。 システムのユーザビリティ評価に関しては、テンプレート、教材作成及び教材利用という三つの視点から実施する考えだが、平成23年度は教材利用のみに関して行っている。テンプレートと教材作成システムは教材利用システムにおける使い勝手の評価結果によって変更する可能性があり、それに踝関するユーザビリティ評価はこれからシステムの開発しながら、実施していくと考えている。その代わりに平成24年度からスタートする予定であった学習履歴データ分析機能の開発に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以後は、まず学習履歴データの収集、分析及び分析機能の実装を行う。簡単な分析機能の一部の実装はすでに平成23年度からスタートしたが、平成24年度からは分析機能の充実を図る予定である。データを収集するには、平成23年度に開発したシステムを用いる。 リスニング学習履歴データには大きく分けて単語学習、センテンス学習とパラグラフ学習を行ったときの三種類のデータがある。それぞれの学習において教材を学習した後、トレーニング問題やテスト問題によってリスニング理解を示すデータは学習履歴データとして解析の対象となる。より高度な分析機能を実装するには、データマイニング法を用いて学習内容に踏み込んだ解析手法の提案が必要である。その一つとして、単語、センテンス及びパラグラフに対する誤認から、音素、音節と韻律など下位レベルの音韻的要素に対する誤認を検出することが考えられる。検出された下位レベルの音声をウェークポイントとして繰り返し学習することによって、単語などに対する認知能力を高める。このような検出はシーケンスデータマイニング法やベイジアンデータ分析法が比較的有効なアプローチである。平成24年度では、まずシーケンスデータマイニング法を取り入れ、音素に焦点を当てて解析手法を開発して実装する予定である。この手法の有効性を自然音声、合成音声を使用して多岐にわたる音声特徴のある学習コンテンツによる履歴データを比較して検証し、本研究の最終目的として目指した、学習履歴データを活用しユーザビリティ向上を考慮したリスニング学習支援システムの大まかな枠を作り上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度において、開発システムを用いて小規模のデータ収集のほか、開発システムを実践的運用によって学習履歴データを定期的に蓄積し、フィードバックのための解析手法の有効性を確かめるため、開発用のサーバ・クライアントシステム以外に1 クラス(30 人~40 人)または2クラスの使用者が同時に音声や動画にアクセスしても処理能力が落ちないハイパフォーマンスマシンが欠かせない。また、研究の遂行に当たって、国内外の学会・研究会に出席し、資料収集・研究調査を行う予定である。更に、蓄積したデータを分析するに当たっては、途中経過に伴うデータの整理に協力する研究補助者や学習コンテンツを作成する際にネイティブ音声の録音に協力するネイティブスピーカーへの謝金を計画に入れている。よって、平成24年度では、物品費に100,000円、旅費に330,000円、人件費・謝金に20,000円、その他に50,000円、計500,000円を使用する予定である。
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