2012 Fiscal Year Research-status Report
学習履歴データを活用した外国語リスニング学習支援システムの開発及び実践的評価
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23501108
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
康 敏 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60290425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏木 治美 神戸大学, 国際コミュニケーションセンター, 教授 (60343349)
大月 一弘 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10185324)
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Keywords | 学習履歴データ分析 / CALLシステム / データマイング / リスニング学習 / elearning / ユーザビリティ |
Research Abstract |
本研究の目的は、学習履歴データを活用し、ユーザビリティを向上した外国語学習支援システムの開発と実践的評価を行うことである。平成23年度で英語リスニング学習のための教材作成システムを構築し、ユーザビリティ評価を行ったあと、平成24年度ではリスニング理解に支障を来たす可能性のある音素への誤認に焦点を当てて学習履歴データの解析手法を提案してシステムに実装した。 着目した履歴データは単語ディクテーション練習問題への学習グループ毎の回答結果です。単語に対する誤認から、音素のような下位レベルの音韻的要素に対する誤認を検出することによって、音素への誤認をウェークポイントとして繰り返し学習し、単語に対する認知能力を高めることを図る。解析手法の流れとしては、まず個々の学習者の誤答したすべての単語を履歴データから抽出し、音素に分解する。次に正解単語と比較し、正答音素と誤答音素をペアにした誤認パターンを検出する。個々の学習者の誤認パターンをシーケンスデータに生成し、最も一般的なシーケンスデータマイニング法、GSP法を用いて学習グループの誤認パターンの特徴を検出する。正答音素と誤答音素におけるペアリングにおいては、音素の一対一の位置関係から検出を行う逐次比較検出手法、英語のリスニングにおいて一般的に指摘されている日本人学習者が区別しにくい英語子音ペアを取り入れた枠付き検出手法及びこの二つの手法の組み合わせという三種類のアルゴリズムを提案した。英語オーラルの授業を受講する二つのクラスで単語ディクテーションテストを実施し、収集した履歴データに対して提案手法を用いて分析した結果、それぞれのクラスの音素における誤認パターンの特徴を検出したことが確認できた。また、正答音素と誤答音素のペアリングにおける三種類のアルゴリズムの精度について検討を行い、組み合わせの手法が最もよい精度をもたらすことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度予定していた音素に焦点を当てて誤認パターンの検出など学習履歴データの解析手法を提案し、システムへの実装は完了している。提案手法の評価は学習グループに対して実施したが、個々の学習者の誤認パターン分析に当該手法も同様に利用できる。平成24年度実装したシステムは、検出した誤認パターンを教師のみフィードバック画面を示すが、個々の学習者に対して分析をし、フィードバックを行う機能まで容易に拡張できる。研究全体においては、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降はセンテンス学習、パラグラフ学習など、さらに多様な学習ストラテジーに対応できるテンプレートを開発し、ベイジアンネットワークや決定木などのデータマイニング法を取り入れ、音節、韻律レベルなどにおいても解析手法を開発して、学習履歴データの分析機能を充実していくと共に、システムユーザビリティの向上を図っていく。 英語の場合に、自然発話に特有の短縮、脱落、連結、同化、強形と弱形、抑揚といった規則の他,語のストレス位置やリズムなどもコミュニケーション上の意味理解に困難をもたらすと指摘されている。これらの特徴にあった学習教材を容易に作成できるテンプレートがあれば、教材作成システムの使い勝手は更に改善できる。また、これらのテンプレートを利用して作成した教材を学習した個々の学習者の履歴データを分析し、ウェークポイントを検出してフィードバックすることによって、個々の学習者が迅速に学習効果を実感でき、自律学習の実現が可能となる。 平成25年度では、ベイズ統計を用いて、学習者の音素への誤認を推測する手法を提案し、シーケンスデータマイニング法による結果と照らし合わせ、フィードバック機能を充実させる予定である。また、履歴データの解析結果に基づき、音素などへの誤認を改善するためのトレーニング教材を学習グループまたは個々の学習者に合わせて自動的に作成し、自律学習を図る機能を開発する考えである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
開発システムを用いてデータ収集のほか、機能を増やした開発システムを実践的に利用するときのパフォーマンスを確認するため、2 クラス(30 人~40 人)の使用者が同時に音声や動画にアクセスしても処理能力が落ちないハイパフォーマンスマシンが必要である。また、研究の遂行に当たって、国内外の学会・研究会に出席し、資料収集・研究調査および成果発表を行う予定である。更に、履歴データを分析するに当たっては、途中経過に伴うデータの整理に協力する研究補助者や学習コンテンツを作成する際にネイティブ音声の録音に協力するネイティブスピーカーへの謝金を計画に入れている。よって、平成25年度では、物品費に340,000円、旅費に450,000円、人件費・謝金に20,000円、その他に50,000円、計860,000円を使用する予定である。
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